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広島交響楽団『平和の夕べ』がザ・シンフォニーホール(大阪)で8月開催 マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) インタビュー

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マリア・ジョアン・ピリス

ポルトガル出身のマリア・ジョアン・ピリスは、80歳となった現在、ますます深まりを増した演奏活動を続けている。アバド、ハイティンク、シャイーら巨匠指揮者たちから信頼され、世界の一流オーケストラと共演を重ね、ヴァイオリニストのデュメイとのデュオが一世を風靡した彼女が、被爆80周年にあたる2025年8月、広島交響楽団が広島、大阪、東京の3都市で開催する2025「平和の夕べ」コンサート“Music for Peace”に出演し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を弾く。指揮は広響音楽監督のクリスティアン・アルミンク。

――今回、広島交響楽団と共演されますね。

広島交響楽団とは初めての共演ですが、とても楽しみにしています。私が生まれた(注:1944年7月生まれ)すぐあとに、広島に原爆が落とされましたので、あの悲惨な出来事についてはとても強い思いがあります。その被爆80周年に広島交響楽団と共演できることを非常にうれしく思っています。

――ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を弾かれるのですね。

私にとって、最初に弾いたベートーヴェンのピアノ協奏曲が第4番でした。14歳のときでしたが、そのときのことはよく覚えています。まるで革命が起こったようでした。同時代の作品に「熱情」ソナタがありますが、抒情的なところが似ています。

私はベートーヴェンを弾くのが好きで、弾いているとベートーヴェンを近くに感じます。ベートーヴェンは勇気と抒情美とが交ざっています。正義のための闘いがあり、いかにもベートーヴェンらしいパストラール(田園牧歌)もあります。それらは、今、私たちに必要なことではないでしょうか。

――ピアノ協奏曲第4番の聴きどころを教えていただけますか?

曲を分析することはできますが、分析すると曲を切り崩してしまうことになります。私は、曲のアイデアを切り崩すのではなく、曲を全体としてとらえます。そのときだけ、アートの秘密が音楽を聖なるものとして存在させるのです。曲を完全な一つのものとするのが私の仕事です。それは結構たいへんなことなのです。

――ピリスさんは、2024年11月に第35回「高松宮殿下記念世界文化賞」(音楽部門)を受賞されましたね。おめでとうございます。

私と日本とは長い関係があります。もう半世紀以上です。1969年、初めて日本を訪れましたが、そのとき、良い意味で、とてもカルチャーショックを受けました。こんなものがあるのだろうかと驚く文化が日本にはありました。自由な時間に私は、劇場に行き、文楽を見ることができました。素晴らしいと思いました。そのとき、どうやってアートができるかの秘密がわかりました。言葉がわからないのに、わかったのです。そして毎日、文楽に通いました。それによって大きな影響を受けました。そのことが日本の印象として強く残っています。日本には、誰も教えてくれなかったアートの秘密がありました。誠実さなどです。そして私はアートとパフォーマンスは別のものだとわかり、私はずっと自分の人生で、パフォーマンスをアートに変えようとしてきたのです。

文=山田治生

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