企業がスポーツスポンサーで得られる価値とは|Jリーグクラブや天皇杯を支援する企業のトップを直撃
企業はなぜスポーツチームのスポンサーをするのか?Jリーグ・モンテディオ山形のユニフォームスポンサーであり資本パートナーでもある株式会社SCOグループは、トライアスロン・卓球のアスリート、ダンスのプロリーグDリーグに参戦するavexROYALBRATS、そして2024年にはサッカー天皇杯の特別協賛を行っています。
そんなSCOグループは、2021年からスポーツ協賛を始め、事業の急成長とともにわずか数年で幅広いスポーツへ支援の範囲を広げました。
玉井雄介社長(以下、玉井)には、スポーツスポンサーへの確固たる想いがあります。インタビューを通して、“企業がスポーツスポンサーで得られる価値”について考えていきます。
「このクラブと一緒に地域を盛り上げたい」がスポーツスポンサーのきっかけ
ーーSCOグループは2021シーズンのSDGsパートナーから、モンテディオ山形との関係がスタートしました。もともとスポーツへの関心はあったのでしょうか?
玉井)モンテディオ山形から話をいただくまで、スポーツ支援への関心は正直ありませんでしたし、まだまだ会社としてそうしたフェーズにないとも思っていました。
ですが、一度協賛をして山形でホームゲームを観戦させていただいた際の感動はその後にとても大きな影響があったと思います。
当時はまだコロナ禍の影響で、観客は無歓声での応援だったのですが、モンテディオ山形サポーターが一生懸命に選手たちを応援する姿が、サッカー初観戦の私にとってすごく感動的なものでした。
ーーモンテディオ山形は、SCOグループのスポーツ支援のきっかけになるとともに、2023シーズンからはユニフォームスポンサーになるなど、その関係性も年々深くなっています。
玉井)初めての観戦後、モンテディオ山形の相田社長が東京のオフィスに来られて、じっくりお話をさせていただきました。その際におっしゃられた、「クラブを強くするだけでなく、山形という地域をこのクラブとともに発展させていく」という言葉に強く共感し、「このクラブと一緒に歩みたい」と感じたことが、関係性を深めていくきっかけになっています。
それまで山形には縁もゆかりもなかったのですが、こうして共感するクラブとともに地域を盛り上げるためにご一緒できてることを嬉しく思っています。
山形を支えている誇り
ーースポーツチームのスポンサーをすることに対して、どのようなことを期待していますか?
玉井)正直、広告や宣伝の投資対効果としての期待はあまりありません。モンテディオ山形で言えば、「山形のために、モンテディオ山形とともに街をよくしていく」ことを目指したスポンサーシップだと考えています。
期待とは少し違いますが、活動を通して山形を支えているという経験やそこから生まれる誇りのようなものは、スポンサーをすることの効果として感じています。
ーーモンテディオ山形のスポンサーをはじめて4シーズン目。印象に残るエピソードはありますか?
玉井)私としては、山形県民のなかでまだモンテディオ山形の試合観戦に来たことがない人に、より多く来ていただけるように働きかけたいと思っています。試合観戦後に山形駅前の飲食店に行っても、「サッカーチームがあることは知ってるけど、観に行ったことはない」という人がまだまだ多くいます。そうした方々に観に行きたいと思っていただくことで、より山形が盛り上がることになりますよね。
また、2023シーズンの最終節は印象として深く残っています。息子と2人で観戦に行き、J1昇格プレーオフ進出に向けて勝てるかどうかという試合だったのですが、見事な勝利に感動して涙してしまいました。
それほどまでに心が動かされるものがモンテディオ山形にはありますね。
さまざまなスポーツを通して生まれる生きがい
ーーモンテディオ山形からスタートしたSCOグループのスポーツへの協賛は、トライアスロン、卓球、ダンス、そしてサッカーでは天皇杯の大会協賛など、より幅広いものとなっています。
玉井)スポンサーをする対象は増えていますが、それぞれモンテディオ山形との取り組みのように明確な目的を持っています。
その中で共通するのは、『テクノロジーで「105年活きる」を創造する』という私たちのビジョンとのシナジーです。健康寿命を延ばすために、「健康になりましょう」と直球に言われても、なかなかすぐに行動には移せないですよね。そこには、“生きがい”があることがとても重要だと考えています。モンテディオ山形サポーターであれば、彼らがJ1に上がるだけで何年か寿命が延びますよね(笑)。そうした意味で、スポーツというものが人々の生きがいを作り、健康を意識するために非常に大きな原動力を持っているものだと考えています。
ーースポーツへのスポンサーなど、事業との距離が近くない活動に対してもSCOグループの社員さんは熱量が高いですよね。
玉井)社員がそうした活動に熱心になってくれるのは、シンプルに「生き方を提唱する会社」としてまずは自分がなにかに一生懸命になっていることが大事だと理解してくれているからです。なにかやろうとするときには、みんなガチになってしまう、一球入魂な感じが企業の文化としてありますね(笑)。
ーーこのように社員を巻き込んでいくねらいはありますか?
玉井)いろいろなことに一生懸命な人って、「この人いいな」「仕事も楽しんでやっているんだろうな」と思いますよね。一見業務に関係のないことで、私からこれをやろう!と言われたときも、“生き方を磨こう”という想いでやろうとしているんだろうな、と社員が理解してくれているように感じます。
弊社ではスポーツ以外にも阿波踊りなどに取り組んでいます。地域のため、誰かのために取り組もうという想いはどの活動にも共通していて、そのために本気になって取り組むことに価値が生まれてくると考えています。
「徳島の阿波踊りを変えよう!」という想いで企業として「連」を出して取り組みました。2年目の今年はプロダンスチーム『avex ROYALBRATS』も参加し、地元の人が感動するパフォーマンスに。
スポーツチームへの“共感”を大事に
ーーSCOグループは、事業の成長も著しいなか、スポーツ支援に対しても拡大を続けています。そこに関連性はありますか?
玉井)スポーツへの協賛は、企業にとって事業へのリターンを期待するものではないと私は考えており、それを期待すると続かないと思っています。私たちも「事業が伸びたからスポーツに投資しよう」という関連性はなく、それぞれのプロスポーツチームやイベントに対して、本当の意味で“参加したい”と思えたときに投資することを決めています。事業がうまくいっているかどうかのタイミングではなく、そうした気持ちが一致したタイミングの方が重要ですね。
ーー2024年からはモンテディオ山形に資本参画されました。なにか変化したことはありますか?
玉井)モンテディオ山形との関係性での変化は大きくはなく、対外的にまわりの企業から注目していただけるようになったくらいです。先程申し上げたように、モンテディオ山形とは山形の地域を変えたいという共通の意思のもと一緒に歩んでいる感覚ですので、形上もより近い関係になったということではないでしょうか。
モンテディオ山形 相田社長(左)との記者会見での一枚
ーーこれから先、スポーツとどのように歩んでいきたいか、思い描いていることはありますか?
玉井)野球の大谷翔平選手など、そのスポーツに真剣に打ち込んでいる人の活躍は見る人を感動させますよね。私たちがスポンサーするトライアスロンの稲田弘さんは、90歳を超えたトライアスロン選手、本当の意味での鉄人です。そうした方を応援していると、自分のチャレンジにも限界はないのではないかと思わされるくらい、スポーツの持つ力は大きいと考えています。いまのところ今後のスポーツとの関わりの具体的なプランがあるわけではないのですが、これからもスポーツをやること、見ることを通じて人々が生きがいを作れるようなところに関わっていきたいですね。
ーーありがとうございました。