どうなる?”沖縄”マリンタウン地区。入札不調のMICE計画。(与那原町・西原町)
与那原町と西原町にまたがるマリンタウン地区に建設が計画されている大型MICE施設の整備計画について、事業者の参加がなく開業が遅れる見通しである。 経済の起爆剤や街づくりにも関わる計画だけに、波紋が広がっている。
入札事業者ゼロ 自治体は落胆
沖縄県は沖縄観光の新機軸として「ビジネスツーリズム」を掲げ、大規模な国際会議やイベントが開催できる大型MICE施設の整備を計画している。
民間の資金やノウハウを活用するPFI方式で行うことにしているが、2024年9月18日までに沖縄県の入札に応じる事業者がおらず、不調に終わった。地域の活性化に繋げようと期待を寄せていた自治体からは落胆の声が聞かれる。
与那原町 照屋勉 町長 「率直に言って残念です。『今度こそ』という思いがとてもあったので。2029年3月に供用開始という決定を県がしてくれたので、非常に期待していたところなんですけど」
照屋町長は西原町とも連携した街づくりを目指すとしているが、沖縄県が計画を進められるのか懸念は拭えない。 県の策定した計画で懸念として浮上しているのが、必須条件となっているホテルなど宿泊施設の整備である。
国際会議やイベントの参加者が利用することを念頭に置いたものだが、今回入札を見送った事業者は物価や資材の高騰、人手不足のなかで採算性に疑問があると話している。
基礎需要があるのか 採算性に疑問
沖縄キリスト教学院大学副学長 上地恵龍 特任教授 「大きな問題は、やはり採算性ですよね。事業の採算性をまず皆が考える責任があるので、これが一番大事ですよね。採算性が取れないのではないか。基礎需要があるかどうか、これが一番の問題かなと思います」
沖縄キリスト教学院大学の上地特任教授は、沖縄本島の西海岸に比べ東海岸エリアはホテルなど観光施設が少ないことが採算性への懸念に繋がっていると分析しており、県が目指す事業の方向性を明確に示すべきだと話している。 沖縄キリスト教学院大学副学長 上地恵龍 特任教授 「沖縄県内での競合も発生している。大きなホテルもどんどんできているし、MICEを謳っているホテルも増えている。県でしかできないこと、県のMICE会場の強みを明確にしないと、県内での競争は沖縄県にとって望ましい結果を生まないと思います」 さらに重要なのは幹線道路の整備といった周辺環境との整合性であり、総合的な街づくりを計画に落とし込む必要があると述べている。 沖縄キリスト教学院大学副学長 上地恵龍 特任教授 「パリオリンピックではサステイナビリティ(持続可能性)がキーワードとして掲げられました。国際会議や展示会でも、環境問題がますます重要視されてきます」 また、ポストコロナ時代の社会情勢の変化を踏まえ、需要の見通しを分かりやすく示すべきだと述べている。 沖縄キリスト教学院大学副学長 上地恵龍 特任教授 「その辺りをもっと明確に示して、予算を立てやすくし、誘致しやすい仕組みを作ることが大切です。沖縄県がMICEについてどう考えるかを示すことが、受ける側にとって非常に重要かなと思います」
玉城知事は計画を推進する考え
今回の入札不調に対し、沖縄県は事業者からの聞き取りや事業条件の検証を行う方針である。また、有識者で構成する検討委員会を立ち上げ、改定した基本計画を諮る予定だ。 沖縄キリスト教学院大学副学長 上地恵龍 特任教授 「一度立ち止まり、長期的な視点で見れば、立ち止まったことがプラスになることもあると思います。技術の進歩や社会の要請が変化していくなかで対応する必要があるので、いい機会として、ターニングポイントと考えるべきだと思います」 玉城知事は、「今回は不調に終わったが、検討委員会で今後どのような方向で再公告を行うか検討し、引き続き精力的に取り組んでいきたい」と計画を推進する考えを改めて示している。
岐路に立つMICE計画。沖縄観光の新機軸として期待が高まる中、それを実現できるかどうか、知事の手腕が問われている。