由緒ある祈祷師が「あえてインチキを偽装」の理由とは?ド派手な退魔バトルがアツい〈新感覚〉ホラー『憑依』見どころ解説
カン・ドンウォン主演最新作『憑依』ついに公開
昨年韓国で公開され、公開初日から6日間連続で観客動員数第1位を記録し人々の話題をさらった『憑依』(読み:ひょうい)。人気ウェブトゥーン原作×実力派俳優カン・ドンウォン主演で話題を呼んでいた本作が、ついに9月6日(金)より新宿ピカデリーほか全国で公開される。
霊が全く視えないインチキ祈祷師のチョン博士(カン・ドンウォン)は、助手のインベ(イ・ドンフィ)と共に言葉巧みに依頼人を騙し、除霊と称した儀式でお金を儲けていた。ある日、ユギョン(イ・ソム)という若い女性から悪霊に取り憑いた妹(パク・ソイ)を助けて欲しいという依頼を受ける。
いつものように偽の除霊を行おうとすると、妹の人間離れした動きと気配から、チョン博士の持っていた鈴と七星剣が反応する。実はチョンは伝統ある祈祷師の末裔で、過去に起きた忌まわしい出来事により素性を隠して生きていたのだ。
チョンとユギョンはさらわれた妹を取り返す為に悪霊と対峙するが、じつは霊の正体は古くからいる悪鬼で、人間を器(うつわ)に次々と憑依して襲い来る。いつどこで、誰に憑依するか分からない恐怖のなか、やがてチョン自身にまつわる重大な秘密も明らかとなり……。
人気ウェブトゥーンをガチ怖かつコミカルに映像化
原作のウェブトゥーン「憑依」(文:フレッシャー/絵:金弘泰)は、「マヤゴ~魅惑の山神」「デモニアック~悪魔の繁殖」とシリーズ化されている人気作。確かな画力に加え、ユーモアとスリルの緩急あるサクサク展開でどんどん読ませる快作だ。
その不動の主人公が本作でカン・ドンウォン(『ベイビー・ブローカー』『新感染半島 ファイナル・ステージ』ほか)が演じるチョン博士。とはいえ原作からの改変点も多いので、あえて予習ゼロで観てもいいだろう。
ここ数年ウェブトゥーン原作ものは大きなトレンドとなっているが、原作を一切知らなくてもまったく問題ないのは本作も同様。ということで、まだまだ厳しい残暑が続く晩夏~初秋に要チェックの映画、『憑依』の見どころをざっと紹介していこう。
ワケあり祈祷師 VS 古(いにしえ)の悪霊
本作の原題を直訳すれば、『チョン博士のお祓い研究所』、英題は『Dr. Cheon and Lost Talisman』(意:チョン博士と失われた護符)といったところか。ユーモアを維持しながらもシャープなホラーとして映像化してみせたのは、パク・チャヌク『別れる決心』やポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』など大物監督の助監督として経験を積んだキム・ソンシク監督。本作の冒頭、イ・ドンフィ演じる助手のインベが依頼人の豪邸を前に「こんな家に住むには……」とボヤくシーンは(ゲストキャストも含め)、『パラサイト』へのオマージュのようでニヤリとさせられる。
『JSA』や『オールド・ボーイ』、『お嬢さん』など数々の傑作を世に送り出してきたパク・チャヌク監督も、「一味違っていた」と本作が醸し出す未知の恐怖を称賛。古くから人間の体を転々としながら霊力を狩ってきた悪鬼が、ある“目的”のため人間を器(うつわ)にして次々と憑依して襲い来る――。いつ、どこで、誰に憑依するかも分からない、まさに予測不能な<新感覚>憑依ホラーエンターテイメントに仕上がっている。
キャラ設定から退魔アクションまで見どころ満載!
ケーハクな主人公像は映画や小説、漫画で定番の設定。キャストに引っ張られやすい映像作品ではより分かりやすいギャップも求められるが、黙ってさえいればクールなイケメンであろうチョン博士=カン・ドンウォンは、観客の深読みも誘発する好キャスティングと言えるだろう。そして目の据わった星野源とでも例えたくなる独特なバイブスを持つイ・ドンフィも、シティボーイ系俳優らしいスコンと抜けた演技でドタバタ劇の側面を強調させる。
そして軽快に始まる本作にドロリとした恐怖をもたらすのが、イ・ソム演じる依頼人のユギョンと、ホ・ジュノ演じる悪鬼・梵天。物語の中盤に差し掛かる前には早々に<インチキじゃない、ほんとにヤバい悪霊退治>展開に突入し、ユギョンの素性や梵天の厄介な目的、チョン博士の真意が徐々に描かれていく。梵天(ホ・ジュノの顔面力が炸裂!)が取り憑いた人々との戦いや逃走シーンは、まるでステルスゲームのような演出がスリリング。また、博士を幼少期から知る古物商のファン社長(キム・ジョンス)は重要な役どころでありながら基本設定の解説も担ってくれるという親切ぶりだ。
ホラーが苦手でも無問題! シリーズ化にも期待のSF心霊アクション
同じく韓国の『哭声/コクソン』(2016年)のような生理的嫌悪を誘う激怖スリラーが苦手でも、例えば『霊幻道士』(1985年)や『ゴーストバスターズ』(1984年)のような退魔スリラーを楽しんできた人ならば、オカルティックかつユーモラスな演出も満載の本作を存分に楽しめることだろう。オタク心をぐっと掴まれる呪具の数々や、心霊とは無関係なガチの護身グッズなども目に楽しく、とくにチャン博士が大事にしている<剣>は公式グッズ化希望のカッコよさ。
クライマックスの総力戦も手に汗握るド派手なアクションが繰り広げられ、CGによる“捕縛”表現など見どころ満載。なお、BLACKPINKのジスが“ある重要な役”で登場するのだが、このキャスティングはソンシク監督がファンだったからというのが大きな理由とのことなので、我々もその神々しい姿を素直に拝んでおこう。原作よろしくシリーズ化も十分あり得る〆になっているので、そのあたりにも期待したいところだ。
『憑依』は2024年9月6日(金)より全国公開