福岡・地下鉄別府駅近くにオープンした「気軽なスペイン食堂」
地下鉄七隈線沿線では近年六本松で出店ラッシュが続いていますが、最近は城南区別府エリアにも飛び火しているようです。もともと中央区の六本松から別府橋を渡ってすぐの近隣で、地下鉄の所要時間はわずか1分。UR(旧別府団地)や市営の集合住宅、民間のマンションが建ち並ぶ住宅街でもあり、今後さらに発展するであろう別府エリアに7月8日オープンした洋食レストランが「comedor HIDE」です。
「コメドール」とはスペイン語で「食堂」の意味。中央区や博多区の都心部以外で、しかも住宅街にあるスペイン料理店はかなり珍しい存在といえます。筆者が初めてスペインに行ったのは30年以上前ですが、町角のバルやコメドールは、ここと同じようにギンガムチェックのテーブルクロスが敷かれていたのを思い出しました。
オーナーシェフの手柴秀紀さんは、中央区渡辺通にある「炭焼きスペイン料理 Aire(アイレ)」で修業した後、独立開業。北はバスクから南はアンダルシアまで、それぞれに特徴のあるスペイン各地の料理を、食堂らしいリーズナブルな価格で提供しています。
同じラテン系の隣国ながら、フランスともイタリアとも違う食文化を持つスペイン。メニューも、TAPAS(前菜)、PINCHOS(串料理)、ASADO(炭・薪焼き料理)といったカテゴリーで構成されています。
TAPASは、生ハムやチョリソー、トルティージャなどが有名ですが、今回は手柴さんのオススメからオーダー。出てきたのは、「パンコントマテ」(480円)と「エビとタラのブニュエロ」(650円)でした。
「パンコントマテ」は、バルセロナを州都とするカタルーニャ地方の定番メニューで、パンにフレッシュトマトソースを塗ったシンプルな料理。本場ではバゲットが一般的ですが、自家製パンを使ってアレンジしています。「ブニュエロ」はポテトにエビとタラのすり身を混ぜたコロッケ風の揚げ物で、どちらも冷えた白ワインによく合います。
福岡ではなかなかお目にかかれない、スペイン直送の食材を使った料理も食べることができます。その1つが、別名「赤い悪魔」とも呼ばれるアンダルシア地方のエビ「カラビネーロ」(1850円)です。炭火で芳ばしく焼かれた大ぶりな深紅のボディには濃厚なミソとプリップリの身が詰まっており、1度食べればヤミツキになりそうな蠱惑的なおいしさでした。
こちらは、スペイン北部のガリシア州で栗を餌に混ぜて育った豚バラをニンニクなどのスパイスに漬け込んだ「ガリシア豚アドボ・バラの串焼」(1本500円、2本900円)。甘味のある脂身と、モッチリとした食感の肉質がたまりません! さらには、福岡ではおそらくここだけという「ガリシア牛の牛タン」(2100円)という超レアなメニューもあります。
シメは、地中海に面したバレンシア地方の名物「ミックスパエリア」(写真は1人前1600円)で。レギュラーのサイズは2人前(3100円)ですが、おひとり様には1人前でも作ってくれるのは嬉しい配慮です。この日の具材はタイの頭とムール貝、エビなどで、魚介のダシが染みたお米の味は格別でした。
1990年代から何度もスペインを訪れた経験のある筆者の持論は、海の幸・山の幸に恵まれた福岡市は同じ港町であるバルセロナと立地的に良く似ており、日本でスペイン料理を食べるには最適なロケーション。「コメドール」(食堂)という気のおけない店で、本場の味をぜひ経験してみてください。
comedor HIDE(コメドール・ヒデ)
福岡市城南区別府1-21-3オリエントハイツ別府1F
092-707-4489