赤いお腹の両生類<アカハライモリ> お腹の模様には出生地のヒミツが隠されている?
赤色~オレンジ色のお腹が特徴的で、とても愛嬌のある姿の「アカハライモリ」。両生類に分類されている水辺に生息する生き物で、カエルやサンショウウオの仲間です。
アカハライモリのお腹の模様は地域により異なります。アカハライモリの模様の違いを色々な水族館や水辺で比べるのも面白いですよ。
アカハライモリはお腹が赤い両生類
アカハライモリ(学名:Cynops pyrrhogaster)は日本固有種のイモリ。本州、四国、九州に普遍的に見られる両生類で、二ホンイモリとも呼ばれます。
背面は黒〜黒緑色や黄土色などバリエーションに富み、腹面の模様は地域でかなり違いがあるのが特徴です。
幼生にはバランサーと言われる水の中でバランスをとるための器官があります。
これは顔の両脇から一本のびるヒゲのようなもので、前足が生えて機能するようになる孵化後8日頃には消失。これは止水性サンショウウオにも見られる現象です。
止水性サンショウウオとは、水の流れがあまりない水辺に生息するサンショウウオのことです。
生息環境の減少などで生息数が激減しており、環境省のレッドリスト2020では準絶滅危惧 (NT)に指定されています。日本各地で絶滅危惧種に指定されている貴重な生きものです。
アカハライモリのお腹の赤色は警戒色!
アカハライモリはフグと同じ「テトロドトキシン」という猛毒を皮膚表面から分泌し、捕食者から身を守っています。
実はアカハライモリがお腹を赤色やオレンジ色の警戒色にしているのは、毒を持つことを捕食者に知らせるための方法。捕食者に「こいつはヤバい!」と認識させるには警戒色を使うのが有効なのです。
お腹の模様は地域によって異なる
実は、アカハライモリのお腹の模様は地域によって大きく異なります。これは、泳ぎも苦手で、短い足で遠くまで移動できないことから、地域で固有の変異が起きたためだと考えられているそう。
上記写真は、岡山自然保護センターで捕獲した2匹(左と中央)と和歌山で捕獲された1匹(右)です。個体差もありますが、岡山の里山では模様の面積が大きいことが分かります。
広島大学の沢田氏は、アカハライモリの体型や腹の模様に地域差があると報告しています(日本産イモリの地方種に関する研究、広島大学学術雑誌、1963年)。
地方種族として「東北種族」「関東種族」「中間種族」「渥美種族」「篠山種族」「広島種族」の6つに、模様について「黒い模様がない」「黒い斑点が散在する」「黒点が左右対称に並ぶ」「網目模様」「波状模様」の5つに分類。
また、長崎総合科学大学の持田浩治教授の研究で、捕食者の種類によって赤色の面積を変えていることも確認されています(科学研究費助成事業-アカハライモリの警告色と防御行動の相関した進化)。
色覚が鋭い鳥類に対して警戒色をアピールするため島しょ部では赤い面積が大きいが、色覚に乏しい捕食者が多い地域では赤色を目立たせる必要はなく、赤色の面積が小さくなっているそう。
地域によって主たる捕食者が違うため、地域で模様が異なっているのは理にかなっているといえますね。
水族館巡りでアカハライモリを見比べてみよう!
アカハライモリは普段の生活圏ではほとんど見つけることはできません。
しかし、水族館に展示されていることが多いため、旅行に出かけた際にはぜひ水族館で魚だけでなく、アカハライモリも観察してみてくださいね。
地域ごとのお腹の模様や赤い面積の違いを確認できれば、きっとワクワクすることでしょう。
(サカナトライター:額田善之)