【医師監修】目・皮膚・夏風邪…夏に気を付けたい子どもの病気
真夏の暑さによる皮膚トラブルや熱中症。森や海、プールなど外出先で注意したい病気やケガ。夏に起こりがちな子どものトラブルについて、4人の専門医が解説。さらに、知っておきたいママ(女性)の体についても婦人科の先生にお話しいただきました。
【皮膚科医監修】あせも・虫刺され・水イボ…夏の皮膚トラブルから子どもを守るための予防とケア
板倉病院 皮膚科医 大久保佳子先生
日本皮膚科学会皮膚科専門医。患者に寄り添い、一人一人に合った治療を提案することを大切にしています。
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こまめに汗を拭いて「あせも(汗疹)」と「汗荒れ」を予防!保湿で皮膚のバリア機能も高める
夏はたくさんの汗をかきます。この汗が原因で起こるのが「あせも」や「汗荒れ」です。
汗疹は汗腺に汗が詰まって皮膚の外に出られず、その部分に炎症が起こるもの。汗荒れは、汗が皮膚の外に出た後に汗の成分(アンモニアや塩分など)が付着して肌の表面がかぶれてしまう状態のことを指します。
これらの予防には、汗をこまめに拭くことが一番です。ゴシゴシこすると皮膚のバリア機能を壊してしまうので、乾いた柔らかいタオルなどで優しく押さえるように拭きましょう。
帰宅したらシャワーを浴びて汗を洗い流し、その後はしっかり保湿を! 保湿は皮膚のバリア機能を高めてくれるのでとても大切です。
悪化しないためには、虫刺されは「かきむしらない」が最大の予防
「虫刺され」によるトラブルも夏には多く、蚊、蜂、毛虫だけでなく、公園の砂場などにいるネコノミにも注意が必要です。乳児の場合「遅延型」といって、刺された後の反応が遅かったり、初めて刺された時は反応が出ないこともあるため気を付けましょう。
虫に刺されてしまったら、かきむしらないように患部を冷やすなどしてかゆみを抑えてください。かきむしってとびひになってしまったら、ガーゼなどで患部を覆って触らないように注意し、他の場所や人にうつさないようにすることが大切です。
悪化すると全身に広がる可能性もあるので、早めに病院を受診してください。
子どもの肌はデリケート 悪くなるのも早く、治るのも早い
プールや脱衣所、体育館などでうつる水イボも裸足になることが多いこの時季に増えます。足の裏にできることが多いため見落とされがちですが、放置すると大きくなり治療も長引きますので、気を付けて見てあげてください。せっけんで足の裏を丁寧に洗うことが有効です。
最後に、子どもに多いといわれているコリン性蕁麻疹(じんましん)について。これは汗をかく時などに発汗を促す物質(アセチルコリン)の影響で、全身に小さなじんましんが出て、チクチクしたりかゆみを伴ったりしますが数時間で消えるのが特徴です。汗や体温上昇が原因なので、症状が出やすい状況を避けて予防しましょう。
また、夏は紫外線が強く、日焼けがやけどになる事もあるので、日焼け止めを塗りましょう。日焼け止めは、「紫外線散乱剤入り」「ノンケミカル」と書かれたものがお薦めです。初めて使う時は腕などに少量塗って、24時間ほど様子を見てから全身に使うのがいいですね。顔だけでなく、耳や首の後ろ、鼻なども忘れずに塗ってください。夏は紫外線がとても強いので、肌を守るためにも日焼け止め対策は重要です。
子どもの肌は大人よりデリケートで、悪くなるのも早いですが、治るのも早いという特徴があります。適切な治療を受けることで悪化を防ぐことができるので、少しでも違和感や変化を感じることがあれば病院に相談しましょう。
ポイント
・こまめに汗をふいて皮膚のトラブルを予防
・虫刺されは「かきむしらない」
・紫外線の強い夏は日焼け止めで肌をガード
大久保先生に教えてもらった、子どもの汗にまつわるおはなし
子どもの汗腺は2歳から3歳ごろまでに完成するため、この時期にあまり汗をかかないでいると汗腺が増えず、大人になってから体温調整がうまくいかなくなる可能性があります。ですので、適度に汗をかいて汗腺を増やしてあげることが将来のためにとても大切です。
ただし、0歳児など、まだ月齢が低い場合は、肌も未成熟で日焼け止めも3カ月ごろまでは塗れないので、無理に外に出て汗をかかせる必要はありません。
(取材・文/やま)
【小児科医監修】ヘルパンギーナ・手足口病・プール熱…子どもの「三大夏風邪」の特徴と予防
KENカルディオクリニック柏 院長 中村賢先生
外科医として21年のキャリアを持つ。心臓血管外科、循環器内科が専門。2023年にKENカルディオクリニックを開院し、多くの人の健康で充実した人生を支えるため尽力。生活習慣病の予防・管理にも力を入れている。
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夏に流行するウイルス性の感染症から子どもを守るためには?
ヘルパンギーナや手足口病、プール熱(咽頭結膜熱)は、梅雨ごろから夏にかけて流行する夏の三代感染症といわれています。しかし近年では、夏の時季に限らず1年を通してかかる病気に変わってきています。
ヘルパンギーナは喉に発疹が出るウイルス性の感染症です。喉の奥に、小さな水疱性の発疹がいくつもでき、高熱が出るのが特徴です。特効薬はないので、1週間ほど経過を見ながら自然に治るのを待ちます。手足口病もヘルパンギーナ同様のウイルス性の感染症で、手や足だけでなく腰や背中に発疹が現れます。プール熱はアデノウイルスが原因で起こり、喉、目に炎症を起こします。
予防としては手洗い、うがいはもちろんのこと、次亜塩素酸水で消毒することも有効です。また、睡眠の質を上げ、免疫力を上げることも効果的です。
良い睡眠を取るには、寝る2時間前までに、スマホやゲームなどに触れるのを止め、目や脳を休憩させましょう。そして室温は各部屋で差が出ないよう、一定を保つのが理想的です。気温差による血圧の変動がヒートショックのリスクを高めるので意識してみてください。
夏は熱中症に注意!親が知っておくべきこと
夏は熱中症にも注意が必要です。子どもが熱中症になると40度ほどの高熱が出ます。汗をかきやすいお子さんであれば熱をしっかりと放出できますが、汗をかきづらい場合は体内に熱がこもり、体温は上昇しやすくなります。
予防としては、暑さ対策をしっかり行い、発汗させて熱を放出させることが大切です。また、汗をかくと脱水に陥りやすいので、こまめに水分補給をしましょう。水やお茶もいいですが、経口補水液がおススメです。
子どもの場合、症状や体調をうまく伝えられない場合があるため、様子が少しでもおかしいと感じたら、迷わず病院を受診してください。熱中症を起こしているかどうか、お子さんの脈拍を測るのも一つの方法です。手のひらをお子さんの胸に当て、鼓動が速くなっていないか確認してみてください。
子どもの健康を守っていく上で、信頼できるドクターを見つけ、かかりつけ医を決めておくことはとても大切です。子どもの成長過程をドクターと共に見ていく、そんな点と点を結び、線で見ていくことが医療では重要だと考えます。
(取材・文/かちゆき)
ポイント
・夏の三大感染症は手洗い・うがい・消毒で予防
・熱中症かと思ったら迷わず病院を受診
・信頼できるドクターと共に子どもを見ていく
【眼科医監修】夏のはやり目「流行性角結膜炎」と目のニキビ「ものもらい」の症状と感染対策
めめ眼科船橋 院長 安田向壱先生
大学病院などで外来診療・手術診療を中心に研さんを積み、2024年5月に船橋に「めめ眼科船橋」開院。地域に根差し、高度医療を含めた適切な医療の提供を目指す。
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感染力が強い「流行性角結膜炎」は注意したい夏の目の病気
夏にはやる子どもの目の病気に「流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)」が挙げられます。これは主に、アデノウイルスが原因で発症する感染症の一つで、「はやり目」とも呼ばれます。
夏はプールなど水に入る機会も増えることから、接触感染するケースも多く見られます。罹患すると、目の充血や多量の目やに、炎症によるかゆみやゴロゴロとした痛みなどの症状が出ます。放っておくと重症化し眼球運動障害(眼球にまぶたがくっつきかさぶたになる)を起こす場合もあるので、早めに受診しましょう。
目やには黄色く、ベタっとしたジュクジュク状態になり、こすった手で触れると、人から人へどんどん感染するので注意が必要です。治療は主に抗生剤の入った目薬を使います。目やにや充血がなくなり見た目が良くなったとしても、ウイルスは残っているので、1週間ほどは目薬を続けてください。
予防としては、ウイルスに感染しないよう手洗いとうがいが効果的です。もし家族が感染してしまったら、別のタオルを使うなど、触った物を共有しないよう気をつけましょう。また、感染が広がらないようプールや水遊びは1週間ほど控えるようにしてください。
「ものもらい」は規則正しい生活と手や顔周りを清潔に保つことで予防を
目のニキビとも呼ばれている「ものもらい」にかかる子どももいますね。「ものもらい」はまつ毛の生え際にある脂腺が詰まったりして、細菌感染が生じることによって発症します。
まぶたの内側に腫れが起こる病気は、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と霰粒腫(さんりゅうしゅ)に分けられますが、ものもらいは麦粒腫に該当します。まぶたの一部が赤く腫れ、痛みやかゆみ、ゴロゴロするなどの症状が現れます。
風邪を引いたり体が疲れて免疫力が下がっているときにかかりやすいので、しっかり休息をとり、規則正しい生活を心掛けること。それから手を清潔に保つことも大切です。しこりが破れ内部にたまった膿が排出されると自然に回復に向かうケースもありますが、悪化すると改善まで時間がかかるので、腫れたり違和感を感じたら早めに眼科を受診してください。
また、コンタクトの使用や化粧残りで、ものもらいになる場合もあるので、保護者の皆さんも気をつけましょう。眼科では眼球チェックなどを行っていますので、目に関して気になることがあれば専門医に相談してください。
(取材・文/半藤智津江)
ポイント
・「流行性角結膜炎」は手洗いうがいで感染対策を
・罹患した人の触った物は触れない・共有しない
・免疫力を高め、手・顔周りを清潔に保ち「ものもらい」を予防
【婦人科医監修】女性特有の病気の予防と我慢しない生理のために
くぼのやウィメンズホスピタル 婦人科部長 黒瀬圭輔先生
日本医科大学産婦人科准教授を経て、2020年4月よりくぼのやウィメンズホスピタル婦人科部長に就任。産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医など多くの資格を持ち、婦人科内視鏡手術を専門としている。
くぼのやウィメンズホスピタルホームページ
適度な運動とバランスの良い食事、十分な睡眠で免疫力を高めて病気に負けない体づくりを
女性の病気で夏特有というのはありませんが、強いて言うならば、免疫の低下による細菌性腟炎や腟カンジタ症などの細菌感染が起こりやすくなることがあります。細菌性腟炎は、腟内細菌のバランスが崩れることで腟の自浄作用が低下し、特定の細菌が増殖することによって発症します。
腟カンジタ症は、カビの一種であるカンジタ菌による感染症です。いずれも外陰部や腟のかゆみ、おりものの量が増えるといった症状があります。適切な治療を受けることで早期に改善できますが、予防には生活習慣の見直しが必要です。
育児や家事、お仕事と、日々とても忙しいため、睡眠不足になる傾向があります。ストレスや疲労がたまると体の免疫力が落ち、症状が出やすくなりますので、睡眠をなるべく多めにとって休養しましょう。適度な運動とバランスの取れた食生活も大事です。
女性は生理があることで鉄分不足になりがちですし、出産後も鉄分が不足し貧血になりやすい状態なので、鉄分やたんぱく質を多く含む食材を積極的に摂取するようにしましょう。夏の食事は素麺など軽いもので済ませがちですが、鉄分・たんぱく質の摂取を疎かにすると、体がだるいなどの不調にもつながります。
元気いっぱいのお子さんとの今の時間を楽しむために、お母さん自身のケアも大切にしてください。貧血傾向があるかは、病院でチェックしてもらうこともできますので、気になる方は一度診てもらうといいと思います。
鎮痛剤や低用量ピル、ミレーナという選択でつらい生理をがまんしない
生理痛が重い方や出血量の多い方は、痛みを和らげる鎮痛剤や低用量ピル、避妊リング「ミレーナ」(一般名:レボノルゲストレルキット・子宮内黄体ホルモン放出システム)という選択肢もありますので、我慢せずに薬や病院を上手に頼っていくことも考えましょう。
低用量ピルは生理や排卵の周期をコントロールしている女性ホルモンが含まれたホルモン剤で、生理痛やPMS(月経前症候群)の改善に役立ちます。ミレーナは子宮内に装着するT字型の避妊具ですが、一度装着すると5年間、生理痛の改善や出血量の多い人に効果があります。
不調が長く続く場合は、他の病気が隠れていることもあるので受診をお勧めします。20歳以上の方の中には子宮頸がんが見つかることもあります。子宮頸がんは、子宮の入り口付近の子宮頸部にできるがんで、多くは性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となって発症します。
早期発見すれば治りやすいので、定期的ながん検診を必ず受けるようにしましょう。また子宮頸がんの予防にはワクチンが効果的で、小学6年生から高校1年生までの女性は公費(無料)での接種が可能です。
(取材・文/三浦綾子)
ポイント
・生活習慣を整えて体の免疫力を高める
・定期的な子宮がん検診などの婦人科検診を受け体のチェックを
・つらい時は我慢せずに薬や病院を頼る