【独居高齢者】一人暮らしの高齢者が抱える課題と介護施設の職員ができることとは?
独居高齢者の増加は、少子高齢化における社会課題の1つ
執筆者/専門家
羽吹 さゆり
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7
独居高齢者は増加傾向にあり、社会への影響も予測できる
独居高齢者の増加は少子高齢化社会における社会課題の1つといえます。
内閣府の統計によると65歳以上の一人暮らしの高齢者は、令和2年には男性15%、女性は22.1%となっており年々増加傾向にあります。※
原因としては、主に、未婚率や離婚率の上昇、配偶者との死別後に子どもと同居しない人の増加などが挙げられます。子どもとの同居を望まない理由としては、慣れ親しんだ場所に住み続けたい、経済的に頼らなくても暮らせる、生活環境に満足している……等々があり、そのほかにも、家族に頼れないさまざまな事情を持つ場合もあります。
この状況は更に続くと言われており、独居高齢者が増加することで生じる課題は社会へ大きな影響を及ぼすことが予想できます。以下がその影響の一例です。
・孤独死問題
・認知症問題
・フレイル問題(加齢によって心身が衰えること)
・消費者契約のトラブル
出典:内閣府令和4年版高齢社会白書(全体版)「3.家族と世帯」
高齢者の一人暮らしは不調発見を遅らせるケースも
健康意識の高い高齢者ももちろんたくさんいますが、全員が高いわけではありません。
日々、自分自身の老いによる身体の変化に向き合いながら暮らしている方は、さてどのくらいいるのでしょうか。また、独居生活は自分の思うままに過ごすことができる反面、家に閉じこもりにもなりがちになる傾向があります。
身体活動量の減少からフレイル状態を引き起こし、さらには、認知症や体調不良に気づくのが遅れ、病状が進行し、介護状態になるケースも生じます。
独居高齢者の増加は社会全体で取り組むべき問題
高齢者の一人暮らしによる課題は、社会全体で取り組むべき課題といっても過言ではありません。
地域や自治体だけでなく国を挙げて取り組むことが必要不可欠です。しかし同じ国民であっても、地域が違えば、文化や習慣も違い社会資源も違います。ではどのようにこの課題に取り組むのがよいのでしょうか。
高齢者自身ができること|独居暮らしの準備を徹底すること
「あの人ができているから自分もできる」では不十分
この課題への対策として高齢者自身がするべきことは、「独居暮らしに対する意識と心構えを備える」ということです。
周りの方たちが独居生活ができているのを見て、自分もなんとなくできるだろうという考えだけでは安易でしょう。
実は、自分は独居高齢者になるであろうと予測している方は、お若い元気なうちから「独居暮らしの準備」が整っている場合が多いのです。ご自身の場合はどうか、お住まいの地域ではどうかなど早め早めに調べておくように心がけましょう。
「まだ大丈夫」ではなく早めに準備することが大切
「自立型や住宅型の施設」に申し込みされている方は、60歳で申し込まれている方が非常に多いと少し前にはなりますが聞いたことがあります。
入居が決まった後、自宅と施設の二重生活をされながら、徐々に施設に移行されていった方もいたそうです。金銭的にもそうですが、独居暮らしをするには、事前の準備が重要と考えています。
ご家族や地域の方ができること
ここまで高齢者ができることについて説明をしてきましたが、実際には「介護状態になったら家族がなんとかしてくれるだろう」とお考えの方が多いとも推測しています。
とはいえ、事情があり家族が傍でサポートすることが難しい場合もあります。
では、まずご家族はどのような初期対応ができるのでしょうか。
見守りシステムを活用しよう
さまざまな理由から生じる高齢者の「孤独死問題・認知症問題・フレイル問題・消費者契約のトラブル等」の問題を少しでも対策・解決するために、「見守りのシステム」を活用してみてはどうでしょうか。
遠くにはなれていても、見守りを可能とすると課題が早期発見でき、早めの介入が可能となります。
またご両親の見守りサービスは、各市町村の社会福祉協議会にもありますし、民間サービスにも多くあると思います。そのためまずは、社会資源としての「見守りサービス情報」を収集していくことをオススメします。
地域とのつながりを持っていただこう
次に独居高齢者のみならず高齢者が社会のなかで孤立しやすいことを考えると、孤立させない為に地域とのつながりを作ることも必要となります。
高齢者の皆さんを何かしらの地域活動への参加へと導くことも大切と言えるでしょう。
高齢施設で働く職員は、高齢者と社会をつなぐ架け橋になれる
独居の高齢者は地域とのつながりが重要であると前述しました。しかしながら、現役時代から、地域とのつながりが薄かった方や苦手な方も多くいるわけですので、社会とのつながりを作ることは容易ではないと思います。ではそのような場合の架け橋として誰が活躍するのでしょうか。
そこで期待されるのが、地域に根ざしている高齢者施設等で従事している職員の方々ではないかと筆者は思うのです。
介護の専門職である職員の方々は高齢者の心理や老いについてを学んでいます。そのような方々が独居高齢者の行動が変わるような場の中心で活動できたら良いのではないかと思います。
高齢者の尊厳を損なうことのないように「人と人が繋がる場」こそ、介護現場で日々働く専門家たちは他の分野で従事している方より得意だと感じます。そのためには、国や自治体をはじめ関係機関との連携も重要です。周囲との信頼関係を築いていくことが真の繋がりで孤独を回避できるのではないかと考えます。
最後に:社会全体で高齢者が自分らしく暮らせる環境づくりを
今後はさらに長命時代になります。そのような社会において、高齢者も生き生きと生活を続けるためには、65歳を過ぎた高齢者の全ての方々が介護保険制度のような「社会に支えられる」考え方だけではなく、自分らしいライフステージを送れる暮らし方が実現できるように、各自治体でサポートできる仕組みができたら望ましいと思います。
また、地域に根ざしている高齢者施設は地域住民の方々と繋がれる環境を整えることを目指していると察します。介護職員の方々はその環境作りの中心人物として活躍できるように研鑽して欲しいとも願いますし期待をしています。超高齢社会で介護職員の方々の貢献度は更に期待が高まると思います。
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