Yahoo! JAPAN

佐々木尽が約5年半ぶり判定勝ち、日本初の世界ウェルター級王者へ期待と課題

SPAIA

左ボディーブローを放つ佐々木尽,ⒸLemino/SECOND CAREER

ベテラン坂井祥紀に判定勝利

プロボクシングの東洋太平洋・WBOアジアパシフィックウェルター級2冠王者・佐々木尽(23=八王子中屋)が24日、東京・有明アリーナで坂井祥紀(34=横浜光)に判定勝ちし、防衛を果たした。

佐々木はWBAとWBCで4位、IBFとWBOで3位と4団体とも上位にランクされており、世界初挑戦を狙う日本重量級のホープ。坂井は元日本ウェルター級王者で、海外での試合経験も豊富なベテランだ。パワーでのし上がってきたハードパンチャーが、46戦で一度もKO負けのない試合巧者を相手にどんな戦いを見せるか、試金石の一戦だった。

試合は佐々木が左ボディーを何度もヒットさせるなど攻勢を強めたが、坂井もディフェンスを固めながら細かいパンチで応戦。ダウンシーンのないまま12回終了のゴングを聞き、3-0(116-112、117-111、118-110)で佐々木の手が上がった。

佐々木は4回戦時代の2019年8月以来、約5年半ぶりの判定勝利。戦績を19勝(17KO)1敗1分けに伸ばし、試合後は「待ってろ世界!」と世界挑戦をアピールした。

世界挑戦すら難しいウェルター級

リミット147ポンド(66.68キロ)のウェルター級は、ミドル級以下で唯一、日本から世界王者が誕生していない難攻不落の階級だ。シュガー・レイ・レナードやフロイド・メイウェザーらボクシングの本場、アメリカ・ラスベガスでビッグファイトを繰り広げたウェルター級のスーパースターは数多く、日本選手にとって王座獲得はおろか、挑戦すら難しい。

現在の世界王者はWBAがエイマンタス・スタニオニス(リトアニア)、WBCがマリオ・バリオス(アメリカ)、IBFがジャロン・エニス(アメリカ)、WBOがブライアン・ノーマン・ジュニア(アメリカ)と猛者揃い。戦績だけで判断はできないが、4人中3人は無敗で、4人の戦績を合計すると103勝(76KO)2敗1分け4無効試合と、とんでもない数字になる。

昨年までは41戦全勝(31KO)を誇る4団体統一王者テレンス・クロフォード(アメリカ)が君臨していたいたため、つけ入る隙すらなかったが、4本のベルトを返上して1階級上のスーパーウェルター級に転向。4団体それぞれ別の王者が就いたため、佐々木にとっても一時よりは狙いやすい状況になっている。

磨きたいディフェンス技術と左ジャブ

とはいえ、佐々木の王座獲得への道が険しいことに変わりはない。パワーは世界レベルだが、力に頼りすぎるため回転力に乏しく、単発でクリーンヒットしてもノックアウトするのは難しい。坂井戦もそうだったが、上に行けば行くほど、速いジャブと様々なコンビネーションの習得は必須だ。

しかも、元々2階級下のライト級だったこともあり、身長174センチとウェルター級にしては高くない。現王者のスタニオニスは173センチ、バリオスは183センチ、エニスは178センチ、ノーマンは173センチと、佐々木と同等か長身の選手ばかり。体格的にハンデを背負うことはあっても、有利になることはない。

ただ、それでもなお、佐々木への期待が高いのは、一打必倒のパワーに無限の可能性を感じるからだ。ボクシングで不利の予想を覆してKO勝ちした例は枚挙にいとまがない。一発当たれば…というほのかな期待を抱かせることこそ、佐々木の最大の魅力でもある。

まずは世界挑戦が決まるまで、技術を磨くことが最優先。良いところを伸ばそうと指導することがあるが、今の佐々木の場合は逆だろう。すでにパワーは世界レベルにあるのだから、確かなディフェンス技術と左ジャブを磨き、コンビネーションのバリエーションを増やしてボクサーとしての実力を底上げすることが重要だ。

日本人未踏の頂は果てしなく高い。単に世界王者になるだけなら1階級落としてスーパーライト級で勝負する手もあるが、佐々木はウェルター級にこだわる。日本で誰も見たことがない景色を見るために。

【関連記事】
・これまでと戦い方を変えた井上尚弥の高いボクシングIQ、データで判明した「作業」の正体
・ボクシング世界ウェルター級王座に挑んだ日本人選手たち、未踏の頂を狙う佐々木尽
・ボクシング階級別世界王者一覧、日本選手未踏の階級は?

記事:SPAIA編集部

【関連記事】

おすすめの記事