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特性隠し限界…入院に。自閉症大学生が学び続けるために支援を申請。認められた合理的配慮は【読者体験談】

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特性隠し限界…入院に。自閉症大学生が学び続けるために支援を申請。認められた合理的配慮は【読者体験談】

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

この記事で分かること

ASD(自閉スペクトラム症)の特性を隠し大学生活を送った結果、心身が限界を迎えた大学生のリアルな実体験合理的配慮を申請したときの流れと、実際に認められた支援内容配慮が適切に実施されなかったときに実際に行った対処法支援を受ける立場として大切だと感じたこと

診断を隠し続けた果てに……心と体が悲鳴を上げた日

投稿者のプロフィール
年齢:24歳診断名:ASD(自閉スペクトラム症)診断時期:16歳エピソード当時の年齢:23歳
ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けている24歳の薬学生です。
中学時代は不登校だったため、出席日数が足りず、公立高校の受験を諦めるように言われました。とても悔しく、自分を否定されたような気がしてつらい思いをしました。

この経験もあって、大学では障害のこと、通院していることを隠し続けていました。でも、特性を隠して周りに合わせる生活は本当に厳しいものでした。マルチタスクが苦手な僕は、課題が多いときや締め切りが迫っているとき、要領よくこなすことが難しいからです。1つの課題にのめり込んでしまって時間がかかる。しかし、そのような状況であることを伝えられないまま、がむしゃらに頑張りすぎる。そんな状態だったので、単位が足りず留年も経験しました。

そして大学4年生のとき、ついに限界が来ました。講義に加えて学内実習が忙しくなり、課題が山積み。連日徹夜して課題をこなすことも多々ありました。そんな中で人間関係もうまくいかず、自傷行為が出るようになりました。そして疲労とストレスで倒れ、精神科に2週間入院することになったのです。

これ以上、自分の特性を隠し続けていては前に進めない。必要な支援を受けて、薬剤師になりたいと強く思いました。自分が変わらないと、目指していた医療従事者になれないと感じた僕は、退院後、思い切って大学の学務課に相談しに行きました。入院していたこと、困難はあるけれど学業を続ける意思があることを伝えました。すると職員の方が申請書類を渡してくれて、「学校にお願いしたいことを書いてください」と言ってくれたのです。

認められた配慮は以下の3つでした。
欠席届に添付する診断書及び医療機関受診の証明書の免除学内実習で欠席時は後日補講実習不眠時の保健室利用
「ここまでしてもらえるのか」とありがたい気持ちでいっぱいでした。暗闇の中にいた僕にとって、本当に希望の光でした。

「薬剤師になりたい」差し伸べられた手と、一筋の光

でも、予期せぬトラブルがありました。

体調不良で学内実習を欠席した日のこと。後日補講を受けられるはずだったのですが、友人から「先生、あなたのこと『出席したこととする』って言ってたよ」と聞いたのです。それを聞いて、直接担当の先生に確認をしにいきました。するとやはり、再実習はしないと言われたのです。合理的配慮を受けられることになり、これから頑張っていこうと思っていた矢先のことだったのでショックでした(もちろん、この先生以外で補習をしてくださらない先生はいらっしゃいませんでした)。

それに、欠席した事実があるのに「出席した」となったら、のちのちトラブルになるだろうとも思いました。学則上、不正な履修とみなされた場合は単位の取り消しもあり得ます。必死に、担当の先生教員にお願いしました。先生にも何か理由があったのかもしれません。何度依頼しても聞き入れてもらえなかったので、その上司にあたる教授に相談することにしました。

「再実習は面倒だから」立ちはだかった支援の壁

教授の補講で得た安堵

教授に、担当教員から再実習をしてもらえないことを伝えました。すると教授は「分かった、私がやろう」と、再実習を快く引き受けてくださいました。後日、教授から補講を受けて無事に実習を終えることができた時、やっと受けられたと心底ほっとしました。今でも再実習をしてくださった教授に感謝しています。このようなことがあってから、支援の受け手である僕自身も、おかしいと思った時にはきちんと確認し、相談する勇気が必要なのだということを痛感しました。

個人に頼った不安定な支援ではなく「仕組み」作りを

合理的配慮を得たおかげで、僕は今も学び続けることができています。特に「診断書の添付免除」は、慢性的な体調不良を抱える僕にとって本当に大きな支えです。僕と同じように見えない困難を抱えながら学ぼう、働こうとしている人たちには、個人に頼った不安定な支援じゃなくて、誰もが安心して学べる「仕組み」ができればなと思います。

イラスト/志士ノまる
エピソード参考/ゆーき

(監修:鈴木先生より)
本来であれば、ASDということを大学に告知して理解した上で学生生活を送ることができればいいのですが、ASDへの理解が乏しい現実もあります。担当教諭に理解の差があるのも事実です。今回は教授の理解があったからよかったのですが、薬学部全体での理解が必要です。そのためにはこのようなことを学内全体で共有していかなければなりません。ASDだけでなくADHDなどもある場合は提出物を忘れたり、講義の時間を間違えて出席日数が足りなくなったり……などなどが続き、留年を繰り返してしまう場合もあります。ADHDは治療によって改善させることも可能ですが、ASDは困難な場合も多いです。ASDのグラデーションが濃いとさまざまな問題が起きるため注意と工夫が必要です。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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