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わが子も春から高校生!新年度のさまざまな壁、発達障害親子が工夫と配慮で乗り越えた小中9年間

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わが子も春から高校生!新年度のさまざまな壁、発達障害親子が工夫と配慮で乗り越えた小中9年間

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

新生活が始まる春は、準備に追われる春でもあります

神経発達症がある息子のコウは、この春から高校生になります。制服姿のコウを見ると、「ほんの少し前まで保育園に通っていたのにもう高校生?」と成長の速さに驚きます。

春から新生活が始まるということは『新生活の準備』も始めなくてはならないということです。コウと同じく神経発達症があり環境の変化に弱くミスが多い私としては、非常にドキドキする時期でもあります。

コウ本人は新しい環境への期待もあり「高校生活楽しみだな~!」と言いながらせっせと入学準備をしていますが、新入生出校日に登校した際に早速用具の名前の書き忘れが発覚していました。隣の席の生徒にネームペンを借りて事なきを得られたそうですが、親子ともどもミスを防ぎきれないまま高校生活のスタートを切りそうな予感がしています。

もうじき高校生になる今は自分で教科書類に記名をしているコウですが、小学校入学前は字を書けなかったので、名前シールを一緒に貼ってもらいました。保育園や療育園で登園シールなどを貼った経験もあってか、意外なほど丁寧に貼ってくれて助かりました。

算数セットなどの細かい物に名前シールを貼る作業が面倒になった私が「入学に向けて一緒に準備しない?」とコウを誘ったのがきっかけでしたが、入学準備を一緒に行うことで、入学に向けてコウの気持ちの準備もできたようです。

私はかなり怠惰な性格なので、いつも子育てに関するいろいろなことを「面倒だな……」と思いつつしぶしぶ取り組んで日々を過ごしています。保護者として褒められたことではないだろうと思いますが、それが結果として子どもにさまざまな体験の機会を与えていると言えなくもないのかもしれません。

マメな保護者はマメさを生かして、怠けがちな親は怠け心を生かして子どもと接していくと、無理が少なくてよいのかもしれませんね。

保護者にしかできないこと……それは学用品の購入と、合理的配慮の相談!

このように、これまで小中高の入学準備において名前書きやシール貼りはコウと分担してきた私ですが、学用品の購入だけは資金を出す私が全てを担う必要があります。小学校入学前にケース買いしておいた消しゴムや鉛筆は大変役に立ちました。わが家は給食袋も傘も水筒も多めに用意しておきました。

コウは忘れ物や失くし物がとても多かったため、「先生方から『予備があると思うことでコウ君に油断が生まれて忘れ物が増えるんですよ!』と言われてしまうかもしれないな……」と少しドキドキしていたのですが、幸いそのようなご指摘を受けることはないまま義務教育の9年間を終えました。

また、義務教育の9年間の中では、困りごとや合理的配慮について先生と話し合うことも必要でした。話し合いの機会を設けていただいてもなかなか落としどころが見つからないこともありましたが、「できるだけ学校と保護者が対立的にならずに合理的配慮について話し合えたらいいな」と考えていました。

そうした相談の中でご対応いただいたこともあれば、「もう〇年生ですから」などの理由により難しかったこともありました。特に中学生になってからは、個別のサポートは実現しがたい状況がありました。『内申にとってプラスになるようなサポートを一人の生徒だけに特別に行うことは難しい』という理由があったからです。

それでも、先生方からは声掛けなどの形で可能な限りのサポートをしていただきました。特に担任の先生からは、ほかの教科担当の先生に提出物の状況を聞いてコウに伝えたりするなど、かなりマメな声掛けをしていただいていました。

コウにとっては声掛けだけで忘れ物を減らすことは難しく、結果としては状況の改善には至りませんでしたが、『マメに気にかけてもらっている』『先生方が内申点のことを心配してくれている』ということはコウにもしっかり伝わっていました。コウの先生方への信頼は厚く、「この中学校に入ってよかったな~。僕、先生にはずっと恵まれてるよね!有難いことだよね」と感謝を口にすることもしばしばでした。

過去の積み重ねを少しずつ今に生かしながら

入学前の準備の中には、持ち物への記名などのスタンダードな準備のほか、筆記用具をケース買いしたり、就学前相談や個別の面談の予約をしたりするなどのさまざまな『その子どもにとって必要な準備』があるのだろうと思います。

コウの場合は、『授業という形式で勉強すること』や『困ったときに人に伝える練習』や『周りを見て同じことをする練習』も必要でした。見通しを持ちやすくし不安を軽減するために、事前に校内の下見が必要な子どももいますね。

現在のコウはまだ全ての準備を独力で行うことは難しいようです。それでも彼なりにウキウキと『新しい学校生活への準備』を行っているのを見て、私も伴走しつつ一歩引いて見守っていきたいなと思いました。

執筆/丸山さとこ

(監修:初川先生より)
コウくんの新生活準備にまつわる工夫や思いのシェアをありがとうございます。コウくん、いよいよ高校生ですね(感慨深いです!)。さて、さとこさんがされてきたように、準備そのものにお子さんも関わって、本人の心の準備をすることはとても良い工夫ですね。準備を保護者任せにしてもらうと、本人からすると突然新しい生活が始まったように感じられるかもしれないので、一緒に新生活の準備をするのはよいと思います。ただ、本人の得意不得意もあるため無理やりさせてもよくはなく、シール貼りのような得意な作業があれば一緒に、そうでない場合あるいは制服を着てみる、最後持ち物をバッグに入れるところだけでも良いかもしれません。

さとこさんが書かれていたように、保護者ができることは学用品の購入あるいは手続きといった大人でないと難しいこと。そして、困りごとや合理的配慮についての話し合いです。合理的配慮をお願いしたいという形で面談を申し込むと、学校側に構えられてしまって対立的になってしまう場合もあります(要求を伝える会だと誤解されてしまうため)。本来はそうではなくて、どんなお子さんなのか、どんな場面で困りがちなのか、これまでの学校生活の中で先生方にしていただいていた支援や合理的配慮はどんなものであったか、それについて新しい学校でもどのくらいお願いできるかを、建設的に(つまり対立せずに)調整するために話し合うということです。お子さん本人が自分の困りごとを言語化できたり、直接先生と話せる場合はお子さんも一緒に面談するのも良いと思います(余談ですが、大学進学の段階では基本的にはその話し合いを本人が務める場合が多いです。自分の得意不得意や困り感を自分の言葉で説明できるようになることも中長期的には視野に入れたいところです)。

新しい生活が始まるからこそ、これまでよりももう少し自力で頑張ってみたい、特別な声かけは要らないと考えるお子さんもいるように思います。その場合でも、何も知らせないというのではなく、その段階にあることを学校には知らせておくことをおすすめします。本人が頑張ると言っているので見守っていてほしいが、こんな状況で苦戦しがちなので何卒よろしくと伝えておくと、先生方も目を配りやすくなります。

変化の多い時期は、大人も子どももわくわくする半面、なかなかに負荷がかかるので疲れやすい時期でもありますね。わくわくしたり、興奮気味だと勢いで頑張れそうな気配も感じるかもしれませんが、できればいつもより休養を多くとったり、休日にはできるだけ予定を入れないようにしたりして、ほっと一息肩の力を抜く時間も確保したいところです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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