中国ブックデザインの第一人者に迫る「書藝問道 ブックデザイナー 呂敬人の軌跡」が3月27日まで『ギンザ・グラフィック・ギャラリー』で開催中
中国の豊かな出版文化の歴史を再発見し、新たなブックデザインの道を切り開いたパイオニア、呂敬人(リュ・ジンレン)氏。その軌跡をたどる「書藝問道 ブックデザイナー 呂敬人の軌跡」が、2025年3月27日(木)まで東京都中央区の『ギンザ・グラフィック・ギャラリー』で開催されている。
“中国芸術の核心に迫る精緻なブックデザイン”の世界を体感
日本でブックデザインを学び、中国のブックデザインの第一人者として活躍する呂敬人氏。1989年、93年の2度にわたり来日し杉浦康平氏に師事した呂氏は、1998年に敬人設計工作室設立。2002年より清華大学美術学院視覚伝達デザイン学科で教鞭を執り、2013年「敬人紙語」ブックデザイン研究クラス設立した。現在は上海美術学院の客員教授、『ブックデザイン』叢書編集長を務める。
そのデザイン作品は、全国書籍装幀芸術展金賞、中国出版政府賞、「中国で最も美しい本」賞、ドイツ・ライプツィヒの「世界で最も美しい本」賞など、数多くの賞を受賞。ドイツのオッフェンバッハ、韓国の坡州、米国のサンフランシスコ、中国の北京、上海、深圳などで個展が開催されるなど、各国で注目されている。
呂氏が初来日した1989年当時、中国ではブックデザイナーという独立した職種がまだ確立されていなかった。そのような時代に、杉浦デザイン事務所での学びを通して本の内容から全体を構築していく「ブックデザイン(書籍設計)」に開眼した呂氏は、自国の豊かな伝統文化を研究しながら独自の方法論を確立していった。
展覧会担当の高木さんは「伝統的な造本術の美と手法を積極的に取り入れた華麗な作品で、中国のブックデザインを牽引してきた呂敬人氏。その豊饒な造本世界を、本人による丁寧な解説とともにご紹介しています。文字を美しく表現する技術であり、文化的な感性を反映する芸術でもある書藝の道を問い続ける呂敬人氏が魅せる『中国芸術の核心に迫る精緻なブックデザイン』の奥深さ、美しさをぜひ会場で体感ください!」と見どころを語ってくれた。
存在感あふれる豪華本をダイナミックに展開
1階では、宋代の拓本を原寸大復刻した『朱熹榜書千字文』をはじめ、全長10mの巻物10巻を納めた『絵図五百羅漢詳解』や、解説を読みながら実際に囲碁が打てる『忘憂清楽集』など、目を見張る豪華本全8点が展開される。地階会場では、京劇やお茶、篆刻(てんこく)の他、中国の豊かな芸術文化、生活にまつわる多彩な書物が、呂氏による丁寧な解説とともに全27点紹介される。また、2階ライブラリでは手にとって楽しめる作品集や自著なども展示し、多彩なアプローチで楽しませてくれる。
現代中国の多様な造本文化の礎ともなった呂敬人氏の書藝を、日本ではじめて大々的に紹介する見ごたえある内容になっている。
開催概要
「書藝問道 ブックデザイナー 呂敬人の軌跡」
開催期間:2025年2月12日(水)~3月27日(木)
開催時間:11:00~19:00
休館日:日・祝
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)(東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F・B1)
アクセス: 地下鉄銀座駅から徒歩5分、JR有楽町駅・新橋駅から徒歩10分
入場料:無料
【問い合わせ先】
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)☏03-3571-5206
公式HP https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/
取材・文=前田真紀 画像提供=ギンザ・グラフィック・ギャラリー
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。