「また怒りすぎた…」と落ち込むあなたへ。親がまず身につけたい“自己共感の力”
臨床心理士・公認心理師のyukoです。子どもと衝突したときや怒りすぎたとき、「私、いい親じゃないな」「育て方がよくなかったのかな」と反省したことはありませんか? 悩んだときは反省だけではなく、自分を許し、受け止める“自己共感”も必要です。“自己共感”を知り、よりよい親子関係の作り方を考えます。
“ああ、また怒りすぎた”と落ち込む日々
テスト前なのに動画を見続けている息子。何度めかの「そろそろやろうよ」に反応しない子どもにイライラしてつい「いい加減にしなさいよ!」と声を荒げてしまった。怒られたのでしぶしぶ机に向かったものの、勉強する手は進んでいなさそう。夕飯のとき、ぽつりと「自分が悪いのはわかってるけどあんな風に言われるとやる気なくすんだよね」と話す。あんな風に声を荒げなくてもよかったなと反省し、私の方が少し落ち込んでしまった。
育児をしていると誰しも「私っていい親じゃないかも」「今日も怒りすぎてしまった」と反省する日があるのではないでしょうか。
親である前に一人の人間なので、感情的になることがあってももちろん大丈夫。
ただ、自分を責めてしまうとき、気持ちを回復させる術を持っておけたらさらに安心ですよね。
今回は、感情調整のカギとなる「自己共感」を紹介します。
「自己共感」で、弱さと向き合う
人間関係において、「共感」に注目が集まっている近年、自分に対する「共感」も大切なんです。
心理学でいう自己共感とは「自分の感情に対して“良い・悪い”と判断せず、ありのままを受け止めること」。
たとえば
・イライラして強い言葉を言ってしまって落ち込んだとき→ 「今日は私も余裕がなかったんだな」と状況を受け止める。
・子どもが言うことを聞かず、つい無視してしまって後悔するとき→ 「私は疲れていて反応する力が残っていなかっただけ」と理解する。
・子どもの成績や言動で焦り、“ちゃんと育てられていない”と思ったとき→ 「焦る気持ちは、それだけ子どもを大切に思っている証拠」と自分の気持ちに寄り添う。
まずは、自分の気持ちを確かめ、優しく受け止めることが第一なんですね。
子どもは “完璧な親”よりも “気持ちを扱える親”に安心する
子どもは大人が思う以上に、言語だけでなく表情や空気を読み取る力を備えています。
だからこそ、親のイライラや無理している感じに敏感なのです。
大切なのは、“感情が揺れない親”ではなく、揺れたときに“立て直せる親”でいること。
揺れたときに立て直せるとは、反省を言葉にして伝えられることです。
たとえば、
・「さっきは突然大きな声で怒ってごめん。びっくりしたよね」と謝る。
・「今日は疲れてて、口調が強かったかも」と自分の状態を説明する。
・「次どうするか一緒に考えたい」と未来志向に切り替える。
説教や親子喧嘩をなんとなく終わらせるのではなく、“感情を扱える大人の姿”を見せることで、子どもも安心して反省できます。
親子ともに“完璧”を目指すのではなく、“失敗してもやり直せる居場所”を作っていくのが重要なんですね。
AIに感情の言語化を手伝ってもらう
気持ちの整理が上手な人が取り入れているのがChatGPTなどAIを活用した方法。
自分だけで感情を言葉にするのは、実はとても難しい作業です。
そこで、次のようにAIに投げかけると、心の整理が早く進みます。
・「今日子どもに強く言ってしまった。私は何に疲れているのか、言語化を手伝って」
・「罪悪感があるけれど、どう整理したらいい?」
・「怒ったあとの“建設的な声がけ”を一緒に考えて」
誰にも言えない気恥ずかしいことも、素直に話せるのもAIのメリット。
AIの力を借りながら、“自己共感”の練習を積み重ねていくのもおすすめです。
自分を責める・反省する親御さんは“子どものことを人一倍考え、よい親であろうと頑張っている方”といえます。
自分に優しく共感したあとで、お子さんにも寄り添って歩み寄れるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師