「今咲いているのは、10年前から頑張ってきた花たち」北海道の夏、森あそびはいかが?花を楽しむ豆知識
夏がやってきました。
筆者は元々京都出身で、北海道に来たのは2004年。当時札幌駅の前にあったビルの温度計の最高気温は「30℃」で、夏は全国トップクラスの暑さを誇る京都出身者からすると30℃を超えることがほとんどないことに驚きました。
そんな北海道も最近では30℃を超える「暑い夏」が来るようになりました。暑さに慣れていない道民の方にはつらい季節かも知れませんが、それでも夏はやはり野外で楽しみたい人も多いと思います。海やプールもいいですが、せっかく自然豊かな北海道なので「森あそび」も夏の選択肢に入れてみてください!
夏の森と言えば「虫探し」ですが、「虫は苦手!」という方も多いと思います。虫のおもしろさも語りたいところではありますが、今回は「夏の花」に注目して森の魅力をご紹介していきます。
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
「滝野すずらん丘陵公園」の「滝野の森ゾーン」から、森の住人KENTAが、自然の魅力や楽しみ方を伝える連載です。
「色」に注目
「夏の花」 と聞いて思い浮かぶ花といえば、ヒマワリやラベンダーなどでしょうか?
どちらも太陽が大好きで、暑い夏の日差しをたくさん受けて咲く花たちですね。
一方で、森の中は夏になると緑が濃くなって全体が薄暗くなります。遠目に見ていると「緑一色」なんですが、いざ森の中に入ってみると結構いろんな「色」があります。今回はそんな夏の森に咲く花たちの「色」に注目してみました。
暗い夏の森で目立つ「白」
最初に紹介するのは「白」。夏の森は暗いので白い花が目立ちます。
オオウバユリ
夏の森で存在感を存分に発揮しているのが、ラッパのような花をたくさんつける「オオウバユリ」。
春一番から葉っぱを出して、夏になると大きな花をつけます。ただこの花は開花するまでに10年くらいかかると言われているので、今咲いているのは10年前から頑張ってきた花たちなんです!秋には種をいっぱい作って風の力でばら蒔きます。
アジサイの仲間①ツルアジサイ
森の花の中には、小さな花が集まって大きく見える植物がたくさんあります。その代表格がアジサイの仲間。
滝野の森では主に3種類の白いアジサイの花を見ることが出来ます。
一つ目が「ツルアジサイ」。
その名の通り、ツルになっているアジサイで、ヤチダモなどのまっすぐに伸びた木に巻き付いて成長していきます。満開になると森の中に白い柱ができあがり遠くからでもよくわかります。
アジサイの仲間②イワガラミ
ツルアジサイによく似ているのが「イワガラミ」。
こちらもツル性の植物で、ツルアジサイより少し遅れて花が咲きます。ツルアジサイとの違いは、花に見える「額片」の枚数。ツルアジサイは4枚、イワガラミは1枚だけついてます。
ちなみにアジサイの花は真ん中のふわふわした部分で、花に見える額片は「飾り花」とも呼ばれ、虫を集めるためのものです。そしてそこがツルアジサイとイワガラミを見分けるポイントにもなっています。
アジサイの仲間③ノリウツギ
3つ目が「ノリウツギ」。
ノリウツギはツルではなく低木です。他の2種類と違って花全体の形が三角形になります。開花時期はイワガラミよりさらに後。 同じアジサイの仲間でも開花時期が少しずつずれているので順番に楽しむことが出来ます。ちなみに漢字で書くと「糊空木」。その名の通り、木の皮を剥くとヌルヌルしていて、切ると真ん中に空洞があります。
ちなみに滝野の森ゾーンにある「森の観察デッキ」の近くには3種類すべてがあり、高さ5メートルのところを歩ける空中回廊になっているので、普段は下から見上げることしかできないツルアジサイやイワガラミの花を上から見ることもできます。
夏の森には、まだまだ個性的な花々があります。
きれいなのに、「足の裏の匂い」がする?!さらに、植物界の常識を覆す花も。
後編の記事でお伝えします。
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
文:森の住人 KENTA
国営滝野すずらん丘陵公園 自然環境マネージャー。1978年札幌生まれ京都育ち。約6年間のサラリーマン生活を経て、森についての知識・経験ゼロの状態で滝野の森ゾーンの担当になり、様々なイベントの企画や広報、森づくりなどを担当。公園内にヒグマが侵入した際は専門家と一緒に現場の最前線で調査を担当。滝野の森staffXにて監視カメラを使った野生動物たちのリアルな様子などを発信中。
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2025年6月)の情報に基づきます。