辻堂さんぽのおすすめ6スポット。フード、ドリンク、木工品、手作りの“極み”に出合う
辻堂には心ひかれるものが多くある。海、緑、そして職人魂を感じるクラフト。作り手はいつも自身のクリエイティブを貫き、ここだけのものを追い求めている。妥協なき誠実な手仕事から生まれるフード、ドリンク、木工品を探しにいざ街へ。
茅ケ崎らしさを表現したオンリーワンのビール『マツナミベース』/『Green Beach Brewery』
2025年3月に自家醸造を開始した湘南一小さいクラフトビール醸造所併設のビアバー。定番の「ナマボラガー」が革新的なのは、茅ケ崎産松の葉と松ぼっくりを使っていること。代表の北沢輝人さん宅の庭で収穫される茅ケ崎産ホップを用いた「CHOPIPA」も原材料の芳醇さを深掘りしたことでこっくりと喉越し豊かな味わいに。
18:00〜22:30LO、(土・日は12:00〜)、水・木休。
☎︎なし
地元民が12時を心待ちにする間借りのパン屋『西村式パン製作所』
「ベーカリーの製造スタッフの求人に応募したのは、手を動かすことが好きだったからなんです」。店主の西村紀子さんがパン業界に携わり10年ほど。現在は夫の居酒屋『楽』を間借りし、週3日の営業ながら街のパン屋として名をはせる。自身の経験を元にしたレシピで焼くパンは、老若男女を問わない安心の品揃え。
火・木・土の12:00〜売り切れ次第終了。
☎︎なし
体思いの美味と良心価格『潮騒料理 亢(たかい)本店』
和食ひと筋で、生産者や漁師が仕入れる食材、無添加の自家製調味料など使うもの、口にするものすべてに心血を注ぐ。「おいしいものをリーズナブルに」を心掛け、ランチの定食は作品さながらの凝った逸品が集結。素材の持ち味を生かした料理は、価格以上の満腹感と多幸感をもたらしてくれる。
11:30〜13:30LO・17:00〜20:30LO(火・水は17:00〜、日は昼営業のみ)、無休。
☎︎070-4165-7229
クラフトジンが秘めているポテンシャルをさらけ出す『cafe&gin mono』
国内外のクラフトジンと、自家焙煎のコーヒーの二枚看板で活動していた吉田さん夫妻が「食の楽しさと面白さをしっかり届けたい」と、2020年に今の場所を拠点に開店した。コーヒーの生豆と果肉を使ったオリジナルのBARISTA GIN 1050円は口中に新鮮味が広がり、作り手のひたむきさをじ〜んと感じる。手づくりスイーツとの相性にも感激。
11:00〜21:00、不定休。
☎︎0466-47-6251
木工作品は愚直にものづくりを続けた証し『La Muga』
特許を取得したヒノキの輪切りのお皿と出願中のまな板をメインに、製造から販売までを一貫して行う今西知宏さん。金属部品メーカーを退職し、起業したのが60歳。静岡県浜松市天竜の間伐材となるヒノキを材料に、独学で発明した割れない技術は使い手の暮らしを豊かにしている。今後は「技術を継承したい」と野心を燃やす。
火と土の11:00〜17:00(営業日変更の場合あり、要問い合わせ)。
☎︎090-2677-3726
節目を迎えた店主が淹れる純度100%のコーヒー『LITTLE TURN COFFEE』
50歳を目前に、生き方を見つめ直した松本勝大さんが始めたテイクアウト専門のコーヒースタンド。店構えだけでなく、注文後に挽いた香ばしい豆で淹れてくれるハンドドリップも、14時間かけて常温抽出するアイスコーヒーもシンプルなのに個性が突出している。独自のルートで極めたコーヒー学と腕前は確かで、どれを注文しても間違いないと絶対的な信頼を置ける。
6:00〜15:00、火休。
☎︎なし
開放的な辻堂で見つけたクラフトマンシップ
辻堂と聞いて、ピンとくるのは2011年開業の商業施設『テラスモール湘南』という人も多いのではなかろうか。最新のファッションに安定の外食メニュー。生活必需品や食品を見たり買ったりできる上に、駅直結で季節にも天候にも振り回されずにお出かけができる。
いつなんどきでもさんぽ日和で快適で最高すぎるスポット……なのだが! ぜひとも街歩きを推奨させていただきたい。なぜなら、作り手が納得いくまで手間と時間をかけた辻堂だからこそ出合える“クラフト”があふれ返っているのだから。
例えば、湘南海岸近くにある『マツナミベース』にはザ・茅ケ崎を全面に押し出した松のクラフトビールがある。「以前は別の醸造所で製造をお願いしていたのですが、やっと店舗横に併設する自分たちの醸造所で手作りできるようになりました」と、北沢さん。駅から20分近く歩いてでも飲みに行くべき、出来たての一杯だ。
県道戸塚茅ヶ崎線沿いの『La Muga』は日本で、いや世界でここにしかない木工品が並ぶ。「乾燥すると割れてしまう、という常識を覆したかった」と、輪切りにしたヒノキを商品化した今西さん。お皿とまな板以外に小物やアクセサリーなど、ヒノキの可能性を最大限に引き出したユーモラスなアイテムもたくさん手掛けていて、わざわざ訪れる価値あり。
職人魂を感じずにはいられないグルメも。『潮騒料理 亢 本店』でふるまわれる料理は、すべてが主役級。「私自身、添加物が苦手ということもあり調味料は自家製。作れるものは作りたいし、せっかく食べていただくなら体にいいものでないと」。店主の高井大輔さんは、取材中も楽しそうに手を動かし続けていた。
『西村式パン製作所』は北口周辺の再開発された雰囲気から一転、こぢんまり感が残る南口方面にある。12時の開店と同時に、お客さんで埋め尽くされる店内に並べられたパンは、すべて店主の西村さんが焼いたものだ。自家製酵母、無添加の生地、栄養豊富なグラスフェッドバターなど、使う素材を徹底しているほか、店名に「西村式」とあるように製法も追求している。
「私自身、お酒が好きということもありアルコールに合うパンを焼いていたのですが、常連さんのお願いで気づけばバラエティー豊かな品揃えになっていました」。そんな柔軟なパン作り精神こそ、新作の誕生にひと役もふた役も買っているに違いない。
自分のお店を開くならやっぱり辻堂がいい
地元でも住まいでもない辻堂を拠点に選んだ人々もいる。『cafe&gin mono』の吉田匡さんは「誠心誠意作った料理や商品を丁寧に販売するお店が多い印象です」と、話す。バリスタのために考案したオリジナルのジンも店内で焙煎するコーヒー豆も“いいもの”と共感して買ってくれる人が多い街、とも話してくれた。
また、『LITTLE TURN COFFEE』の松本さんは、コーヒースタンドを開業するために都心から辻堂へ。「以前からよく来ていて、ありのままを受け入れてくれる空気感がいいなって」。
やりたいことも作りたいものも、ありのままに思うがままに。この街にクラフトマンが多いのは、寄せては返す波のように必然なのかもしれない。
取材・文=新居鮎美 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2025年7月号より