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⽮作萌夏「⽔平線」インタビュー――水平線に終わりがないように、夢にも終わりはない

encore

──2020年2月にAKB48を卒業し、準備期間を経て2023年10月に1st EP『spilt milk』でシンガーソングライターとしてメジャーデビュー。それから1年と少しが経ちました。今の率直な気持ちから教えてください。

「以前から思い描いていた活動ができて、本当に嬉しいです。その反面、自分1人なので自分の意見の重みがグループ時代とは違うというか…1人だから願いが叶いやすい状況が逆にプレッシャーにもなっていたような1年でした。例えばライブのセットリストもそうですし、今回のシングルもそうですけど、自分から生まれた曲たちが集まって、“じゃあこの日にリリースしよう”という話になるので。アイドルグループ時代は“この日にリリースが決まりました。こういう曲です”という決定事項を自分の中に受け入れるだけでしたけど、今は自分で考えて、ファンの人だったり私をまだ知らない人たちが、“こんな曲を聴いたらどう思うかな?“っていうところから考え始めるので、そういうところが大きく変わったところですね」

──自分で考えるという意味では、悩むことも多かったですか?

「ファンのみなさんが期待している矢作萌夏を意識しすぎて、どういう曲を書こうかと悩んだ時期はありました。でも、活動をしていくにつれて、自分がいいと思っている曲を同じようにいいと感じてくれる人が増えているように思えて…。最近はそういう人たちがこれからもどんどん増えて、大きな未来につながっていったらいいなと思っています」

──自分がいいと思う曲、やりたい曲を作って、それを好きだと言ってくれる人が増えていくことは、シンガーソングライターの理想的な形ですよね。

「そう思います。もっともっとそうなっていけば嬉しいです」

──2月19日にCDリリースされるシングル「水平線」は、TVアニメ『空⾊ユーティリティ』のエンディング主題歌です。

「初めてのアニメタイアップなので、すごく嬉しかったです。それを聞いたのが、マネージャーさんと一緒にテイラー・スウィフトさんのライブを観に行っていたときだったんです。そのライブが始まる直前に、マネージャーさんが“そう言えば、アニメのタイアップが決まったんだよ!”って教えてくれて、そこからはライブが始まっても全然集中できなくて(笑)」

──(笑)。アニメのタイアップということで、まずはどんなことを意識しましたか?

「既に『空色ユーティリティ』は1期が放送されていて、作品を愛しているファンの方がいらっしゃるので、その人たちにも愛される楽曲にしたいということは、すごく考えました」

──そこからは、どんなステップを踏んでいきましたか?

「『空色ユーティリティ』は、全然タイプが違う3人の女の子が集まって、ゴルフを通して仲良くなっていくストーリーなんですけど、その物語の中に生きる希望を見つけられないような、そういう今の若者にも通じるようなシーンがあったので、それを参考にして歌詞を書くことから始めました」

──今の若者が感じている、生きづらさが最初の種、核になったというか…。

「そうですね。そんなちょっとマイナスな部分から広げていって、歌詞を書いていきました」

──具体的には、どんなシーンを参考にしたんでしょうか?

「1回ふっと息を吸って、そのあとにゴルフの球を打つシーンです。そのシーンを見て、ゴルフをやっているときは自分自身に集中できる、普段は生きる希望が見つけられてないけど、その瞬間だけは現実のつらさを忘れて希望を持って生きている。そういう心情がそのシーンから伝わってきて、<花も、⽔も、⾬も・・・>から始まるDメロの歌詞は、そのゴルフのシーンをイメージして書きました」

──生きづらさみたいなところに反応するということは、自分自身も日常の中で感じていたり、同世代、あるいはもっと若い世代を見ていて感じる部分があるからなんでしょうか?

「すごく感じる部分ですし、だからこそ自分が好きなものを好きと言って、それを好きな者同士が集まる場所があるって素晴らしいことだと思います。そう思っているので、ゴルフが好きで集まった3人の女の子たちが登場する『空色ユーティリティ』にも、すごく共感しました」

──どんなときに生きづらさを感じるものですか?

「いろいろありますけど、もともと人間関係で悩みやすい性格なので、そこで感じることが多いです。でも、生きづらさを感じるからこそ見えてくる自分の気持ちは定期的にメモして、曲に生かして自分の中で昇華しています」

──歌詞やメロディは、そのあとに生まれていったんですか?

「さっき話したシーンからイメージしたあとは、メロディや他の歌詞、タイトルもどんどん生まれてきました。最初はピアノ1本でデモを作って、サビを印象づけたかったので、サビのメロディから歌が始まるようにして…。それと、アニメのエンディングでは主人公が歩いている姿を横から描いている映像が流れているイメージがあったので、そういうエンディングを想像しながら曲調やBPMを決めていきました。何のアニメに影響されて、そういうエンディングのイメージがあるのかは自分でもよくわかんないですけど(笑)」

──曲と歌詞は、どちらが先だったりしますか?

「時と場合によりますけど、ほぼ同時のことが多いです。同時にできた曲のほうが、“いいね”って不思議と言われます。一緒に生まれてくるって、自分の中から自然に湧き出ているということだから、やっぱりそういう生まれ方をしたほうがいいんだろうなって、最近は思います。「水平線」も、歌詞とメロディがほぼ同時に生まれてきた曲です」

──「水平線」というタイトルに込めた思いを教えてください。

「水平線に終わりがないように、夢にも終わりはないっていう想いを込めました。夢を見つけて、仲間と手を取り合って夢に向かっているけど、たどり着く先が見えていなくて。それで不安になることもあるけど、“でも仲間たちと一緒に進んでいくんだ”って、そういうメッセージを込めて作っています」

──確かに、夢に向かって進んでいる途中は、不安になることも多いですよね。

「夢に向かって進んでいてもそうですし、何かを頑張っていても“自分は必要とされてないんじゃないか?”と思ったり、“私じゃなくてもこれはできるのかも”って思ったり。私自身も、そう思ったときもありました。でも、自分らしくいることが、もうそれだけで特別な自分なんだよって思います。そういうメッセージも、「水平線」には込めています」

──カップリング曲には「いま、うたうこの歌」が収録されています。

「AKB48を卒業するかしないかの頃、17歳のときに作った曲です。作曲を覚えたての時期に作った3、4曲のうちの1つで、当時のデモを聴くと赤ちゃんみたいな歌声をしています(笑)。そういう曲をまさか今になって歌うとは思っていませんでした。でも、今回のレコーディングで歌ってみると、今の自分とすごく重なる歌詞だと思いました。作った当時は恋愛ソングとして書いたんですけど、全然違う意味合いを感じました」

──今の自分と重なるのは、どんな部分ですか?

「当時、この曲を作ったときは、主人公と昔の恋人の関係をイメージして書いたんですけど、今歌ってみると私とかつて私を応援してくださっていた方たちの関係だなって、すごく思ったんです。メジャーデビューしてから1年ちょっと経ちましたけど、やっぱりアイドルの矢作萌夏とシンガーソングライターの矢作萌夏は違うじゃないですか。それで、“自分が思っていた矢作萌夏と違う”って、離れていったファンの方もいます。それはもちろん悲しいけど、私は私で今こうして立っているし、今の私をいいって言ってくれる人もいます。だから、私はそれでいいんだと前向きに思っているんですけど…そういう気持ちがある中で、「いま、うたうこの歌」は、私から離れていった人たちに向けて歌いたい歌詞だなって思ったんです」

──17歳のときに書いた歌詞が、今になってそういう意味を持つように感じるって、すごく面白いですね。

「本当に面白いです。当初は想像で書いた歌詞が、年月を経て実際の自分に重なって、今の自分にぴったりの曲になりました。そういう曲を今回のシングルのカップリングにできて嬉しいです」

──アイドルからシンガーソングライターになる過程で離れてしまったファンもいる一方、変わらず応援してくれている人はもちろんですが、新しくファンになった人たちも当然いると思います。

「“YouTubeで見て好きになりました”とか、たまたまサブスクで聴いて知ってくれたという方も多いです。この前は、インスタのリールで見て好きになってくれた韓国の方が、ライブに足を運んでくれていました」

──「水平線」も「いま、うたうこの歌」もそうですし、これまでの楽曲もタイトルや歌詞に日本語へのこだわりを感じます。

「そう言ってもらえると、すごく嬉しいです。かなり前から、日本語を大事にすることは意識しています。私、昔から現代文の成績だけすごく良くて、それもあって、日本語の言葉への自信もあるのかな?と思うんです。その上で、みんなと同じ言葉を使っても面白くないから、私っぽい言葉をたくさん生み出そうと考えています」

──SNSで約260万再生を記録した「死に花に、生命を」など、独特な日本語表現が印象的ですよね。

「自分らしい言葉を生むのが好きなんです。ただ、それでとんでもない言い間違いをすることもあるんですけど(笑)」

──昨年11月からスタートした『Acoustic Live Tour 2024-2025 "愛を求めているのに"』が1月22日まで続き、4月と7月には配信シングルのリリースも予定されるなど、2025年はより活発な活動をしていく形かと思います。

「2025年は、今のこの音楽性や自分にしかできない表現をどんどん固めていきたいですし、曲もたくさん書いていきたいですし、もっとライブもしたいです!」

──“自分にしかできない表現”を違う言葉にすると?

「いい意味で変わらず、流行に流されず、自分から生まれたメロディと歌詞をそのまま歌にしていくことが、結果的に自分にしかできない表現になっていくと思います」

──その上で、どんな歌を歌っていきたいですか?

「“自分はどん底にいたけど、矢作ちゃんの歌に出会ってからは、その歌に毎日助けられています”というメッセージをいただくことが多いんです。そういう人が、何年経って聴いても助けてあげられるような曲を書いていきたいです。私は病んでるときにいい曲ができやすいので、自分を病ませるようにもして頑張っていきたいです(笑)」

──自分を病ませるようにするのはどうかと思いますけど(笑)。さっき日本語表現の話を少ししましたけど、歌以外での表現活動にも期待しています。

「今回のリリースがきっかけでコラムを書かせてもらう機会をいただいたんですけど、それがすごく楽しくて。コラムでは自分の曲をもっと聴きたいと思ってもらえるような裏話や、オリジナルのストーリーを書いて楽しかったので、今度は小説とかにも挑戦してみたいです!」

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/中村功

RELEASE INFORMATION

2025年1月4日(土)配信

⽮作萌夏「⽔平線」

2025年2月19日(水)発売
初回限定盤(CD+Blu-ray+ブックレット)/PCCA-06366/1,980円(税込)
通常盤(CD Only)/PCCA-70584/1,100円(税込)

⽮作萌夏「⽔平線」

LIVE INFORMATION

2024年11月7日(木) 恵比寿 The Garden Room
2024年11月24日(日) 東所沢 ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールB
2024年12月3日(火) 渋谷 GRIT at Shibuya
2025年1月13日(月祝) 羽田 TIAT SKY HALL
2025年1月22日(水) 渋谷 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

Acoustic Live Tour 2024-2025 "愛を求めているのに"

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