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「あ、JTCだ」朝はラジオ体操、Teamsメンションは「さん」付け強要 幻滅して1年半で退職した男性

キャリコネニュース

画像はイメージ

「社内の改善をしてほしい」と求められて入った会社が、古い日本企業的な文化を持つ、いわゆる「JTC(Japanese Traditional Company)」だったら、どうすればいいだろう。

もともとSIerでエンジニアとして働いていた高野さん(仮名、30代男性)は、2年ほど前に転職サイト経由でスカウトされ地方の食品関係の会社に入社した。年収600万円を提示されて納得して入社したが、働き始めると違和感ばかりだった。

「朝一でラジオ体操が始まり、朝会や夕会が必ずありました。『あ、JTCだ』と思いましたが、時すでに遅し……」
「電子の稟議申請システムはあったものの、事前に対面での説明が必須でした。さらに驚いたのは、社内文書は紙面で上司が確認して押印し、その紙をPDFにしてグループウェアに掲載していました。おまけに、見ていない人がいるので部門長に別途メール配信…何のためのグループウェアなのかと」

こうして、「こんな会社入るんじゃなかった」と激しく後悔。早期退職した高野さんに、前職での経験について詳しく話を聞いた。(文:篠原みつき)

ノーネクタイも形骸化、別室に呼ばれ「ヒゲを剃ってこい」

いかにもJTCなその会社では、明文化されていないルールで注意されることも多かったそう。

「服務規程にないにもかかわらずヒゲは禁止でした。一度、別室に呼ばれ『ヒゲを剃ってこい』と言われ、剃り忘れた日には『何度も言わせるな』と再度注意を受けるほどでした。ノーネクタイ勤務も名ばかりでしたね。役職者との打ち合わせでネクタイを着用していないと、叱責される同僚がいました」

周囲は「TPOに合わせる制度だから仕方ない」という反応だったが、高野さんは納得がいかなかったようだ。

社内コミュニケーションツールとして使われていたTeamsにも、独特のルールがあった。

「メンションするときは失礼だから『さん』をつけましょうと個別メッセージで言われました。基本的にIT畑で育ってきたので、メンションは相手に気づいてもらうためのもので『さん付けは不要』という認識でした。なので、よく分かりませんでした。まぁ最後までさんはつけませんでした」

さらに驚いたことに、中途採用でも研修は寮で行われ、自宅が近くても強制的に相部屋で寝泊まりさせられた。

「しかも風呂は大浴場という……。このご時世に……。あとは、入社時にPCなどと一緒に印鑑を大小2つ渡されましたね」

こうした経験が積み重なり、「早めに退職しなければまずい」と入社1か月で転職活動を始めたそうだ。

「リモートワークは絶対にさぼっているから」と残業代なし

そんな環境で高野さんが精神的に最もつらいと感じたのは、特定の上司の存在だった。その上司は資格取得をやたらと推奨し、「自分が一番ものを知っている、自分が一番仕事ができる」という態度を崩さなかった。

「個人的には、資格と実務が伴ってこそ意味があると思っています。どんな人でも自分より秀でたものはあるはずで、社会人1年目の方からも学ぶべきことは多い。そういう考えを持てない人とは働きたくなかったですね」

また、「リモートワークは絶対にさぼっているから」という理由で、在宅勤務中の残業代は支払われないと社内規定で定められていた。

「これは法律違反じゃないかと思いますけどね……。ほかにも、技術支援でグループ会社を訪問した際、担当者同士の打合せだというのにグループ会社の社長から『なぜ俺に挨拶がないんだ』と激怒されて驚きました」

こうして、本質的でない部分に振り回される日々が続いた。

「なぜ上司に従えないんだ」改善提案は握り潰される

高野さんは業務の改善を期待されて入社したはずだったが、現実は大きく異なった。

「そもそも改善を行ってほしいとのスカウトだったので、5回程度は提案しました。ひとつも採用されないので、提案するのもやめましたね」

最も理不尽だと感じたのは、システム導入を巡る一件だ。運用上の支障を懸念した高野さんは、上司の方針に異を唱え、他部署の合意も得た上で代替案を推進していた。ところが、

「上司は私の後輩を呼び出し、『なぜ上司の方針に従えないんだ』と叱責しました。結局、運用に支障が出る上司の案が採用されたそうです(笑)」

このとき、高野さんはすでに退職を決め有休消化中だったが、改めて「上司が決定したことには意見も言えず、ここでは何も変えられない」と感じた出来事だった。

1年半で退職、違和感を見極めて「毎日楽しい」職場へ

こうして不満を挙げればキリがなかったが、「短期離職は転職市場で不利になる」と考え、なんとか1年半ほど在籍した後に会社を去った。転職活動では、面接時に違和感がないか気をつけるようになったという。

「会社のルールや、役職についての考え方が古くないか、面接で違和感があるところはお断りしました。入ってからでは、時すでに遅しになってしまうので」

「また、社内SEはやめようと考えました。改善したいことがあっても偉い人、声の大きい人の意見が強いため、本質的な仕事はできないと考えたからです」

慎重に次の職場を選んだ結果、現在はITコンサルタントとして年収800万円で働いている。仕事の生産性が非常に高い、尊敬できる人々に囲まれているそうだ。

「問題解決に向けて本質的なアクションを好む社風は、私の志向に合っています。時間が経つのが早く、毎日楽しく働けていますね。入社して数か月ですが、正直前職をはるかに超える学びがあり、日々成長を実感しています。前職の人が聞いたら驚くかもしれませんが、今は毎日一番早くオフィスに着いて掃除をしているくらいです。仕事でまだまだ追いつけないので、せめて皆さんに働きやすい環境を提供しようと思って」

ちなみに、前職について「腰痛持ちのためラジオ体操は時代錯誤だと思いましたが、やってみると腰痛が和らぐという良い面もありました(笑)」とも付け加えた。伝統的な会社が全て悪いというわけではないだろうが、自分に合わない環境を瞬時に見極めた高野さん。今度こそ伸び伸びと活躍できる場所を見つけたようだ。

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