【吉野北人(THE RAMPAGE)】「俺、これでいいのかな?」迷いを乗り越え演じた主演――映画『遺書、公開。』ロングインタビュー
吉野北人(THE RAMPAGE)さんが主演を務める映画『遺書、公開。』が、1月31日(金)より全国公開となります。
【吉野北人(THE RAMPAGE)】映画『遺書、公開。』インタビュー&場面写真
「序列1位の姫山椿が学内で自殺した」――そんな衝撃的な出来事から始まる本作。高校2年生の新学期に突如送られてきた謎の序列で1位だった姫山(堀未央奈)が自殺し、姫山の名前が記された“遺書”がクラスメイトと担任、一人ひとりに届けられます。その内容が公開される中で、これまで知られていなかったさまざまな事実が暴かれていくという物語です。
吉野さんが演じたのは、序列19位の池永柊夜。良くも悪くもあまり特徴がなく、存在感の薄い生徒ですが、実は……という一面もある人物です。ただ、生徒たちはそれぞれに、実は……という顔を持っていて、その中で“主演”という立場を表現することは難しかったと振り返ります。
吉野さんはどのように本作と向き合ったのか。生徒役の共演者の方々とのエピソードや、THE RAMPAGEが担当する主題歌「Drown Out The Noise」制作の裏話なども含めて、お話をお聞きしました。
主人公なのに控えめ
――池永にはどんな印象を持っていましたか。
原作も読ませていただいたのですが、池永は普段はあまり目立つほうではなく、前に出るようなタイプではないんですけど、誰かのためになら「それは違う」と言える、優しくて、正義感が強い人だと感じました。
自分と池永は似ている部分が多いなと思っていて、僕も普段はあまり前に出るタイプではないですし、物事を外側から見ている感じも一緒だなと。
けど、一応、九州男児(宮崎県出身)として(笑)、やるときはやるというか。普段は控えているんだけど、そこに垣間見られる強さみたいなものは共通してあるのかなと思います。だから、池永を演じていて違和感はなかったですし、すんなり受け入れることができました。
――ご自身も言うべきときは、はっきり言うタイプだと?
わがままではないですけど、「これは違うんじゃない?」と思うことは、相手がどんな人であれ言います。そういうもどかしさを抱えたままなのは嫌なので。正義感はあるほうかもしれないです。
――池永を演じる際に意識していたことは?
池永は、作品としては主演というポジションですけど、クラス内の序列では(全26人中)19位という絶妙な順位なんです。しかも、目立つような立場でもないし、常に出てくるようなキャラクターでもないから、正直、そんなに主演ということは気にしていませんでした。
監督が生徒一人ひとりの個性も作ってくれていて。例えば、誰かが遺書を読んでいたら、読んでいる人だけでなく、それを聞いている周りの生徒たちにも、「こういう時は、こういう反応をするよね」とか、それぞれに助言をしてくださいました。それですごくやりやすくなりましたし、そのおかげで、個々のキャラクターがより明確になったと思います。
他のキャラクターがすごく感情を出して、自由にやっているので、僕も何かやりたくなるんですけど、池永は控えめだからやれることも限られていて、それが逆に不安になることもありました。
「俺、これでいいのかな?」「もっと感情を出したほうがいいんじゃないか」とか。思うところはありましたけど、「でも、これがいいんだ」と言い聞かせて演じました。そこは難しいところでした。周りとの差がかなりあったので、その迷いはありましたね。
――主人公なのに控えめという。
絶妙なんですよね。「主人公だしな」「でも、控えめだしな」って。何か残したい、伝えたいとは思いつつ、それが自由にできないんです。その分、表情とかで見せられるようにはしました。
――外見からもアーティストのときの吉野さんとは違って、柔らくて幼い雰囲気も感じたのですが、その点で意識したこともあるのでしょうか。
もともと監督と自然体というか、ナチュラルな感じにしたいという話をしていて。だから、髪もほとんどセットしていないし、メイクも最低限にしていたので、それがそういう風に受け取ってもらえたなら良かったです。
プレッシャーや不安を感じることもありました。
――監督から言われたことは?
池永についてはわりと僕に任せてくださっていて、「それでいいよ」と言われることが多かったと思います。
ただ、撮影中、監督が毎朝メイク室に来てくださって。「今日、どう?」みたいなところから始まるんです。「今日は遺書を読む日ですね」とかって話して、「こういう感じでやろうかと思っています」ということを、現場に入る前に確認してくださるので、「これでいいんだ」というものを持った状態で現場にいれたのがすごく良かったです。緊張感のある現場でしたけど、監督のおかげでいい雰囲気の中で演じられました。
――任されていたのは、監督から信頼されていたということだと思うのですが。
監督の僕に対する最初のイメージがアーティストで、当時、金髪にしていたし、池永のイメージとは全く合わないんじゃないかと思われていたと思うんです。ステージに立っている僕しか知らなかったと思うから、「(池永は)地味だけどできるのか?」みたいな。でも、本読みのときに黒髪にして行ったら、少し安心されたような顔をしていました(笑)。
――本作はたくさんの出演者たち中でお芝居をするという形だったと思いますが、そういう時、全体のバランスなど、意識することはありましたか。
自分の中で、「この人はこう来るだろうな」とか、イメージをすることはありました。でも、実際は全然、違ったりもして。「あっ、そういう感じか」って思って、みんなの出方を見ながら、現場で考えて対応することのほうが多かった気がします。
池永は自分から仕掛けるみたい部分は少ないので、そこは難しくなかったんですけど、逆に、自分が話していないときに、周りの人たちに対するリアクションを取るところは意外と難しくて。
台本には基本的にセリフや動きのある人のことしか書いていないので、リアクションの部分は監督も含めて、みんながそれぞれに考えながら作っていきました。「〇〇だったらこうするよね」とか、「もしかしたら、〇〇だったら何もしないかも」とか。そういうのを一人ひとり、監督が確認していってくださるので、それを受けて、その場で考えていきました。
――端的に言うと、人間の表と裏を描く物語だと思うのですが、この内容についてはどう感じていましたか。
言葉を選ばないと難しいんですけど、楽しいという意味ではない、面白さを感じたというか。ただ、自分はそれを演じるという立場でもあったので、そこはすごく大変だろうなと思いました。今回、座長という立場でもあったので、プレッシャーや不安を感じることもありました。
けど、監督と話したり、あとは現場の雰囲気とか、教室のセットとか、作り込もうとしなくても自然とこの世界に入れる空気感があったので、それに助けられました。周りの皆さんの迫真の演技にも引き込まれて、「自分もちゃんとしなきゃ」とも、思わされましたし。
でもやっぱり、監督が積極的にコミュニケーションを取ってくださったことは大きかったと思います。
――周りの皆さんの演技に引っ張られることもあったのですね。
それはかなり大きかったです。自分より全然、年齢が下の人たちもいて、それなのに「こんなお芝居をするんだ」というような、僕には到底できないようなリアルなお芝居を感じられたのは、すごく刺激的でしたし、学びもたくさんありました。
松井奏をお寿司に連れて行った
――本作は学園ものではありますが、みんなで仲良く、楽しくみたいなお話ではないですよね。
物語が後半になればなるほど、どんよりしていきます。撮影している教室も薄暗いので、気持ちもどんどん沈んでくるんです。クライマックスに向けて緊張感も増していきましたし、集中していく感覚がありました。
普通の現場だと、最初は緊張があるけど、段々慣れていって、ワイワイするようになってっていう流れですけど、今回は真逆でした。
――撮影の合間とかはどんな雰囲気なのですか。
僕も今回は結構させてもらったんですけど(笑)、(共演者同士で)差し入れを囲みながら、コーヒーを飲んでおしゃべりするとかはしていました。
一通り、クラスメイトのみんなとは話しましたけど、特に(廿日市くるみ役)志田(彩良)さんとは一緒のシーンも多かったので、いろんな話をさせていただきました。
僕の中で、志田さんは(優等生の小杉麻里役を演じた)『ドラコン桜』(2021年放送)のイメージもあって、正統派というか、真面目な印象だったんですけど、実際は陽な感じで、よく笑うし、ユーモアもあるし、すごくギャップを感じて驚きました。
本当の同級生みたいな感じに、(教室内での)座席も前と後ろだから、カットがかかると「ふ~」って2人でため息をついて、「空気、重たいね~(笑)」とかって話していました。
(御門凛奈役)髙石あかりさんとは同じ宮崎県出身ということもあって、共通点もあって。(宮崎名物の)チキン南蛮の話とかをしました(笑)。
(宮世)琉弥(千蔭清一役)は、僕と一緒でアーティスト活動もしているし、俳優としてもたくさんの作品に出演しているので、他の現場の話を聞いたりもしました。今回、僕は一応、座長という立場だったので(照笑)、他の座長はどういう感じなのかとかも教えてもらいました。
――ちょっと軽い質問もしたいのですが、2年D組の中で、吉野さんが序列1位になれるとしたら、どんなことでしょうか。
なんだろう……この中だったら、一番、美味しいお店をたくさん知っていると思います。若い子が多いので(笑)。実際に、(松井)奏(赤﨑理人役)をお寿司に連れて行ったりもしました。そしたら、すごく感動してくれて、それからハマって一人でも行ったらしくて、そのことを連絡してきてくれました。それはうれしかったですね。人に何かを教えてあげられるっていうのはいいですよね。
物語の流れがすごくいいし、見えない部分が次々と出てくる
――完成作を観たときの感想は?
めっちゃ面白かったです。池永もいい意味で目立ってなくて、「地味だな。ちゃんとできたな」って思いました(笑)。最初に見たときはやっぱり客観的には見られなくて、自分の芝居を重点的に見てしまったんですけど、それでも作品としてすごく面白いと感じられて。
物語の流れがすごくいいし、見えない部分が次々と出てくるのも面白いし。「この人、まだ何かを隠しているんじゃないか?」とか、「この人からは何が出てくるんだろう?」とか、先が読めない感じが面白かったです。
もちろん僕は原作も台本も読んでいるので、話の内容は知ってはいるんですけど、実際に映像として観たときに、知っていてもハラハラさせられました。「こんな表情をしていたんだ」とか、見えていない部分もあったし、やっぱり、実際に人が演じているものだと感じ方が変わりました。
――本作の主題歌THE RAMPAGE「Drown Out The Noise」は、いくつかの候補曲の中から吉野さんが選んだそうですが、選曲のポイントは何でしたか。
最初は、物語の雰囲気的にホラー系というか、もう少しどんよりと暗い感じの楽曲も考えていたんですけど、途中から「いや、これはぶった切るほうがいいな」と思ったんです。感情の起伏がすごくある物語だと思うので、ロックの強いサウンドと、ボーカルの強さがあるこの曲が合うんじゃないかと。
あとは、エンドロールで流れることも考えて、あの終わり方からこの曲が来る感じがイメージ出来たんです。実際に完成作を観たときも、いい意味でぶった切っていていいなと思いました。
――個人的な感想ですが、エンドロールで聴いたとき、ここからまた物語が始まっていくような感覚にもなりました。
まさしくそのイメージはありました。どんよりした曲だったとしたら、なんかモヤモヤした気持ちになってしまうんじゃないかと。だったら、ドカーンと派手に、強いもので攻めたいと思ったんです。だから、「ロック調のサウンドにしたいです」というのは言っていました。
――歌詞も“序列”という言葉が入っていたり、映画とリンクする部分があるのですが、吉野さんからの意見も反映されているのでしょうか。
歌詞も見させていただいて、「ちょっとここは違和感があるかもしれないです」とか、修整をお願いした部分もあります。この曲は結構、制作の段階からいろいろと携わらせてもらいました。
――メンバーの反応はどうでしたか。
メンバーはまだ映画を観れていないんですけど(取材時)、曲に対しては「めっちゃカッコいい」って言っていました。いい楽曲になったと思います!
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吉野さんもインタビューで話していましたが、とにかく、先が読めない展開の連続で、最後の最後まで「えっ?」と声が出そうになる映画となっています。クラスの全員に、いい意味でも、悪い意味でも、表と裏の顔があり、その中で「なぜ、姫山椿は自殺しなければならなかったのか」という疑問が説かれていくのですが……「Drown Out The Noise」が流れるエンドロールも含めて、映画館で楽しんでみてください。
ヘアメイク/大木利保[CONTINUE] スタイリスト/吉田ケイスケ
作品紹介
映画『遺書、公開。』
2025年1月31日(金)より全国公開
(Medery./瀧本 幸恵)