軽い方がよく泳ぐと判明 カレイ目の魚16種のうち<遊泳コストが低い種類>は?
異体類(カレイ目の魚)は日本を含む中高緯度海域における重要な水産資源であり、生態系を構成する重要なグループでもあります。このグループは多くの種を含みますが、生態が不明な種も少なくありません。
また、異体類は浮袋(水中で浮き沈みし位置を調整するための器官)を持たないことから、水中での遊泳行動に体組織の比重が重要であると考えられている一方、体比重の計測や生態との関係は検討されていなかったといいます。
そんななか、北海道大学大学院水産科学研究院の研究グループは、北海道周辺に分布する異体類の体比重を計測して比較。体の比重が摂餌習性を反映することを解明しました。
この研究成果は魚類学の専門誌『Journal of Fish Biology』に掲載されています(論文タイトル:Relationship between body density and feeding habit among flatfishes)。
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16種の異体類を収集
異体類はアカガレイやオヒョウなどを含むグループで、重要な漁業資源であると同時に中高緯度海域において生態系を構成する要素でもあります。
本グループは浮袋を持たず、水中での浮上や沈降、遊泳行動などに体組織の比重が大きく影響すると考えられていましたが、その計測と生態と関わりは検討されていませんでした。
そこで、北海道大学大学院水産科学研究院の山村織生准教授らの研究グループは、北海道周辺に分布する異体類16種を収集。空中重量と水中重量を量り、体の比重を計算し、生態との関係性が検討されました。
食性で3つのグループに分類
この研究では、収集された異体類16種を摂餌習性により3つのグループに分けています。
主に「魚やイカ類を捕食する遊泳生物食者(アブラガレイとカラスガレイの2種)」、「ゴカイ類や二枚貝、小型甲殻類を捕食する底生生物食者(サメガレイやババガレイなど9種)」、「遊泳生物食者と底生生物食者の中間的な位置づけである混合食者(ウロコメガレイやソウハチなど5種)」の3つのグループに分けられました。
これらの異体類は空中重量と水中重量を量り、アルキメデスの原理(水中の物体はその物体が押しのけている水の質量が及ぼす重力と同じ大きさで上向きの浮力を受けるというもの)に基づき比重を計算。摂餌行動により分類した3つのグループ間で、比重の違いの比較が行われました。
カラスガレイは遊泳コストが低い
比較の結果、グループ別の比較では、アブラガレイとカラスガレイが該当する<遊泳生物食者>が圧倒的に低比重であることが判明。次いで混合食者、底生生物食者の順で比重が高くなったそうです。
種別にみると遊泳生物食者であるカラスガレイ(Reinhardtius hippoglossoides)が最も低い体比重(平均値 1.022 g cm-3)を示し、海水の比重を下回ったことから、遊泳に要するコストが低く、遊泳生物を捕食するのに有利であることが示唆されました。
一方、底生生物食者の高い体比重は海底で定位したり、砂泥中に潜って身を潜めたりするのに有利と考えられています。
異体類の生態・進化の解明
体比重の違いは、体組織中の脂質の含有量や組成と大きく関係していることから、異体類の生態や進化を考える上で重要な特徴だそうです。
また、今回の研究により、摂餌や遊泳に関する形態と異体類の生態や進化との関連性について研究の深化が期待されています。
今後の研究で異体類の謎がさらに解き明かされるかもしれませんね。
(サカナト編集部)