故郷の記憶 つづる一冊 多摩区の田村弘志さん
多摩川の流域という地の利を生かし、稲作や紙すき、砂利採掘、養蚕といった産業によって栄えてきた多摩区中野島地区。その中野島に生まれ育ち、昭和、平成、令和と地域の移り変わりを見続けてきた田村弘志さん(88)は昨夏、『中野島のこんなこと知っていますか』と題して一冊の書籍にまとめた。
現在、会長を務める中野島地区社会福祉協議会が発行する広報紙『なかのしま』の2006年7月1日創刊号から寄稿し続けてきた18年分のコラムを見開きの左ページに配し、右ページに写真などを添えた。中野島の歴史や変遷、文化、人々の暮らしぶりなどを紹介するとともに、生まれ育った故郷への田村さんの思いがつづられている。近隣の小中学校や市内の図書館、多摩区社会福祉協議会などに寄贈した。
昭和11(1936)年に中野島の梨農家に生まれた田村さんは、会社勤務、造作家具店の開店などを経て地元でディスカウント店「ジェーソン」を開業した。「昭和は激動の時代。努力すればするだけの報いがあった」と田村さんは振り返る。現在は息子に代替わりしているが、自身は中野島北口通り商店会で会長を務めるなど、地域密着を貫いている。
「村からまちへ、農村からベッドタウンへと変化していった」と中野島の変遷を語る田村さん。「縁あって今、共に暮らすこの中野島に少しでも愛着を持つ一助になることを願っている」と著書に込めた思いを述べた。