卒業アルバムが作れないかも…“学校カメラマン”が足りない!「少人数の学校はお断り」には切実な事情が
人手不足の波は、ここにも…です。子どもたちの成長を記録するカメラマンが足りません。
新学期がスタートした4月、北海道岩見沢市の小学校では、新しいクラスの集合写真を撮影していました。
学校から撮影を請け負う「学校カメラマン」にとって、春は入学式に遠足、運動会と最も忙しい季節ですが…。
カメラの理光の河野芳廣社長は「カメラマンが派遣できない。『ごめんなさい 同行できません』と断る」といいます。
思い出を写真に残してくれる学校カメラマンが足りない!
そこにはどんな事情があるのでしょうか。
カメラの理光では長年、岩見沢市内の学校や幼稚園の写真撮影を引き受けていますが、この小学校は、今年度から初めて担当します。
これまでのカメラマンが、高齢で引退したため、河野さんが引き継ぐことになったのです。
カメラマンを探していた校長は、「修学旅行などについてきてもらうのに、地元の業者さんで何とかしたかったのでよかった」とひと安心です。
かつては岩見沢市に10人以上いた「学校カメラマン」は、今では、河野さんを含め数人ほどになったといいます。
新型コロナで学校行事の中止が相次ぎ、依頼が減ったことに加え、高齢化と後継者不足で多くの写真館が廃業したためです。
河野さんのもとには、市外の学校からも撮影依頼が来るようになりました。
スケジュール帳はびっしり。
学校だけで12校、幼稚園も2園引き受けています。
5月に入ると、中学校の修学旅行がありますが…
「人数の少ない学校は『ちょっとごめんなさい』で…」
そこにはある切実な理由があります。
卒業アルバムを作れない学校が出てくるかも…
「学校カメラマン」の多くは、卒業アルバムの編集も手がけています。
アルバムに必要な写真をたくさん集めるために、学校行事すべてに同行しなくてはなりません。
しかしその費用は、実は写真館持ち!
集合写真やスナップ写真を、保護者らに販売することでその旅費を捻出するため、ある程度の売り上げがなければ、採算がとれません。
だから、人数が少ない学校にはカメラマンが派遣できないのです。
このまま学校カメラマンが減り続けば、「卒業アルバム」が作れない学校が出てくるのではないかと河野さんは心配しています。
岩見沢緑陵高校です。20年前から、河野さんに学校カメラマンを依頼しています。
この日は、1年生の宿泊研修。河野さんも同行します。
生徒は、河野さんの姿を見るなり 駆け寄ってきます。
写真を見てみると、みんな、いい表情!
実は、生徒の多くは、地元の幼稚園や小・中学校で河野さんに写真を撮ってもらったことがある、「顔なじみ」なんです。
学校は一時期、料金の安さから、別の地域のカメラマンに切り替えたことがあります。
しかし、学校には「河野さんの方がいい」という声が届いたといいます。
黒島敏校長は「子どものころから慣れ親しんでいる子が多いので、河野さんの写真の生徒たちは笑顔が自然ですよね」と話します。
「価格だけではなく、価値観を大事にしたい」
地元のカメラマンにしか撮れない表情がある、そんな気付きから、 再び河野さんに撮影を依頼しました。
スマホが身近になり、だれでも写真を撮れる今の時代。
それでも河野さんは「5年後、10年後、20年後に思い起こせるような写真を残せるのは、卒業アルバムしかない、われわれのように仕事としている人間が残していかなくてはいけない」と胸をはります。
学校カメラマン不足に対応しようと、北海道内では新たな取り組みも始まっています。
地域で連携してカバー 一方「騒動」も…
オホーツク地方では、各地の学校カメラマン16人が連携してグループを作っています。
学校行事が集中して地域のカメラマンだけで対応できないときに、別の地域のカメラマンを応援に出すなどして、効率的に広い範囲をカバーしています。
一方で、学校カメラマン不足をめぐっては、ある「騒動」がありました。
2月に、道外の写真業者が、「入学式を撮影するカメラマンを100名募集」とSNSに投稿。
「学生や写真好きのアマチュアもOK」との募集条件に対し…、
・「SNSで集めたよく分からない人に子どもを撮らせるなんて怖い」
・「何かあったら誰が責任を取るのか」
批判のコメントが殺到!業者が謝罪する事態に至りました。
カメラマン不足をなんとか乗り越えて、子どもたちにはいい写真を残してあげたいですね。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月9日)の情報に基づきます。