中栄信用金庫 中小企業景況レポート 季節・年末需要で景況改善 2024年10月〜12月実績
10月〜12月期の概況
全業種総合の業況判断D.I.は▲(マイナス)7・2を示し、前回(24年7月〜9月期)と比べ8・1ポイント改善した。10月の最低賃金引き上げで人件費負担が増加する中、季節需要・年末需要による受注状況の改善がみられ製造業、不動産業を除く4業種で業況判断D.I.が改善。特別調査では最低賃金の引き上げへの対応策について「固定費や変動費の削減」と回答した企業が全体の約3割を占めた。
1月〜3月期の見通し
今期の業況判断予想は1ポイント小幅悪化の▲8・2。売上額D.I.は9・4ポイント悪化の▲1・9。収益D.I.は10ポイント悪化の▲12・5の見通し。
製造業
業況判断D.I.は前回調査比1・3ポイント小幅悪化の▲23・6。足許の受注状況は横ばいまたは減少傾向となった企業がみられ、経営上の問題点を「売上の停滞・減少」と回答した企業が最も多かった。製造間接費負担の増加に対する価格転嫁が進まず、対応に苦慮する企業が多数。今期は米国を始めとする諸外国の外交政策の行方により輸出が関係する業態で活動が左右されることから先行き不透明な状況。今期予想は2・2ポイント小幅悪化の▲25・8。
卸売業
業況判断D.I.は前回調査比0・7ポイント小幅改善の▲17・8。食品卸売業では、年末需要の増加を背景に小売・飲食業からの受注増加がみられ、売上額D.I.が改善。一方、経営上の問題点として「仕入先からの値上げ要請」と回答する企業数も増加。2025年の業況見通しについての特別調査では、「良い」と見込む企業2割、「悪い」「普通」はそれぞれ4割程度で、先行き不透明感が伺える。今期の予想業況判断は17・8ポイント改善の0。
小売・飲食業
業況判断D.I.は前回調査比13・6ポイント改善の▲15・0。忘年会等の団体利用や贈答品関連などの年末需要を受け、飲食店や飲食料品小売店を中心に来店客数が増加。一方、最低賃金引き上げを受け、経営上の問題点として「人件費の増加」が最も多い回答に。資金繰りD.I.も前回から7・9ポイント悪化し、対応に苦慮する企業がみられる。今期の予想業況判断は11・7ポイント悪化の▲26・7。
サービス業
業況判断D.I.は前回調査比12・8ポイント改善の2・2。季節需要増加を背景に、旅館・宿泊業や旅客運送業の利用客増加がみられたことに加え、運送業や理美容業における配送依頼数・利用者数が安定して推移。多くの業態で受注状況の改善がみられ、業況判断D.I.は昨年12月期以来のプラス域に。一方、経営上の問題点の調査で最も多い回答は「人手不足」、「人件費の増加」の回答も増加した。今期予想は6・7ポイント改善の8・9。
建設業
業況判断D.I.は前回調調査比22・9ポイント改善の26・1。受注状況は堅調な建設需要を背景に主要取引先からの施工依頼数は安定的に推移。請負価格も資材価格・人件費の高騰分に対する価格転嫁が進んだため、収益D.I.は7期連続のプラス域で推移している。しかし依然として人手不足感は強く、受注の機会損失や工期の長期化、従業員の高齢化などの問題が常態化している。今期予想は3ポイント小幅悪化の23・1。
不動産業
業況判断D.I.は前回調査比9・2ポイント悪化の▲20・0。商品仕入状況については、在庫高D.I.が▲40・0と前回調査から7・6ポイント悪化し、苦慮する企業が多くみられている。背景には、土地造成費高騰による仕入コストの上昇と造成工事者の人手不足に伴う工事期間の長期化が挙げられる。商品販売状況は保有在庫の販売が進んだものの、低調な仕入状況を受け年明け以降の販売状況について不透明感が強まる。今期予想は横ばいの▲20・0。
■調査時期/2024年12月上旬
■調査地域/秦野市、伊勢原市、平塚市、厚木市、開成町
■調査企業数/340社
■回答企業数/325社
※D.I.値とは、ディフュージョン・インデックス(DiffusionIndex)の略で、「良い」「やや良い」と回答した企業の割合から、「悪い」「やや悪い」と回答した企業の割合を引いた値。値が小さいほど業況判断は悪いということを表す。