自分は“何屋”なのか―?これといった専門的スキルがなく、不安。【motoさんのお悩み相談室】
ビジネスパーソンが抱える仕事やキャリアの悩みに、転職・仕事のプロがお答えする「お悩み相談室」。
今回のテーマは「自分は“何屋”なのか―?これといった専門的スキルがなく、不安。」です。いろいろな仕事を担当してきた故に、転職活動において何を自分のアピールポイントにすればよいのか悩んだ経験がある人は少なくないでしょう。
今回質問にお答えいただいたのは、新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験されたビジネスパーソン・motoさん。
自分のスキルに自信が持てない人はどのように転職活動を進めるべきか、考え方やコツをうかがいました。
Question
自分は“何屋”なのか―?これといった専門的スキルがなく、不安。 ベンチャーに入社して6年、そろそろ転職するのもアリかなと転職サイトに登録したものの、これといった専門的スキルがなく、求人を見ても自分には務まらなさそうなものばかり・・・。エンタメ系モバイルアプリのコンテンツ企画や対外折衝、集客・マーケティングなどを担当し、サービス企画を経て今年から PdM (プロダクトマネージャー)を担当しています。事業はいまいち伸び悩んでおり、面接でアピールできるような目立った成果はありません。また浅く広く色んな知識は習得できたものの特化したものが何もない気がして、この先自分が“何屋”なのか自信を持って主張できない漠然とした不安を感じています。 (ITベンチャー/ PdM /7年/31 歳男性)
PdMを経験している時点で、市場価値は高い
自分には特化したスキルが何もないと思っているかもしれませんが、会社からPdMを任されている時点である程度実力やスキルがある方だと推察します。
事業が伸び悩んでいる点については、PdMであるあなた一人の責任ではありません。事業の伸びやすさは領域や規模にも左右されますし、会社の中でもPdMのほかに営業やマーケティングなど、たくさんの人が関わった結果が今の事業の状況をもたらしているはずです。もちろん、その中でできることをやったり、成果にこだわる姿勢は必要ですが、事業の伸び率だけがすべてではありません。
とはいえ、確かにPdMのような企画系の職種に関しては、ほかの職種と比べると社外に対して自身のスキルを証明するのが難しい側面はあるかもしれません。しかし転職活動において採用側の 企業が知りたいのは、あなたが何を考えてどのような打ち手をとり、どういった結果を残したのか、 ということ。要は、苦難をどうやって乗り越えたのかを聞きたいのです。
今の状況であれば、事業が伸び悩んでいるのはなぜか、どうすれば伸びるのかといったことを自分なりに考えて面接で伝えられれば、転職活動においては問題ないと感じます。
また、自分が何屋なのかわからないということですが、無理に自分が何屋なのかを見つける必要はありません。何か1つに特化したスキルがないと転職できない、なんてことはあり得ないからです。
幅広く経験を積んできたからこそ、どの経験やスキルを自分の強みとして押し出せばよいのか悩むのだと思います。だとすると、むしろその 「幅広さ」をアピールポイントにしてみる のはどうでしょうか。集客やマーケティング、サービス企画やPdMと、一人で何役もこなせる人なんて、そうそういません。「この人に任せておけば一通りのことを自分で進めてくれる」となると、採用する企業にとってもありがたい存在だと思います。
転職活動で重要なのは、自己評価ではなく他者評価
そもそも、転職活動において自己評価は必要ありません。大事なのは、第三者から見てあなたにどのような価値があるのかという、客観的な評価です。その評価に基づいて、採用されるかどうかが決まります。「面接でアピールできるような目立った成果がない」というのは、果たして客観的な事実でしょうか。
もしかすると、ほかの人から見ればあなたの実績は転職市場において高く評価されるかもしれません。自分ではたいしたことがないと思っていても、周りから見るとすごい経験をしているというケースはよくあります。 自分だけで自分の価値を判断せず、まずは第三者に評価してもらう機会をつくりましょう 。
具体的には、転職エージェントに相談したり、興味を持った会社のカジュアル面談を受けに行ったりするのがおすすめです。
求人を眺めていても始まらない。まずは一歩踏み出すことから
おそらく現在は、インターネット上に出ている求人をただ眺めて不安になっているだけではないでしょうか。それではまだ、転職活動に向けて一歩を踏み出していない状態です。
ちなみに求人票に書かれている内容は、実際より少し難しい要件で書かれているケースも少なくありません。求人票を見ると自分には務まらないような気がする仕事であっても、実際にカジュアル面談や面接で話を聞くと、それほど高いレベルを求めているわけではなかったりもします。 求人票を見て一見難しそうに感じる仕事でも、興味があればまずは応募して話を聞いてみる のがよいと思います。
実際に話を聞く際には、求人票に書かれている内容だけではなく、 具体的な仕事内容を自分で調べたり、想像できるだけの情報を集めるようにしてください 。募集している部署は会社の組織の中でどんな事業を担当していて、毎日どのような仕事をしているのか。それを考えていくと、自分の今のスキルや経験でその仕事が務まるかどうかが見えてくるはずです。
もし自分一人でわからない部分があれば、エージェントに聞いたりカジュアル面談で確認したりするとよいでしょう。何にせよ、求人を見て悩んでいるだけではなく、まずは調べたり話を聞いたりと、行動に移してみるのがよいと思います。
将来自分はどうなりたいか。その答えによって、転職すべきかどうかを見極めよう
最後にもう1つ考えてほしいのが、「転職してどうなりたいのか」ということです。今回転職しようと思った理由は何でしょうか。もしかすると、年齢的にそろそろ転職したほうが良さそうだな、と考えたのかもしれません。
もちろん転職のタイミングとしては良い時期だと思いますが、転職の目的はよく考えるべきです。例えば年収を上げたいとか、職場の人間関係から離れたいなど。もし現職に大きな不満がなくなんとなく転職を考えたのであれば、急ぐ必要はないでしょう。現職に残って事業を伸ばしきり、自信をつけた上で改めて転職を考えるのも1つの選択肢だと思います。
まずは「将来的にどのような自分になりたいか」というゴールを設定する 。そこから逆算して、今のタイミングで転職したほうがいいのか、現職に残って経験を積んだほうがいいのかを考える。仮に転職を選ぶとすれば、エージェントに話を聞いたりカジュアル面談に行ったり、第三者から見た自分の評価を確認してみるのがよいでしょう。
プロフィール
moto(戸塚俊介)
1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験。自身の転職経験をもとにした転職ノウハウやキャリア観などの発信がSNSを中心に話題に。現在はmoto株式会社、HIRED株式会社の2社を経営。
代表著書 『転職と副業のかけ算(扶桑社)』『WORK価値ある人材こそ生き残る(日経BP)』 企業サイト moto株式会社/HIRED株式会社 X(旧Twitter) moto (戸塚俊介) ブログ 転職アンテナ