【10/26(土)~11/30(土)開催】備中で暮らす、町家deクラス ~ 予約申込み受付中!町家でクラス、懐かしい未来を体感しよう
2023年12月に関東から倉敷に移住してきた私にとって、なによりも衝撃的だったことは、昔ながらの町並みや暮らしを残そうとする人が多いことです。
私の親戚の家にも刀蔵(かたなぐら)や縁側があった記憶はありますが、相続する人や維持・管理する費用面を解決できずに手放してしまったと聞いています。
我が家の場合はそれらの課題と個人で向き合いましたが、倉敷をはじめとする備中圏域は、地域の人たちの手で町並みやそこでまだ普通に営まれている暮らしを残し、活用しようとする人が多くいると感じています。
備中圏域では毎年秋に一か月の期間を使って、町並みや町家、蔵を活用して「衣・食・住・学ぶ・遊ぶ」を切り口としたまち歩きや体験型プログラム「備中で暮らす、町家deクラス」が開催されるとのこと。
実行委員に2024年の注目企画やおすすめの楽しみかたを取材してきました。
「備中で暮らす、町家deクラス」とは
国選定の「重要伝統的建造物群保存地区」内をはじめとした備中圏域は、歴史的な町並みが残る地域です。残っているのは、町並みだけではありません。その町並みを活用して江戸~昭和の伝統的な暮らしや楽しみ、遊びを日常として営んでいる人たちがいます。
そのような場所で実際に「衣・食・住・学ぶ・遊ぶ」を切り口としたまち歩きプログラムと体験型プログラムを提供するのが「備中で暮らす、町家deクラス」。今年(2024年)は、11回目の開催。9月15日(日)から、予約申込みが始まっています。
予約が必要なプログラムもあります。定員に達したプログラムは、随時公式ホームページに掲載されています。
まち歩きプログラム
町並みを知るには、自分の足で歩いてみるのが一番。
2024年の「備中で暮らす、町家deクラス」では、17のまち歩きイベントが開催されます。
詳細は、以下の画像・公式ホームページを確認してください。
その町並みで、どのような暮らしが営まれているのかといった深い視点で町を歩けるチャンスです。
14~17番は、まち歩き特別企画「備中とと道を歩く」となっています。
「とと」は、備中圏域の方言で「魚」を指します。「備中とと道」は、明治時代に笠岡の西浜(金浦)から当時隆盛を誇った吹屋の銅山まで、その道中を六回の駅伝方式で12時間もかけて鮮魚を運んだ道です。
「備中とと道」は、日本ユネスコ協会連盟が登録する失われつつある豊かな文化や自然を、子どもたちの未来に残そうとする“市民による活動”「プロジェクト未来遺産2023」に登録されました。2024年はプロジェクト未来遺産2023登録の記念として、実際に「備中とと道」を歩くプログラムが設定されています。
体験型イベント
「備中で暮らす、町家deクラス」では、その「暮らし」を体験する内容も多岐にわたっており、2024年は24の体験型プログラムが用意されています。
実際に手仕事をしたり味わったりと五感で備中圏域に残る暮らしを体感できるものばかり。
詳細は、以下の画像・公式ホームページを確認してください。
備中町並みネットワーク 中村泰典さんへインタビュー
「備中で暮らす、町家deクラス」が大切にしていることや期間中のおすすめの楽しみかたについて、備中町並みネットワーク事務局の中村泰典(なかむら やすのり)さんにインタビューしました。
──「備中で暮らす、町家deクラス」の企画背景を教えてください。
中村(敬称略)──
きっかけは、2013年に開催された全国町並みゼミ倉敷大会です。
倉敷美観地区は、国が選定した重要伝統的建造物群保存地区で、江戸時代からの建物群が保存・活用されている町なんですよ。でも、備中圏域には倉敷美観地区以外にも歴史的な町並みを残している地域がたくさんあるので、みんなで協力して倉敷大会を開催しました。
そこで、これからも互いの町を訪ねるきっかけが欲しくてはじめたんです。
それからもうひとつ目的があって。それは、町家の暮らしを伝えるために、まずは我々が町家での暮らしについて知りたいと思ったんです。
我々は、団塊の世代も含めてほとんどが戦後の生まれなので、幼い頃から都市化された生活を送ってきました。なので、町家の暮らしぶりのような「文化」を知らないんです。
知らないことは、誰かに伝えることもできないんですよね。戦前の町家での暮らしを語れる人はもうわずか。だから、今この機会に自分たち自身がいろいろな文化を体験する必要があると感じたので、「備中で暮らす、町家deクラス」という企画でまち歩きと体験型プログラムを実施することになりました。
──今年(2024年)で11年目を迎える息の長いイベント。例年の参加者は、どのようにプログラムを選択されていますか。
中村──
4割近くがリピーターの参加者です。「備中で暮らす、町家deクラス」はたくさんのプログラムがあるので、毎年少しずつ参加されるかたが多いのではないでしょうか。
おもしろいのは、まち歩きが好きな人はまち歩きプログラムから複数、食が好きな人は食のプログラムから複数……のように、同じ分野でさまざまなプログラムを選択されるかたが多いことです。
みなさん、自分の好きなことを極めるみたいですね。備中圏域は範囲も広いので、いろいろな地域を楽しんでもらえたらと思います。
──昨年までは「備中no町家deクラス」でしたが、今年から「備中で暮らす、町家deクラス」に名称が変更されましたね。その理由と今年の注目プログラムを教えてください。
中村──
そうなんですよ。
昨年(2023年)までの10年間は、「町家」に焦点を当ててこのイベントをやってきたんです。でも、回数を重ねれば重ねるほどに、町家での暮らしってその町を通る道だったり農業だったり、地域を構成する要素のひとつなんだと気づいて。
だから、ここであらためて町家のある備中圏域という「地域」の暮らしにスポットを当てようと思って名称に「備中で暮らす」を追加しました。
体験型プログラム8番の「宇治盆地の古民家めぐり・もち麦うどんの手打ち体験」は、町家ではなく農家です。備中圏域には町家以外の暮らしもあるので、それらも体験してもらえればと思います。
それから、今年は新たに「とと道を歩く」という企画を用意しました。
「とと道」って知っていますか?
瀬戸内海の鮮魚を、吹屋に運んだ道のことなんです。今みたいに車はないですからね。人が歩いたり走ったりして魚を運んだんですよ。そういう、備中圏域の人たちにとって生活に欠かせない道を残そうと動いているプロジェクトが、日本ユネスコ連盟の「プロジェクト未来遺産2023」に登録されたので、この機会に歩いてみたいと思っています。
特にまち歩きプログラム16番の「矢掛~美星」は今年初めて用意したコースなので、私も歩くのを楽しみにしているんですよ。
──最後に読者へメッセージをお願いします。
中村──
私たちにとっては特別に見えるかもしれませんが、備中圏域にはまだまだ昔ながらの暮らしを「普通」として生活する人たちがいます。そのような町で、自分の生まれ育った町を愛する人の暮らしの話を聞いたり体感したりできるプログラムを用意しているのが、この「備中で暮らす、町家deクラス」です。
今年の夏は暑かったので「備中で暮らす、町家deクラス」が開催される頃は暑さも和らいで、町歩きが楽しめる季節になるだろうと思い、楽しみにしています。秋の陽気を味わいながら、備中圏域をめぐってみませんか。
おわりに
中村さんは町家の再生活動に尽力されているかたですが、「自分たちは都市化した生活に慣れてしまっているからこそ、町家をはじめとする昔ながらの生活をもっと知りたい」といつも目を輝かせて話をしてくれます。
この日も「とと道だけじゃなくて、鉄や塩を運んだ道も実際に歩いてみたいねぇ」と、今後も「備中で暮らす、町家deクラス」の構想がどんどん広がっていく姿に、このイベントが長く続いている秘訣を垣間見ました。
文化の秋、行楽の秋、食の秋……。秋のお出かけに「備中で暮らす、町家deクラス」は、いかがでしょうか。