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【独自】新潟県加茂市で進行中の国家規模プロジェクト――世界も注目する未来社会を見据えた研究

にいがた経済新聞

早稲田大学大学院創造理工学研究科経営システム工学専攻修士1年の酒井和(なごみ)さん(左)と、早稲田大学理工学術院教授で理学博士の高橋真吾氏(右)

新潟県加茂市の商店街(2024年9月1日撮影)

新潟県加茂市が、国として巨額の予算を投じて実施するJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)未来社会創造事業の「超スマート社会の実現」領域において、注目すべき研究の舞台となっている。このプロジェクトは、単なる大学研究ではなく、全国の有数の大学や研究機関が協力して取り組む総力戦の一大プロジェクトであり、その特殊性と重要性が高く評価されている。

未来社会をデザインするための新技術開発

「JST未来社会創造事業 (本格研究)人間中心の社会共創デザインを可能とするデジタル社会実験基盤技術の開発」ホームページ(https://www.c3s.srl.shibaura-it.ac.jp/spd/)より引用

このプロジェクトの正式名称は「人間中心の社会共創デザインを可能とするデジタル社会実験基盤技術の開発」。神戸大学の貝原俊也教授を筆頭に、早稲田大学、大阪大学、筑波大学など、国内のトップクラスの研究者が参画し、地域社会における政策の事前評価を高精度に行うための新技術開発を目指している。この研究は、政策の効果をよりリアルに、そして詳細にシミュレーションするための技術を構築し、従来の手法では対応できなかった複雑な課題に挑戦するものである。

一大プロジェクトの実証地として全国から選ばれた加茂市

新潟県加茂市、国道403号線から撮影

加茂市は、このプロジェクトの実証地として全国から選ばれた。その背景には、同市がSmart Wellness City(健康都市)としての施策に積極的に取り組んできたことがある。2023年から約5年の期間で調査、研究、実証を進めていく計画だ。

加茂市内では、2023年3月から研究チームが加茂市を訪れ、ワークショップを開始。住民や市職員、事業者が参加して地域課題の抽出が行われた。そして、これらの課題に対する具体的な施策が提案され、その効果を評価するための調査などが進行中である。

ロングインタビューを行う芝浦工業大学システム理工学部の後藤裕介准教授(右)

早稲田大学大学院創造理工学研究科経営システム工学専攻修士1年の酒井和(なごみ)さん(左)と、早稲田大学理工学術院教授で理学博士の高橋真吾氏(右)

8月20日、早稲田大学の高橋真吾教授が率いる「コミュニケーション駆動」の研究チーム6人が再び加茂市に訪れ、住民への「ロングインタビュー」を実施した。このインタビューの目的は、住民の日常生活や価値観、施設選択の理由など、統計データでは得られない情報が収集することだ。

インタビューの対象は、加茂市の課題を解決するための施策に対して強い関係がある人物像(ペルソナ)を明確にし、その人物像にマッチする住民18人を加茂市が選び、インタビューへの協力を依頼した。選ばれた住民は20歳から70歳代後半の男女で、1人ずつ90分間わたる詳細なインタビューが実施された。得られたデータは、地域社会における政策の効果をシミュレーションするための基礎として活用される。

高橋教授は、加茂市で実施された住民インタビューの重要性を強調し、「加茂市が研究の舞台として選ばれたのは非常に良かった」と語った。特に、加茂市職員の中心メンバーが複数の課を跨ぐスムーズな協力体制を整えたことが、研究を進める上で大きな助けになったという。

注目が高まるプロジェクトのこれから

新潟県加茂市の中心部を流れる加茂川(2024年9月1日撮影)

このプロジェクトは、今後も継続してデータ収集とシミュレーションの精度向上を進めていく。2025年3月には、ステークホルダーを集めた討議が計画されており、その場でシミュレーション結果をもとにした議論が行われる。さらに、プロジェクト終了後には、加茂市で得られた成果を他の自治体にも応用するためのモデルとして展開することが期待されている。

高橋教授は、「このプロジェクトが5年後に終了した際には、他の地域でも活用できるようなモデルを確立し、事業化を進めるための人材育成も視野に入れている」と述べており、地域社会の未来に大きな期待が寄せられている。

加茂市で進行中のこの研究プロジェクトは、地域社会における未来のデザインを先導するものとして注目度が高い。国内だけでなく、世界からもその進展への熱い視線が注がれる。

(文・撮影 中林憲司)

【関連サイト】
JST未来社会創造事業 (本格研究)人間中心の社会共創デザインを可能とするデジタル社会実験基盤技術の開発

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