老後の年金、月20万円をもらうために今、年収はどれくらい必要?
老後の年金がいくらもらえるかは、誰しも関心あることと思います。今回は、将来の年金の受給額を月額20万円にするために、年収がどれくらいあれば良いのか、自分自身の年金の計算方法、そして、不足額の準備の仕方について見ていきましょう。
老後の生活費はいくら必要なのか?
老後、毎月の生活費はいくらあれば足りるのでしょうか?
総務省の家計調査(2023年)によると、65歳以上の生活費は、単身世帯で14.5万円、夫婦のみ世帯(無職世帯)で約25万円とのこと。人によって過不足は違いますが、公的年金でその分をまかなえると安心です。仮に、単身世帯の生活費より約6万円多く、二人以上世帯より約5万円少ない20万円の年金を受け取るとしたら、会社員の年収がどのくらいあれば良いかを概算で見ていきましょう。
家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要 (stat.go.jp)
20歳から会社員として勤務していた場合に必要な年収
まずは、会社員の年金について簡単に基本を確認しましょう。公的年金は、20~60歳の全ての人に加入義務がある国民年金と、会社員等が加入する厚生年金の2つがあります。つまり会社員は将来、国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。年金保険料は、勤め先から厚生年金保険料として給与天引きされ、その中に国民年金分も含まれます。これらを踏まえ、年金を月額20万円もらうための年収を試算していきます。
国民年金(老齢基礎年金)
納付期間に比例して年金が増えていくため、年収は関係ありません。20~60歳までの40年間納めた場合の受け取り額は、満額の81万6000円(令和6年度・67歳以下の方)です。
つまり、国民年金は、
81万6000円/年÷12=約6万8000円
月額6万8000円を受け取れるということになります。
厚生年金(老齢厚生年金)
一方、厚生年金の受取額は収入の影響を受けます。年金を月額20万円もらうには、国民年金との差額13万2000円/月(20万円-国民年金6万8000円/月)を厚生年金から受け取れば良いわけです。
月に13万2000円をもらうためには、厚生年金は約158万円(13万2000円×12カ月)必要です。希望する厚生年金を受け取るために必要な年収は、以下の式で計算できます。
年収の目安=(希望する年金額)÷5.481/1000×(加入年数)
※昭和21年4月2日以降生まれ、平成15年4月以降の乗率で概算
仮に20~60歳までの40年間会社に勤めるとすると、
158万円÷(5.481/1000×40年)=約721万円
つまり、年収が720万円くらいあれば、年金を月20万円受け取れるということになります。
会社員は、入社から徐々に年収が増えていくケースが多いので、年収の平均という風に考えます。なお、厚生年金の保険料は、年収に対して9.15%納めるのですが、正確には、4~6月の給与を基にした標準報酬月額やボーナス時の標準賞与額に応じてその9.15%を納めることになります。
これらにはそれぞれ上限があり、標準報酬月額65万円、標準賞与額150万円です。収入が多ければどんどん年金が増えるわけではないので念のため補足をしておきます。
また、60歳以降も会社員として勤務する場合は、最長70歳まで厚生年金に加入することができるため、60歳までの平均年収が720万円に届かない場合も、その後に上乗せすることができます。
今の自分だと将来の年金受給額はいくら?
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では次に、これまで納めた年金や、今後の収入見込みから将来の年金額を計算してみましょう。自身の状況に置き換えて計算してみてください。
将来の年金額を出す方法は
将来の年金の計算式(概算)は、
国民年金(老齢基礎年金)=81万6000円×加入期間(年)/40年
厚生年金(老齢厚生年金)=年収×5.481/1000×加入年数
です。次の例で試算してみます。
例)
30歳会社員Aさん、年収400万円(手取り給与20万円、ボーナス60万円)の場合
Aさんが大学を卒業後23~60歳まで働き、学生時代は年金の免除を受けていたとすると、
国民年金(老齢基礎年金)
81万6000円×37年/40年=約75万4800円
厚生年金(老齢厚生年金)
400万円×5.481/1000×37年=約81万1000円
となり、
国民年金+厚生年金=約156万円(約13万円/月)
月13万円程の年金を受け取れます。
仮に、夫婦共働きで、それぞれの平均年収を400万円とした場合、老後の年金額は2倍の26万円/月ということになります。また、専業主婦(夫)家庭の場合は、どうでしょうか。主婦(夫)が満額の国民年金がもらえると仮定すると、月6.8万円を受け取ることができるため、夫婦合計の年金は、約19.8万円/月となります。一人で年収720万円でなくても、夫婦を合わせると大体20万の年金を受け取れそうです。
次に、Aさんの例で、年収が徐々に上がっていくと仮定した場合でも年金額を試算してみましょう。
年収の推移
23~40歳 年収400万円
40~50歳 年収500万円
50~60歳 年収600万円
国民年金(老齢基礎年金)
81万6000円×37年/40年=約75万4800円
厚生年金(老齢厚生年金)
400万円×5.481/1000×17年=約37万2700円
500万円×5.481/1000×10年=約27万4000円
600万円×5.481/1000×10年=約32万8800円
計97万5500円
国民年金と厚生年金を合計すると、年金は約173万円(月14万4000円)となります。
年収が400万円で変わらなかった場合は13万円でしたので、月額1.4万円年金が増えたことになります。飛躍的に増えるわけではありませんが、仮に30年もらうなら、その差は500万円(1.4万円×12カ月×30年)にも上ります。
厚生年金保険料を払う現役時代はつい愚痴をこぼしたくなりますが、年金は一生もらえるものなので、やはり老後の安心に繋がります。
老後資金を作るために有効な方法は
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公的年金は終身で受け取れるので生活の糧になりますが、人によって生活水準は違うため、不足分は今の内から準備をしておくことが必要です。方法は、いくつもの金融商品がありますが、まずは次の2つの制度を紹介します。
iDeCo(イデコ)
iDeCoの正式名称は、個人型確定拠出年金といいます。知っている人もずいぶん増えており、老後の資金を準備するための積立制度です。税制優遇が大きいことから注目され、いまや300万人以上の人が加入しています。
掛け金が全額所得控除されるため、年末調整でiDeCoの掛け金を申請すると、所得税や住民税の負担が減ります。また、積み立てる金融商品は、預貯金か投資信託が選べるようになっており、投資信託はリスクがあるものの、長期的にコツコツ積み立てることでじっくり資産を育てて増やしていくことが期待できます。
また、運用をして得られた利息や利益に対して、通常20%程度の税金が掛かりますが、iDeCoは非課税のため増えた分は全て自身の資産となりお得です。原則60歳まで払い出しができないため、途中でお金が必要になったら困る、と心配な人は、iDeCoの積立額を控えめにして様子を見ながら積立額を徐々に増やしていくのも良いでしょう。
最低5000円から始められ、例えば、子供の教育費が掛かるなど一時的に家計が厳しい時は、積立をストップして掛け金をお休みすることもできます。
これまで、企業型確定拠出年金(企業DC)加入者が、iDeCoに加入するには、iDeCoの加入を認める規約の定めが必要でしたが、2022年10月の改正によって不要となりました。多くの会社員がiDeCoを利用できるようになっているため検討してみましょう。
NISAで積立投資
次いでおススメなのは、NISAです。NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠があります。年間投資可能額は前者120万円、後者240万円の合計360万円で、総額1800万円まで非課税で運用できます。
特につみたて投資枠は、投資信託をコツコツ積み立てる投資枠で、初心者でも商品が選びやすい制度設計です。iDeCoと同じく利益には税金が掛からず、一度投資した資金は生涯非課税で運用できます。
なお、NISAはiDeCoと違って必要な時にいつでも引き出せます。一方、iDeCoには掛け金が所得控除されるという特徴がありますが、NISAにはありません。所得控除を取るか、いつでもすぐ引き出せる方を取るか、というところでしょうか。iDeCoとNISAの両方を少しずつ始めるのも良いでしょう。
今回は、老後の年金についてみてきました。下記にまとめます。
1.会社員の年金は、国民年金と厚生年金がある
2.国民年金は40年納めると月額6万8000円になる
3.厚生年金は収入によって受取額が違う
4.年金を月額20万円受け取るための年収の目安は720万円
5.年収400万円でも、夫婦の年金を合算すれば年金月20万円は実現可能
6.年金で不足する分は、iDeCoやNISAを活用し早めに準備をしよう
実際の年収を当てはめて計算してみると、自分の老後に向けての準備など目標が見えてくるでしょう。
年金についてのQ&A
Q.公務員の場合の年金はどうなりますか?
A.公務員はこれまで手厚い共済年金でしたが、平成27年10月から、会社員と同じ厚生年金に加入するようになりました。それに伴い、企業年金に相当する年金払い退職給付が新たに設けられました。
Q.厚生年金保険料は、具体的にどのように計算されますか?
A.毎年4~6月の給与を基に会社が社会保険事務所に算定基礎届という標準報酬月額の届け出を出し、それらに基づき18.3%を労使折半で負担するようになっています。