市民が関わる大切さに共感、新図書館づくりへ四日市で「図書館フォーラム」
図書館フォーラム「あったらいいなこんな図書館」が9月16日、三重県の四日市市文化会館で開かれた。専門家によるシンポジウムでは、あらたな魅力を創り出そうと努力してきた全国の図書館の事例が紹介された。利用しやすい図書館にするためには、建物ができたあとこそ大切で、市民が主体的に運営にかかわる必要があることが語られた。
四日市の新しい図書館に市民の意見を反映させようと活動している「ライブラリーフレンズ四日市」と「図書館サービス向上委員会『りぶしる』」が主催し、四日市市と市教育委員会が後援した。約230人が参加した。
〇市民の声真っ先に聞けるのは市民
四日市大学名誉教授でNPO法人市民社会研究所代表理事の松井真理子さんが「みんなでつくる図書館」と題したメッセージの講演をした。多くの市民の声を真っ先に聞いて拾い集めることができるのは市民だけで、市民の力を採り入れて、「みんなでつくる」ことが力強い街をつくると説明した。
全国の図書館の試みが紹介されたシンポジウム
「市民参加の図書館づくり事例紹介」では、図書館サービス向上委員会「りぶしる」委員長の山崎博樹さんが、農業を支援する図書コーナーを設けた岩手県柴波町図書館、年100回は市民が集って運営のアイデアを出し合っている兵庫県伊丹市立図書館、児童閲覧室に専用の庭をつくって親子が安心して過ごせる石川県立図書館など、全国各地の図書館のアイデアを紹介した。
〇図書館協議会もオープンスペースで
泉大津市立図書館館長の河瀬裕子さんは、老朽化で新築することになった時に市民協働のワークショップや他の図書館を訪ねる遠足型ワークショップを開き、街に寄り添う設計を試みたことを説明した。地域の特色を考え、ビジネス支援や地域産業の図書や資料を充実させたが、どう使うかのセミナーを開くなど、利用しやすさにも心を砕いたという。図書館の運営を話し合う図書館協議会もオープンスペースで利用者のいる中で開いているなど改革を続け、年配者に偏っていた利用者が各年代に広がっているという。
岐阜市立中央図書館「みんなの森ぎふメディアコスモス」総合プロデューサーを退いたばかりの吉成信夫さんは、できたばかりの図書館に就任した時、80m×90mの広い図書館の中で小さい子どもが泣いたらどうするかを職員と考え、やがて、「子どもの声は未来の声」の心の声がひらめいたと、図書館のあり方について方向性を決めたことを話した。中高生と司書が掲示板で交換日記をするような試みで利用者との交流が進んできたことも紹介した。
四日市出身の天野彰子さん、奥村優さん、今井愛衣莉さんによるミニコンサートも
〇中央通りの公園整備と図書館の連携も意見に
シンポジウムのあと、希望者から抽選で決めた約50人によるワークショップが開かれた。冒頭、四日市市から新図書館計画の現時点での状況の説明があり、中央通りが国道1号からJR四日市駅にかけて散策できる公園として整備されることも紹介された。
ワークショップでは新図書館に臨むことを各グループで話し合い、幾つかのグループが発表した、イベント空間、カフェや芝生広場、託児所など様々な要望が出たが、進行役を務めた図書館サービス向上委員会「りぶしる」の山﨑さんは「これらは全国どこかの図書館で実現している。みなさんの要望は、ほとんどは実現可能です」と話した。中央通りの公園化を採り入れ、「公園で読み聞かせを実現するなど、公園と図書館を一体にして活用できたらいい」との意見もあった。
新図書館に臨むことをメモにして出し合ったワークショップ