悪態をつく、たたく、拒絶...それは認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の影響も 大塚製薬、認知症を啓発
大塚製薬は2025年4月のニュースレターで「認知症による行動症状に関する調査」の結果を紹介し、認知症への啓発を行った。
調査は2024年9月13日~24日、インターネットを通じて実施。対象は、アルツハイマー型認知症と診断されている65歳以上の家族がいる40代以上の男女1174人。
認知症に伴うBPSDでの困りごと...「暴力的な行動」「徘徊する」「突然叫ぶ」
認知症の症状には、もの忘れに代表される「認知機能障害」が知られる。それに加えて、患者自身の心身の状態、周辺環境や人間関係などが影響し、「行動・心理症状(BPSD)」が生じることがある。BPSDには、悪態をつく、たたく、拒絶などの症状がある。本人だけでなく、家族や周囲の人の生活の質を著しく低下させる要因となりうるという。
調査では、アルツハイマー型認知症に伴うBPSDの各症状を選択肢として提示したうえで、同居する家族介護者が「各症状・行動について、困っている度合い」を聞いた。
その結果、「日常生活がこれ以上続けられないレベル」と「日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル」を合わせて85%と最多になったのが、「物を投げたり、たたく、壊したりと暴力的になる(なった)」だった。次いで、「徘徊をするようになる(なった)」82%、「突然叫ぶようになる(なった)」78%だった。
こうしたBPSDの症状が、家族介護者にとって、日常生活の中で大きな負担となっていることに、メモリーケアクリニック湘南・院長で、横浜市立大学医学部・臨床教授をつとめる内門大丈(うちかど・ひろたけ)氏は、「BPSDにどのような症状があるのかをあらかじめ知っておくことで、介護者は気持ちの準備ができ、身体的・精神的な負担を軽減できるかもしれません」と指摘する。
また、BPSDの各症状が、「『アルツハイマー型認知症に伴うもの』であると思うか」を聞くと、最多は、「何度も同じ質問を繰り返すようになる(なった)」で39%だった。
一方で、「徘徊するようになる」17%、「物を投げたり、たたく、壊したりと暴力的になる」10%、「突然叫ぶようになる」9%などは割合が低く、こうした症状について「アルツハイマー型認知症に伴うものであるかもしれない」という認識が低いことが見てとれた。内門氏はこう説明する。
「在宅医療の現場では、認知症の方が突然物を投げつけたり、大声で騒いだりすることは珍しくありません。私自身も、診療中に水をかけられた経験もありますが、これもBPSDの一例です。こうした症状を、単に『困った行動』と捉えるだけでなく、『認知症による症状かもしれない』と気付くことが大切です」
「『認知症の困りごと症状』に関して、当てはまる気持ち」について選択してもらったところ、「『認知症の困りごと症状』は、認知症と同様に悪化するしかない(改善可能性がない)ものと思っていた」が64%(※)、「『認知症の困りごと症状』は、年齢のせいだと思っていた」が55%(※)となるなど、この調査ではBPSDの各症状について改善する可能性について、ネガティブにとらえられていた。(※「非常に同意する」「同意する」「やや同意する」の合計)
こうした結果に、内門氏は次のようにアドバイスを送っている。
「介護者のケアや治療によって、認知症による症状や行動が改善できるケースもあります。認知症の方の気持ちに寄り添って対応をすることが基本ですが、BPSDがある場合、それが難しいこともあります。だからこそ、BPSDにはどのような症状があるのかを事前に知っておくこと、そして専門家の力も借りて対応していくことがとても大切です」