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ニプロ、2030年度売上高1兆円へ飛躍目指す 透析、バスキュラー、再生医療、医薬品が重点領域

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総合医療メーカーのニプロが2025年11月28日、記者懇談会を行い、代表取締役社長の山崎剛司氏が同社の事業や、事業戦略を説明した。筋肉質な経営と持続的な成長を目指して、企業価値の最大化を図る。山崎氏は「和ごころをもった真のグローバル総合医療メーカー」を目指すと意気込みを語った。

「和ごころをもった真のグローバル総合医療メーカー」へ意気込み

ニプロは海外市場展開のさらなる拡大によって、グループ全体の持続的な成長を目指す。目標として、2030年度には売上高1兆円を掲げ、海外比率を現在の51%から60%に引き上げたい考えだ。主力事業の透析にくわえ、バスキュラー(血管内治療製品)/再生医療、医薬品の各分野を重点領域として取り組む。

透析の分野では、背景として、世界経済の発展による人口増加によって、生活習慣病のリスクも高まり、それにともない医療を必要とする人も増えていく。そのうえ、先進国では高度治療の需要が増える一方で、新興国では透析人口が増えるという社会課題を抱えている。これに対して、ニプロは、各国・地域の医療ニーズに応じた商品・サービスの開発・提供を目指す。

腎臓の機能が低下する「腎不全」の治療方法のひとつに「人工透析」があるが、その治療には「ダイアライザ」と呼ばれる装置(透析器)が必要となる。この「ダイアライザ」という装置を通して、腎臓の代わりに血液を浄化する仕組みとなっている。ニプロが展開する「ダイアライザ」は現在、国内シェア44%で1位、世界シェア25%で2位に位置し、「ELISIO-H」、「CTA/ATA」、「ELISIO-HX」など高品質の製品をそろえている。

「ダイアライザ」という装置の中には、半透膜でできたストロー状の細い管(中空糸)の束が入っている。半透膜には小さな穴があいていて、ここを通り抜けて、老廃物などの毒素を取り除くなどして、きれいになった血液を体内に戻す循環をさせている。ニプロの「ダイアライザ」は、その穴のサイズの均一性に強みがあり、栄養は残し毒素は除去する、より安全な透析治療につなげているという。

次の重点領域・バスキュラー(血管内治療製品)/再生医療の分野では、バスキュラー製品を通じた患者負担軽減のためのステントレス治療「DCB」への取り組みがある。また、脳血管内(Neuro)の状況を内部から可視化する技術の開発を進めている。再生医療に関しては、脊椎損傷の治療に用いられる再生医療等商品「ステミラック注」の本承認申請を25年11月に行ったばかり。これは、間葉系幹細胞の培養によって製造されるものだという。

もうひとつの重点領域・医薬品の分野では、ニプロは医療抗菌薬・注射剤で高いシェアを持つが、さらなる安定供給を目指し、「抗菌薬の安定供給体制強化」と「ワクチン開発・生産体制強化」を掲げ、近江工場を新設。同工場内の「抗菌薬注射剤棟」が2025年度に、「一般注射剤棟」が2028年度にそれぞれ稼働を開始する予定だ。

医療DXでは、ニプロの総合医療ネットワークと位置付ける、院内用データ通信システム「HN LINE」、遠隔診療支援システム「ニプロハートライン」、透析情報管理システムの「DiaCom」と「NephroFlow」といったシステムを通じ、医療人材不足や、働き方改革、医療の質向上に貢献していく計画だ。

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