人手不足も規模が小さい企業への転職は低調、賃上げにつながる可能性 2024年の労働経済白書
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厚生労働省は9月6日、2024年の労働経済の分析(労働経済白書)を公表した。雇用情勢について、人手不足感は新型コロナウイルス感染症の拡大前よりも強まっているとし、今後の見通しは人口減少局面も踏まえ、「過去の局面よりも『長期かつ粘着的』に続く可能性がある」と指摘した。
深刻な宿泊・飲食・介護の人手不足、「職員の負担軽減など離職率低下に向けた取り組みを」
労働経済白書では、現在の雇用情勢について「求人が底堅く推移する中で、改善の動きがみられる」とし、正規雇用労働者は「女性を中心に9年連続で増加しており、非正規雇用労働者は長期的に男女ともに増加傾向にある」と分析している。
一方、人手不足だと感じる企業は宿泊・飲食サービス業などで拡大していると指摘。企業が必要とする労働力と、日本の潜在的な労働供給力の差を時間単位で分析したところ、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉などの分野で深刻な人手不足が起きていると説明した。
厚生労働省は、小売・サービス分野や介護分野では「人手不足緩和に向けた離職率の低下を目指す取り組みが重要」としており、具体的には、賃金や労働時間の改善だけではなく、職員の負担を軽減する機器の導入や相談体制や研修、給与制度の整備といった労働環境・労働条件の改善を呼び掛けている。
国内企業の賃上げ、人手不足きっかけに 米国では生産性向上が賃金に影響
労働経済白書では、日本と米国、英国、ドイツの4か国を対象に、2001年から2022年にかけて企業の人手不足感を示す欠員率と賃金上昇率の関係を調べた。
欠員率が1%上がったときの賃金上昇率はドイツが1.87%、英国が1.55%、日本が1.54%だったのに対し、米国は0.45%にとどまった。日本は米国と比べて、人手不足が賃金の引き上げをもたらす効果が大きく、厚生労働省は今後、人手不足が「賃金の上昇につながっていく可能性がある」と分析している。
米国では、賃金上昇は人手不足よりも、企業の生産性向上に影響を受けていた。2001年から2022年に生産性が1%上昇した際の賃上げ率は米国が0.78%と最も高く、英国0.49%、日本0.44%と続き、最も低かったのはドイツの0.3%だった。
人手不足、中小企業から大企業への転職を加速
労働経済白書では、人手不足が中小企業から大企業への労働移動を促進させていることも明確になった。1000人以上規模企業からの転職は、同じ規模の企業への転職率は上昇しており、大企業間の転職は活発になっている。一方で、100人から999人や5人から99人規模の中小企業への転職率は1%程度まで低下した。
100人から999人規模の企業では、1000人以上規模や100人から999人規模の企業への転職率が2000年代と比べて上昇傾向にあり、前職以上に大きい規模の企業への転職が進んでいることが確認できた。
5人から99人規模の企業では、一貫して同規模の企業への転職率が高いが、長期的に低下傾向にある一方、1000人以上規模企業への転職率は上昇傾向にあった。
厚生労働省は、「2000年代と比べ、前職以上の規模の企業への転職は活発になる一方で、規模が小さい企業への転職は低調となっている。相対的に賃金などの労働条件が良く、福利厚生なども充実している大企業への労働移動が進んでいることがうかがえる」とコメントしている。
労働経済白書の詳細はこちらで確認できる。