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【特集】マーダーミステリーで地方創生を 日本マダミスラボ・島田眞伊さん NIIGATAベンチャーアワード受賞者インタビュー

にいがた経済新聞

マーダーミステリーの様子(写真提供:島田眞伊さん)

日本マダミスラボの島田眞伊さん

「マーダーミステリー」というパーティゲームが今、注目を浴びている。プレイヤーが推理小説の登場人物になりきり、探偵役は事件の解決を、犯人役は目的の達成を目指すゲームで、近年人気になった「人狼ゲーム」にも近いが、より物語的な要素が強い。国内では首都圏を中心に広がりを見せているが、中国ではカラオケに並ぶ人気でその市場規模は3,000億円とも言われるから驚きだ。

そんなマーダーミステリーを閑散期の観光地や飲食店で開催することで地域活性化に繋げようとしているのが、今年4月に発足した日本マダミスラボ。同会は今年6月の「NIIGATAベンチャーアワード2025」でビジネスアイデア部門最優秀賞に輝いた。チームを牽引するのは、新潟県南魚沼市で元看護士として働いていた島田眞伊さん。「楽しめる場所がない」「地元の人とのコミュニティがない」、同地を離れていく若者たちの言葉が、会を立ち上げるきっかけだった──。

今回で11回目となる「NIIGATAベンチャーアワード」が6月に開催された。新潟県内で活動する個人のビジネスアイデアやベンチャー企業の事業を評価するコンテストで、今年の応募数は過去最多。6月2日に行われたプレゼンテーション審査会では、書類審査を勝ち進んだ応募者たちが自身のアイデアを熱弁し、しのぎを削った。
今回の特集では、各部門で最優秀賞に輝いた株式会社ForestFolks、日本マダミスラボ、きら星株式会社の代表者にそれぞれ話を聞いた。

人とのコミュニケーションこそが「マダミス」の面白さ

マーダーミステリーの様子(写真提供:島田眞伊さん)

島田さんは元看護士で、後輩の指導を担当することが多かった。市外から来る若い看護士もいたが、3〜4年経つと辞めて地元に帰ってしまったり、関東に出て行ってしまうことがほとんど。「彼女たちに話を聞くと、『地域の人との交流の場所がない』『楽しめる場所がない』というのが主な理由でした」と島田さんは振り返る。

そこで目をつけたのがマーダーミステリーだった。島田さんは元々、自宅にアナログゲーム専用の部屋を作り、人を招いてゲームに興じるほどの愛好家。なかでもマーダーミステリーは「コミュニティをつくるのには優秀なゲーム」(島田さん)だという。

「ほかのゲームと比べると、プレイヤー間でのコミュニケーション量が圧倒的に多いことが一番の違い。ほかのゲームでは勝ち負けを考えたりして、黙々とやることも多い。しかしマーダーミステリーは、人と話してコミュニケーションを取らないと進まないゲーム。特に、ゲームが終わったあとの『感想戦』は、(プレイヤーがそれぞれ)『実はこういう考えだったんだよね』とか『この時、こういう気持ちでやってたんだよね』とか打ち明け、格段に盛り上がる」。

地方だからこそ、「マダミス」でできること

島田さんはこれまでにもオンライン上の友人を20人集め「マーダーミステリー」や「人狼ゲーム」を開催。後にそのグループで旅行へ行ったり、グループ内でカップルができるなど深い交流が生まれている様子を見てきて「本当にコミュニティを作るのに向いていると思う」(島田さん)と語る

こうしたマーダーミステリーの特徴を踏まえ考えたのが、閑散期の観光地や飲食店で開催する「リアルマーダーミステリー」だ。その土地や店舗などを舞台にしたオリジナルのシナリオを組み、体験型のイベントを開催して地域活性化を目指す。今年12月には「Sea Point NIIGATA」(新潟市中央区)で開催予定。ほかにも現在2、3店舗から依頼を受けており、試験的な開催を予定しているという。

まず最初のターゲットはマーダーミステリーの経験者。また、シナリオの作家やデザイナー、YouTuberなどからの発信も検討している。

「地方にはまだマーダーミステリーが浸透しておらず、競合が少ない。しかし、雰囲気を楽しむゲームなので、地方こそいいロケーションがたくさんあると思っている。飲食店以外にも例えば酒蔵や着物屋など、そこでしか飲めないお酒や着れない着物をストーリー上で出して、お酒を組み交わしながら物語を進めていくなど、観光や文化にも親和性が高いと感じている」と島田さん。

マーダーミステリーは特に中国などではすでに高い人気を得ており、インバウンド向けの需要にも期待がかかる。さらに企業のアイスブレイクやチームビルディングなど、展開についてのアイデアは尽きないという。「まだこの事業を運営し始めたばかりなので、まずは一つ一つの仕事やイベントをしっかりこなして集客していくことを目標にしたいと考えている」(同)と力を込める。

アイデアを空想で終わらせないで

6月2日に開催された「NIIGATAベンチャーアワード」プレゼンテーション審査会の様子

日本マダミス協会が「NIIGATAベンチャーアワード」に応募したのは4月の立ち上げ直後。島田さんは「駆け込みで応募した」と振り返って笑う。しかし「自分のアイデアが(社会に)どう評価されるものなのかまったく分からなかったので、こうして一つ評価していただいたことは、これからスタートする上で大きな自信に繋がった」。

「自分のアイデアのスケールが小さく思えても、まずは人前に出してみて、色々な意見をもらってほしい。そうすることで様々なことが見えてきたり、人と繋がってくるので、アイデアを空想で終わらせないで」。これから起業を考える人や、「ベンチャーアワード」への出場を考えている人にはそう伝えたいという。

「物語」や「ファン」の力は強い。現在、様々な土地で「聖地巡礼」と称した地域活性化の取り組みが行われている。没入感ある「物語」を通じた体験は、土地や住む人の価値を再発見させ、次世代の交流を生む可能性を秘める。

遊びの中にこそ、地域を変えるヒントがある。島田さんの挑戦は、地域資源と創意工夫が生み出す新たなビジネスの形を示している。

次回は、地方への移住や起業支援、交流拠点の創出など、地方で様々な事業に取り組むきら星株式会社を紹介する(8月1日掲載予定)

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