日本一のイトーヨーカドー~ 小説家・清水晴木「晴れ、ときどき懐う(おもう)」
千葉県習志野市出身、在住の小説家・清水晴木さん。累計4万部突破の『さよならの向う側』シリーズなど多数の執筆した小説の数々は千葉を舞台にしています。そんな清水晴木さんが著作と絡めて千葉の思い出をつづります。
清水晴木さん
1988年生まれ。東洋大学社会学部卒。2011年函館イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。2021年出版の『さよならの向う側』はテレビドラマ化して放送。『分岐駅まほろし』『旅立ちの日に』『17歳のビオトープ』など著作多数。
日本一のイトーヨーカドー
津田沼を舞台にした小説『17歳のビオトープ』が、BSフジでVOICEアクトとして放送され、高円寺で初の舞台化となった。
しかしそんな小説の舞台にもした街、津田沼の象徴ともいえる商業施設がまた1つなくなってしまった。
イトーヨーカドーだ。
津田沼一帯はその昔、駅前にパルコ、イトーヨーカドー、ダイエー、丸井、高島屋、長崎屋、西友が同時に立地していて「津田沼戦争」といわれるほどの商業施設の激戦区だった。
その中でも津田沼のイトーヨーカドーは、全国のイトーヨーカドーの中で日本一の売り上げを誇っていた時代もあった。
私が少年時代に当時流行っていたドラクエのバトル鉛筆やポケモンカードなどを自転車をこいで買いに走ったのも、そんな最盛期の頃だったと思う。
あの頃は確かに店内は多くのお客さんが行き交っていた。
しかしそんな私の少年時代と比べると、ここ最近は人足が少なくなっていると感じざるを得なかった。
営業最終日、お世話になった施設内の書店に挨拶に伺った。
あたりはどこを見渡しても人であふれていた。
誰もが名残惜しさと懐かしさを胸に抱えているようだった。
遅すぎたのかもしれないが、最後の最後でこの津田沼のイトーヨーカドーに蘇ったのは、あの日の日本一のイトーヨーカドーといわれた時の姿のように思えた。
多くの人に愛されて、たくさんの思い出が閉じ込められた場所だから、きっとみんな、そんな感謝の気持ちを伝えたくて訪れたはずだ。
お疲れさま、イトーヨーカドー。
46年間、津田沼にいてくれて本当にありがとうございました。