<世界の淡水巨大魚4選>遥かな太古から生きながらえてきた&特徴的な生態をもつ怪物たち
水族館にはとても大きな淡水魚がいることがあります。
世界には、水族館で目にするものも含めて、多くの巨大淡水魚が生息しています。では、彼らはどのような生き方をしているのか、はたまた人間の文化にどのような伝説を残しているのでしょうか。
奇妙で雄大な魚たちの世界を、一緒にのぞいてみましょう!
淡水にすむ巨大なエイ<プラークラベーン>
プラークラベーンは、東南アジアやボルネオの川に生息する、巨大な淡水エイ。2022年に、メコン川で体長約4メートル、体重約300キロの個体が捕獲されています。
タイ語でプラーは「魚」、クラベーンは「エイ」。つまり、本来のタイ語ではプラークラベーンはエイ全般をさします。
とても大きな魚ですが、珍味として食べられることはあっても、一般的には食用にされません。尻尾に毒針があって危険ということもありますが、それ以上に現地では神聖な存在なのです。
例えば、現地では「ラーフ」と呼ばれることがあります。ラーフとは、太陽や月を飲み込んだヒンドゥー教の魔神のこと。真ん丸の姿が、この神話を連想させるのですね。
また、南米にいるアハイア・グランディという淡水エイも、体重220キロに達する巨大な魚です。
<アリゲーターガー>はワニのような姿
近年、日本でも外来種として知名度が上がっているアリゲーターガー。本来は北米に生息し、大きな個体は全長3メートル超、体重は約150キロにもなる巨大魚です。
アリゲーターガーは、1億5千万年以上前のジュラ紀末期からほとんど姿を変えていない“生きた化石”とされます。DNAの変異速度が非常に遅いことが知られており、その理由はDNA修復能力が異常に強いためと考えられています。
それにしても、見た目はワニにそっくりです。この顔にはどんな機能があるのでしょうか?
アリゲーターガーは水鳥や動物を食べることもありますが、主な獲物は魚です。水中で長い口を横に振ることで、広い検知範囲、捕獲範囲を確保できるほか、細長いので水の抵抗が少なく、素早く動かすことができるのです。
また、うきぶくろが発達していて空気呼吸ができます。気温が高い地域の川や湖は極度の低酸素状態になることがあり、えら呼吸だけでは酸素が不足するのです。
こうした適応力の高さが、ジュラ紀から生き残っている秘訣かもしれません。
南米にすむ巨大ナマズ<ピライーバ>
南米のアマゾン川やオリノコ川などに生息する巨大ナマズ、ピライーバ。大きな個体は全長3.6メートル、体重は200キロとも300キロともいわれます。
ピライーバはブラジル先住民の言語トゥピ語で「悪い魚」の意味。先住民の伝説によると、人間の子どもを食べていたと言われるほか、近年に入ってからも漁師が飲み込まれたなどの目撃談が絶えません。
人を食べたという恐ろしい話の真偽はともかく、肉食性であり、ほかの魚を食べます。また、胃袋からサルの身体の一部が見つかったとも言われているようです。
なお、ヨーロッパオオナマズも全長3メートル前後になる巨大な肉食性のナマズで、ハトを襲う姿が目撃されています。メコンオオナマズもやはり全長3メートルの巨大魚ですが、こちらは草食性です。
世界各地に生息する巨大ナマズたちは、いずれも現地で人間の食料になっています。彼らから見れば、人間の方がよほど恐ろしい生物なのでしょう。
水族館でも親しまれる巨大魚<ピラルクー>
ピラルクーは、アマゾン周辺の川や湖に生息し、大きな個体は体長3メートル以上、体重200キロに達します。
ピライーバと同様に、ピラルクーもトゥピ語。「赤い魚」を意味し、尾びれが赤いことに由来しています。ちなみに、トゥピ語で「歯がある魚」はピラニアです。
このピラルクーもアリゲーターガーと同様に、約1億年前から姿が変わっていない“生きた化石”とされます。
魚なのにときおり水面に顔を出して呼吸します。これもアリゲーターガー同様、低酸素になる環境に適応してうきぶくろを発達させ、空気呼吸をしているから。
現地では、肉はごちそうとされ、うろこは加工品に利用されます。まさに自然の恵みといえる存在ですね。
淡水に潜む巨大魚たち
ここで紹介した淡水魚たちは、ただの大きな生き物ではありません。
環境に適応して、大きさ以上に個性的な特徴を備えています。そして人の生活の近くにあり、各地の文化と深く関わっているのです。
彼らは、人間もまた自然の循環の中で生きていることを思い出させてくれる存在かもしれません。
(サカナトライター:浅川 千)
参考文献
The genomic signatures of evolutionary stasis-EVOLUTION