自主練しない、やる気が見えない、 子どものサッカーにイライラする人必見! 怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」とは
「子どもが自主練をしない」「サッカースクールに行っているのに上手くならない」など、子ども自身のサッカーへの向き合い方が悩みのはずが、いつの間にか「自分が辛い」と保護者の方がイライラして、マイナスな感情を引きずってしまうことがあるようです。
楽しんで子どものサッカーに関わることができるよう、「怒り」の感情との付き合い方、イライラのコントロール方法について、どうしたらいいのか。
サッカー経験者でもあり、現在サッカーチームの指導にも関わっている、日本アンガーマネジメント協会松島徹理事にうかがいました。
(取材・文 木村芽久美)
■怒りの正体とは? 自分が大切にしているものを認識できるアンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、怒りで後悔しないようにすることを目指すトレーニングです。普段、怒りの感情を相手にぶつけてしまい、「怒りすぎて言い過ぎてしまった」と落ち込んでしまったり、「あの時ちゃんと言ってばおけばよかった」と、怒らなくて後悔することがあります。
その怒る・怒らないの線引きができるようにするのが目的です。
「自分が怒りを感じているということは、自分が何に対して価値観の重きを置いているか、自分が大切にしているものに気づくチャンスでもあると思っております」と松島さんは言います。
怒りの正体というものは、自分自身の中にある「価値観」や「こうあるべき」の「べき」を見つめ直す、あるいは許容範囲を広げられるかがポイントになるのだそうです。
■自分で手軽にできるアンガーマネジメントの方法
有名なアンガーマネジメントの手法として、「6秒ルール」というものがあります。
怒りが芽生えてから理性が介入するまでの時間が、大体6秒ほどかかるといわれていて、この理性が介入するまでの間、怒りのままに行動してしまわないようにするのです。
一人で簡単に出来る方法として、以下のような方法を紹介してくれました。
怒っているということから気分をそらせるようになるためには、この6秒間をやり過ごす経験が大切なのだと松島さんはいっています。
特に数値化していくと、過去との比較ができ点数がだんだん下げることができるようになって改善されていく効果があるので、数値化をおすすめしているそうです。
深呼吸をする頭の中で数字を数える頭の中で温度計を思い浮かべてみて、今の怒りに温度をつけてみる。(0から10点の間で点数をつけてみる等)
■「怒りの傾向」について自己認識することが大切
自分の怒りをコントロールするために、自分の怒りの傾向について理解することが大切だと松島さんはいいます。
日本アンガーマネジメント協会では、自分の怒りの強度やどのぐらい持続するのか・頻度・怒りの攻撃性が人に向きやすいのか自分に向きやすいのかについて自己認識を持てるよう、点数化して可視化するチャート図があります。
自分がイライラした時にどのような傾向にあるのか気づけるチャンスでもありますので、実際に自己診断してみてください。
また自分が怒っていることに気がつかない人もいますが、その方が冷静な時に傍から見て「さっきの態度は怒っているように見えるよ」と、客観的な視点で教えてあげることで怒りに対して自己認識を持つきっかけにもなります。
(自己診断シート.pdf 提供:日本アンガーマネジメント協会)
■周りの人へ悪影響を及ぼす怒りやイライラ
子どものサッカーの活動中に、怒鳴ったりイライラしている大人の存在が、周囲へ悪影響を及ぼしていることがあります。
怒りの性質として、まさに「伝染する」という性質があると松島さんは言います。
イライラしている人を見ると、周りの人も「なんかあの人怒っていて嫌だな」というようなマイナスな感情が生まれてしまって、それが元に自分も怒りっぽくなってしまうというもあるのだそうです。
子どもたちの中でも、例えば他の子が怒られているのを見聞きするだけでネガティブになってしまい、チームのパフォーマンスも下がるなど悪影響が出ることもあります。
また怒りは「連鎖する」という性質もあります。
例えば、親が子どもに怒ると、それをストレスに感じた子どもが別の友達に怒りをぶつけてしまう......。そうすると、その友達は例えば、自分よりも立場の弱い弟妹に怒りをぶつけてしまう、というような負の連鎖が起きる危険もあるのです。
ただし、怒りのエネルギー自体はポジティブに捉えれば、大きな力に変えられることもあるそうです。
■怒りをどのように用いるかによって、プラスにもマイナスにも働く
「怒りの感情そのものは決して悪いものではなく、例えばビジネスの世界などでは、イノベーションを実現するために、怒りが原動力として働くこともあります」といいます。
また怒りをコントロールし、成績を伸ばしているトップアスリートもいるのだそうです。
例えば、元プロテニスプレイヤーのロジャー・フェデラーもアンガーマネジメントに取り組んで成績を伸ばしました。プロゴルファーの松山英樹選手 も、2021年のマスターズでは「怒らない」と決めて試合に臨んだことで優勝したと語っていますいます。
笑顔の印象が強い、プロ野球選手の大谷翔平選手も変なインタビューに対応する時の感情について「イラっとしたら負けだと思っているので」と答えていて、感情のコントロールに努めていることをほのめかしています。
このように一流選手でも当然ながら怒ることはあり、怒りについて自己認識し、コントロールすることに努めているのです。
もし自身の怒りやイライラについて悩んでいるのであれば、それをプラスの力にしていけるよう、アンガーマネジメントに取り組んでみると良いでしょう。
松島 徹(まつしま とおる)
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 理事
上場企業複数社にて人事マネージャーとして勤務。
現在も企業人事として勤務しながらアンガーマネジメントを伝える活動中。マネジメント層向け研修や1on1など様々な階層別研修に登壇経験あり。これまでに教育委員会、社労士会、航空会社、スポーツチーム等複数の企業へアンガーマネジメント研修実施。
【主な役職・資格】
・一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 理事
・アンガーマネジメントコンサルタント
・アンガーマネジメント経営賞プロジェクトリーダー
・本部主催講座登壇講師
・JSPO更新研修担当講師
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