ジュビロ磐田J1残留へ“クラブ一丸”のラスト5。1戦必勝で臨むヴィッセル神戸戦は勝機をどこに見い出すか
【サッカージャーナリスト・河治良幸】ジュビロ磐田は勝ち点35の18位でJ1のラスト5を迎える。前節はアウエーでセレッソ大阪に2−1の勝利。2点リードから終盤に1点を返された磐田はセレッソにPKを与えてしまったが、守護神の川島永嗣がFWレオ・セアラのPKを見事にストップして、歓喜の勝利を引き寄せた。
横内昭展監督は「ある意味、神セーブみたいな。いろんなものがあいつの背中に乗り移ったというか。我々のサポーターが後ろにいて、目に見える形のあるものではないんだけど、そういう見えないものがあいつを突き動かしているものはあったかな」と語った。
プレーの感動を川島にそのまま伝えると「でもまだ終わってないですからね」と前置きして、こう話した。
「一番の薬は勝つことだと思いますし、こういう厳しい状況に置かれてる中でも一つの勝利が、自分たちのそういうパワーに繋がっていくと思う。引き分けで終えるか、勝ちで終えるかっていうのは自分たちにとって本当に大きな差になると思います。ただ、何かが終わってるわけでもないし、気を引き締め続けて、残りの試合をやりたい」
神戸の圧力に耐えた先には…
現在17位の柏レイソルが4試合を残して勝ち点39、16位のアルビレックス新潟は勝ち点40で、残り3試合となっている。5試合を残す磐田はアウエーの神戸戦を終えれば、ヤマハでのホーム3連戦(ガンバ大阪、横浜F・マリノス、FC東京)があり、最後はアウエーながらJ2降格が確定したサガン鳥栖が相手になる。横内監督は「ホームで3試合やれるのは僕らのアドバンテージ」と語るが、神戸で勝ち点を獲得してこそ、前向きにホーム3連戦を迎えることができるだろう。
J1連覇を目指す2位の神戸は間違いなく強敵であり、ホームの開幕戦で0-2と敗れた相手でもある。プレー強度、クオリティ、ゲームコントロールなど90分を通しても完敗だったが、何より立ち上がりにCKの流れから得点を与えてしまったことが、その後の試合を難しくしてしまった。前半に失点しないというのは横内監督が“残留争い”の中で大切にしているポイントだ。神戸戦も勝ち点3のほぼ絶対条件になってくるだろう。
横内監督は「開幕戦はCKを与えて、こぼれから決められて、後半も自分たちがボールを持っているところでロストして、1本のパスで失点に繋がった。入り方というのはどの試合でも大事ですけど、神戸に関してはより重要なポイント」と語る。
神戸は試合のファーストインパクトが強い。いきなりガンと来るところを耐えることができるかどうか。さらに一瞬の隙を与えないことも大事になってくる。
神戸は過密日程が続いている
逆に言えば、試合がイーブンのまま時間が経つほど、磐田の勝機が増える可能性もある。地力に勝ると見られる神戸だが、ホームで敗れた前節のFC東京戦からACLエリートのアウエー蔚山現代戦、天皇杯・準決勝の京都サンガ戦、そして磐田戦と過密日程が続いているからだ。
一方の磐田は中2週で、練習試合を交えながらコンディションと相手の対策を十分に整えて、神戸に乗り込むことができる。
神戸は一度リードしたら、試合をクローズするのが得意なチームではあるが、今シーズンのデータを見ると前後半の得点数はほぼ同じで、失点は前半に8、後半に26と大きく増える傾向がある。磐田は前半と後半の失点数があまり変わらない代わりに、得点は前半が11なのに比べて、後半は28と大幅に増えるのが特徴的だ。
ボランチの主力であるレオ・ゴメスを出場停止で欠くが、横内監督は「代わりに入っていく選手には、レオには無いストロングを生かしてあげたい」と前向きに語る。5枚の外国人枠に空きが出るため、一巡目の対戦ではベンチに入っていなかったサイドアタッカーのブルーノ・ジョゼを加えることが可能だ。
また夏に加入したジョルディ・クルークス、渡邉りょうと言った攻撃のタレント、そして最近はゲームチェンジャーとして重要な役割を果たす山田大記キャプテンの効果的なプレーをうまく活用できれば、神戸相手でもチャンスは出てくるだろう。
神戸戦だけにフォーカスを
神戸戦の後にホーム3連戦が来ることは磐田にとって大きな希望ではあるが、状況を考えても神戸戦は何としても勝ち点を持ち帰りたい。もちろん、それが3であれば良い流れで、8日後のガンバ大阪戦に臨むことができる。
「まず神戸があっての次だと思う。5戦と言いながらも、本当に一戦必勝というのが僕らに課されている。全てをかけて、勝ち点3を持って帰りたい」と山田。神戸に勝利することだけにフォーカスして、先のことは終わってからというスタンスで行くべきかもしれない。
山田は「僕は3度の降格を経験してますけど、それまでとは違った雰囲気で今やれてるし、それはサポーターもきっと感じてくれている。サポーターからもその雰囲気を感じるので。この厳しい状況ながらも、すごく良い雰囲気で、クラブ一丸となってやれてることをしっかり結果に繋げられるように」と語る。
川島もチームの結束力を磐田の最大の強みとして挙げたが、それが世間に証明されるのはここから5試合の結果しかない。
残留争いのライバルが最終的にどういう状況になっているかは分からないが、磐田としてはラスト5をトーナメントのように、1戦必勝で、1つ1つの試合にベストを尽くし、できる限り勝ち点を掴み取ることができるか。現場の監督スタッフや選手だけでなく、サポーターの後押しも合わせた“ジュビロ一丸”が問われてくる。