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城 南海の“ウタアシビ”、能舞台で本物の歌の心と音の喜びを届けた東京公演レポート

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城 南海

城 南海 ウタアシビ2025 春
2025.6.1 梅若能楽学院会館

“歌遊び”と書いて、奄美の言葉で“ウタアシビ”。歌を楽しみ歌で遊ぶ、『城 南海 ウタアシビ2025 春』東京公演の舞台は、梅若能楽学院会館だ。閑静な住宅街の一角にたたずむ、歴史に彩られた能舞台は、伝統のシマ唄とポップスを股にかけて活躍する城 南海にぴったりの場所。チケットはソールドアウト、幅広い年齢層のファンで客席は埋まった。

1曲目は奄美民謡の「朝花節」。天女の羽衣のような淡いグリーンのドレスを身にまとい、奄美三味線を力強くはじきながらマイクなしで朗々と歌う、その歌声の麗しさ。「うがみんしょーらん」(こんにちは)と笑顔で挨拶、2曲目からはキーボードとアコースティックギターのサポートを得て、伸びやかな歌声を会場いっぱいに響かせる。橋掛かりと屋根のある能舞台は、客席がとても近くて開放感もたっぷり。16年前のデビュー曲「アイツムギ」は変わらぬ初々しさと共にゆったりと、15周年記念アルバムからの「爛漫」は大人びた包容力と共にしっとりと。ひらりひらりと舞を舞うようなしなやかな所作が、落ち着いた照明の能舞台によく似合う。

「この間まで奄美に帰っていて、パワーをチャージしてきました。今日は島の風をみなさんに感じてもらいたいと思います」

喉の不調で先月の名古屋公演を延期したものの、もうすっかり回復して元気いっぱい。頼れるバンドメンバー、ピアノの扇谷研人とギター&チェロの伊藤ハルトシを紹介し、再び奄美三味線を手に取ると、ここからは思い出の奄美民謡を2曲続けて。20年前の学生時代に初めて人前で歌ったシマ唄だという「糸くり節」は、扇谷研人の見事なアレンジで三味線、ピアノ、ギターが美しいハーモニーを響かせ、「永良部百合の花」は観客全員で手拍子しながら奄美言葉の歌詞を合唱、まさにウタアシビの雰囲気で盛り上がる。どこを見わたしても笑顔だが、歌いながら「もっともっと!」と笑顔ではやし立てる、今日の主役が一番楽しそうだ。

遠く離れた国の音楽なのに、懐かしく感じるのはなぜだろう。今年の2月、憧れのアイルランドへ旅した時の思い出を語ったあとに歌った「紅」は、アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」に自ら歌詞をつけた曲。遥かな時と場所を超え、スケールの大きな悲しみと喜びをしみじみと伝える名曲名唱だ。伊藤の弾くチェロの物悲しい旋律も素晴らしい。「リフレクション」も、ディズニー実写映画『ムーラン』の日本版テーマ曲に城 南海が歌詞を乗せた、民謡の歌唱とは一味違うポップスシンガーとしてのうまさが際立つ歌。扇谷の情感豊かなピアノとの相性もばっちりだ。

そして城 南海といえば誰もが知る、歌うま系歌謡番組の絶対女王。ここからの3曲は『千鳥の鬼レンチャン』『THEカラオケ☆バトル』などで注目を集めたカバー曲を披露するコーナーで、「真夜中のドア」(松原みき)、「青春の影」(チューリップ)、「さらば恋人」(堺正章)と、時代もジャンルも超えた名曲たちをまるで持ち歌のように自然体で歌う。とにかくうまい。テクニックを競うのではなく、心を伝える本当のうまさ。客席から自然に手拍子が沸き、あたたかい雰囲気が会場を包み込む。

そろそろ終盤だが、ここらで歌と踊りでもうひと盛り上がり。明るいアップテンポでの「アカツキ」は、♪ラララ~の大合唱と奄美のシマ唄のような手振りで、歌に合わせてみんなの心が一つになるシーンが壮観だ。それはポップスのようで奄美民謡のようでラテンミュージックのような、まさに城 南海らしいウタアシビ。そして最後は、彼女が歌を歌う意味を歌詞に託したとても大切なバラード「産声」を、ピアノとチェロの伴奏と共に優しく強く美しく。一人ひとりに届けるように繊細に、囁くような歌声が胸に沁み入る。

アンコールでは嬉しいお知らせが二つ。8月に全国6ヵ所を回る『城 南海 ウタアシビ2025 夏』の開催と、待望の新曲リリース決定。初めて聴く新曲「息吹」(リリース日未定)は、ピアノバンド・Ryu MatsuyamaのRyuが作曲を手掛けた、神々しいほどに壮麗な曲調と美しいハイトーンの響きが印象的なミドルバラード。これまでにない新境地、リリースが楽しみだ。

そして最後は明るく楽しく朗らかに、奄美の徳之島で歌われる闘牛の歌「ワイド節」で賑やかにお別れ。浮き浮きしたリズムと三味線、手拍子や指笛がはやし立てる中で、伝統の能舞台がライブハウスのような熱気と笑顔で包み込まれた、あっという間の90分。「今日は本当にありがっさまりょうた」(ありがとうございました)と、笑顔で舞台を去る彼女に贈られる盛大な拍手。春のツアーはあと一本、6月21日の長野公演を残しているが。もう夏のツアーが楽しみで仕方がない。本物の歌の心と音の喜びが楽しめる、これが城 南海のウタアシビ。是非生で体感してほしい。

取材・文=宮本英夫 撮影=丸山剛由

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