空から見るニッポン。ただいま、渥美半島伊良湖岬の上空です!
豊橋から西へ延びる渥美半島は、名古屋の南にある知多半島と一緒に三河湾を形作っている。渥美半島の先端が伊良湖(いらご)岬。ここから三重県の鳥羽までは20㎞ほどで、フェリーで約1時間。東京から鳥羽・伊勢志摩へは、現在は伊勢湾岸道路が便利だが、以前は渥美半島を横断してフェリーで鳥羽に渡るルートが早かった。鳥羽〜伊良湖間にある神島は、三島由紀夫の『潮騒』の舞台としても知られる。
渥美半島と志摩半島の間を行き来する漁船の群れ
以前、渥美半島の付け根あたりに位置する豊橋市の海岸線を飛んで空撮をしたことがあった。そのときには半島の先っぽにあたる伊良湖岬は見えず、いつかその空を飛んでみたいと考えていた。
仕事で関西のほうに行く機会があり、その帰りに寄ってみることにした。伊良湖岬には、一般の方でも飛行体験のできるモーターパラグライダータンデムエリアがある。その場所を借りて空撮することにした。離陸して高度を上げ、いったん沖のほうに出てから岬先端を目指す。
万が一、エンジンが止まってしまった場合に海上に落ちてしまうと危険なため、常に風の向きと強さを確認し、エンジンが停止しても陸に戻れる位置を確保しながら飛行する。
先端付近まで行き振り返ると、岬全体を見渡すことができた。この高度では渥美半島全体を見渡すことはできなかったが、それでも半島が豊橋のほうからこちらへ延びている光景はかなりのスケール感だ。
逆方向からは南西方向に志摩半島が見える。志摩半島との間には神島があり、簡単に飛んでいけそうな距離だった。神島は“神が宿る島”と呼ばれており、日が傾いて逆光でシルエットになった島姿が神々しい。
伊勢湾、三河湾への入口となる伊良湖水道では大小数々の船舶が往来する。空撮をしているときも多数の漁船が集団で移動していて、三重県鳥羽のほうから伊良湖港へ向かうフェリーも見える。
半島に囲まれ、島々が点在する眺め。そこに暮らす人々の生活の息づかいを空からも感じることができた。
迫力の動画はこちら!
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2023年12月号より
山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。