きのこ洗う洗わない論争に決着!正しい下準備でもっとおいしく
きのこは洗う?洗わない?
きのこは洗うべきかどうか、迷いますよね。きのこの種類によっては、汚れなのかもともとの色みなのか見分けが付きにくいものも。洗わずそのまま調理するのがためらわれるような場合には、どうしたらよいのでしょうか。
そこでここでは、洗わないほうがよい理由と、洗ったほうがよい場合の判断基準を徹底解説。洗ったときの風味・食感などへの影響や、きのこの種類別の下処理方法についても詳しくご紹介します。
ちょっとした洗い方や下準備次第でもっとおいしく食べられるきのこ、洗う派も洗わない派も必見です!
きのこを洗わない理由
基本的に、スーパーや青果店など一般的なお店で販売されているきのこは、洗う必要はないとされています。その理由は大きく2つ。
市販のきのこは清潔な環境で栽培されているから
きのこのパッケージで「菌床」という文字を見かけたことはありませんか?これは「菌床栽培」である証。木材の粉(おがくず)に栄養を与えて作った菌床に、種菌を植え付ける栽培方法です。このきのこは衛生管理された清潔な環境で育てられるため、洗う必要はありません。
風味や食感が落ち、栄養も損なうから
きのこを洗うと、実はもったいないことだらけ。ほぼ水分で形成されているきのこは、水洗いすると風味が流れ出てしまい、せっかくの食感が失われてしまいます。また、きのこに多く含まれるビタミンB群やカリウムなどの水溶性の栄養も、溶け出して失われる可能性があるため、洗わないほうがよいとされています。(※1)
汚れが気になる場合:水洗い以外の対処法
清潔な環境で栽培されているとはいえ、おがくずやほこりなどが付着していることもありますよね。そんな汚れが気になる場合は、湿らせたキッチンペーパーや布巾を用意し、きのこを傷つけないようやさしく拭き取りましょう。また、小ぶりのブラシがあれば便利です。サッと払うだけで、きのこを濡らすことなく汚れだけを簡単に落とすことができますよ。
残留農薬は?
国内生産のきのこは農薬の使用が厳格に管理されているため、残留農薬の心配はほぼないとされています。高温殺菌を用いることで農薬を一切使用しないきのこ農家やメーカーも多く、一般的なスーパーで流通しているきのこも無農薬のものがほとんど。パッケージをよく確認して、有機JASマークやオーガニック、無農薬の表記がある商品を選ぶとより安心ですね。
きのこを洗う理由
一方、場合によっては洗ったほうがよいきのこもあります。ここからは、洗うべききのこの判断基準とその理由をご紹介します。
きのこを洗うほうがよい場合とは?
天然のきのこ
道の駅や物産館などで、貴重な天然きのこが販売されていることがあります。もし手に入った際には、ぜひ水洗いを。味も香りも強く格別においしいといわれる天然もののきのこですが、衛生管理された菌床栽培きのことは違い、自然環境の中で汚れや虫が付着している可能性があります。
天然きのこは目に見える泥汚れやほこりを洗ったあと、「虫出し」という工程が必要です。ボウル1杯程度(約1Lほど)の水に小さじ2〜3杯の塩を混ぜ、きのこを15分ほど浸しましょう。付着物が浮いてきたら、すすいでよく水気を拭き取り作業完了です。まいたけのように形が複雑なきのこは、少し長めに浸けて様子をみてくださいね。粘りの特性を持つきのこ
粘りのある膜に覆われたなめこは、ぬめりの中の汚れを落としにくいため、水洗いがおすすめです。また白い胞子やおがくずが付着しやすい生きくらげも、洗ってから使うことが推奨されています。
生で食べるきのこ
生食可能なマッシュルームは、洗う・洗わないの意見が特に分かれるきのこのひとつ。ほかのきのこ同様、洗うとせっかくの味や風味が逃げてしまい、食感も水っぽくなるため、おいしさを優先するなら洗わない選択をしましょう。
ただ生で食べることの安全性を高めたい場合は、サッと水洗いしてしっかり水気を拭き取って使用する方がおすすめです。
きのこの基本的な洗い方と注意点
風味や栄養をできるだけ損なわないよう、きのこが水に触れる時間は短く、手早く作業することが鉄則です。表面をサッと流水できれいにしたら、水気をしっかり拭き取ります。また、水に濡れると劣化しやすくなってしまうため、調理の直前に洗い、すぐに使用することがポイントですよ。
注意点として、水溶性の栄養を多く含むきのこは、長時間水にさらしたり、しっかり水に浸すような洗い方はNGです。天然きのこの虫出し作業以外、いかに手早く洗うかが、おいしさや栄養を保つコツ。また強くこすったりゴシゴシ洗ったりすることも、食感を損なう原因になるため避けましょう。
きのこの種類別の洗い方や下準備
しいたけ
石づきを切り落とし、湿らせたキッチンペーパーで傘や軸の汚れをやさしく拭き取ります。内側のひだの汚れは、小さめのブラシで掻き出すように落とすと作業しやすくおすすめです。
しめじ
根元の石づきを切り落とし小房に分けます。切りづらい場合は、先に小房に分けるとカットしやすいですよ。あとは、取り損ねた石づきや、変色した部分を削ぎ落とし、汚れがあれば湿らせたキッチンペーパーで拭き取ります。
エリンギ
軸の根元にある茶色の線から下の石づき部分をカットします。市販のエリンギのほとんどは菌床栽培のため汚れは少ないですが、おがくずやほこりが気になるときは、ほかのきのこと同様、湿らせたキッチンペーパーを使って落とします。
えのきたけ
根本から約1〜2cm程度、茶色で硬い石づき部分だけをカットします。残った汚れは、同様に湿らせたキッチンペーパーで拭き取りを。内側や奥など、どうしても取りにくい場合は全部を水にさらしてしまうのではなく、汚れの部分だけを手早く洗い、しっかり水気を拭きます。
マッシュルーム
石づきや黒い培地が付いたままの場合は切り落とします。断面が茶色に変色している場合もカット。小さめのブラシで傘やくぼみの汚れを払い落とし、まだ残っているようであれば湿らせたキッチンペーパーでやさしく拭き取ります。
きのこは洗って冷凍保存しても大丈夫?
きのこは、冷凍保存可能です。むしろメリットが多いくらいなので、積極的に冷凍保存しましょう!きのこを冷凍すると、保存期間が長くなるのはもちろん旨みや栄養価までアップ。冷凍することできのこの細胞壁が壊れ、グアニル酸をはじめとする旨み成分や栄養が溶け出しやすくなりますよ。(※2)
冷凍保存のコツ
あらかじめ使いやすい大きさにカットしておくと便利です。保存袋に入れ、できるだけ空気を抜いて平たくしてから冷凍します。しいたけやエリンギなど、凹凸の大きいきのこは、ぴっちりとラップで包んだ上で保存袋に入れると、劣化や匂い移りを抑えられますよ。
冷凍した場合の保存期間
きのこの冷凍保存は、約1ヶ月程度が目安です。冷凍しているとはいえ徐々に劣化していくため、霜が付く前に食べ切りましょう。
冷凍きのこを調理する際のコツ
冷凍きのこを使う際は、凍ったまま加熱調理します。解凍すると水分と共に旨みも栄養も出てしまい、食感も悪くなるため凍ったまま使用するのがおすすめです。
【結論】きのこによって洗い方を見極める!
いかがでしたか?きのこは洗うべきか、洗わなくてよいのか、正しい下処理方法をご紹介してきました。きのこを洗うかどうかは、以下の3つのポイントを押さえておけばバッチリです。
・市販のきのこは基本洗わなくてOK!気になる汚れは拭き取る
・天然きのこや、粘性のあるきのこは洗う
・洗う場合、水に触れる時間は最小限に
これからおいしさも増す秋の味覚、きのこ。洗う・洗わない問題を解決して、より一層おいしく楽しみましょう。
【参考文献】
(2024/09/29参照)
ライター:kachi(食生活アドバイザー / 調理師)