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山の上にある棚田で無農薬米を栽培する「米与米穀店」のポンテフィッソさん。

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山の上にある棚田で無農薬米を栽培する「米与米穀店」のポンテフィッソさん。

あちこちの田んぼで、黄金色に実った稲を収穫する様子を見かけます。新米を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。今回紹介するアンドレア・ポンテフィッソさんは、奥さんの実家がある栃尾で生活し、家業の「米与米穀店(こめよべいこくてん)」を手伝いながら、山の上の棚田で無農薬米を栽培しています。今回はアンドレアさんが受け継いだ棚田を眺めながら、奥さんにも通訳をしていただきつつ取材をしてきました。

米与米穀店

アンドレア ポンテフィッソ Andrea Pontefisso

1991年イタリア生まれ。イタリア時代はブランド服の裁断に従事。2017年にオーストラリアで奥さんと出会い、2022年に来日し栃尾で「米与米穀店」を営む奥さんの実家で暮らしはじめる。今年から多田克典さんの棚田で無農薬農業を手伝いはじめるが、多田さんの急逝により棚田を受け継ぐことになる。尺八や蕎麦打ちなど日本文化を勉強中。

結婚を機に栃尾で暮らしはじめたイタリア人。

——今日はよろしくお願いいたします。なんだかお忙しそうですね。

アンドレアさん:お待たせしてすみませんでした。今日は午後から尺八のレッスンに行っていたんです。他にも蕎麦打ちや神楽、ほら貝も教えてもらっています。

——ほら貝(笑)。日本人でも吹ける人はなかなかいないですよ。アンドレアさんはどこの国から来られたんでしたっけ?

アンドレアさん:イタリアのビチェンツァというところです。

——古い町並みが美しいところですよね。栃尾で暮らしはじめたのは、どうしてなんですか?

アンドレアさん:奥さんとの結婚を機に栃尾で暮らすことになりました。奥さんとは、ワーキングホリデーで訪れていたオーストラリアで出会ったんです。

——そうだったんですね。

アンドレアさん:でも新型コロナウィルス感染症のパンデミックが起こってしまい、入国規制で会うことができなくなってしまったんです。3年ほど遠距離恋愛の期間が続きましたね。その後もしばらくは家族以外の入国が禁止されていたので、書類上で籍を入れることでようやく日本に来ることができたんです。

——なかなか大変だったんですね。栃尾に来てみて、どんな印象を持ちましたか?

アンドレアさん:僕は自然豊かな田舎で暮らしたいと思っていたので、はじめて来たときから栃尾をとても気に入りました。奥さんの実家が東京だったら、日本で暮らしていなかったかもしれません。

——そんなに気に入ったんですね。

アンドレアさん:でも来日した年の冬に、1日で1メートル30センチも雪が積もったのには驚きました。その日は奥さんと温泉にいたんですけど、外に出たら車が雪に埋もれていたんです(笑)。

突然亡くなった師匠の意思を受け継ぐ。

——お米の無農薬栽培に取り組んでいるそうですね。

アンドレアさん:奥さんの実家が「米与米穀店」という老舗のお米屋さんだから、自分の育てたお米を店で売りたいと思ったんです。イタリアにいた頃からオーガニックには興味があったので、山の上の棚田で無農薬栽培米を作っている多田克典さんに弟子入りして、農業を教わることになりました。

——多田克典さんっていうのは、どんな方なんですか?

アンドレアさん:30年前から合鴨を使ってお米の無農薬栽培をしてきた方です。最初は普通の何十倍も手間がかかる米作りをやる多田さんに周りの方はびっくりしていたそうですが、頑なに自分の信念を貫いてきたんですよ。何事にも手を抜かない人で昼夜を問わず仕事をしていました。

——合鴨が農薬の代わりに雑草や害虫を食べてくれるんですね。

アンドレアさん:そうなんです。あと合鴨が泳ぐことで水中の土が撹拌されて雑草が生えにくくなるし、糞はそのまま有機肥料になるんです。ただ自然界ではキツネやタヌキ、イタチ、カラスといった天敵も多くて、今年15羽残っていて昨年はゼロでした。野生動物と仲良く共存ができたらどれだけ幸せかと思います。

——それにしても、多田さんはちょっと働き過ぎなんじゃないでしょうか……。

アンドレアさん:じつは今年の7月7日に亡くなってしまったんです。

——それはお気の毒でした……。多田さんの棚田はどうなるんでしょうか?

アンドレアさん:多田さんの娘さん達や棚田グループの方々と話し合って、僕が受け継ぐことになりました。娘さん達の話によると、多田さんに何かあったらすべてを自分の意思を継ぐ人に譲るという段取りになっていたのだそうです。家族や近所の方々も応援してくれますし、棚田グループの先輩方に教わりながら挑戦してみようと思います。

——ひとりでやるのは心細いですよね。

アンドレアさん:そうなんです。ですから、これからの農業を背負っていける若い方々とチームを組んで、無農薬農業に取り組んでいきたいんですよ。無農薬農業に対する興味とやる気があれば誰でも大歓迎です。あとオーガニックの専門家からのアドバイスもお待ちしています。インスタグラムのDMからご連絡ください。

師匠の意思を受け継ぎ、無農薬栽培に挑戦していきたい。

——それにしても綺麗な田んぼですね。これから刈り入れで大忙しじゃないですか。

アンドレアさん:9月末から刈り入れをはじめる予定です。多田さんが作った最後のお米なので、有機米だけ集めたコンテストに応募してみようと思っているんです。あと11月初めから「米与米穀店」で、無農薬栽培で獲れた新米のイベントを開催する予定もあります。無農薬農業や多田さんについて知っていただけるようなイベントにしたいです。

——それは楽しみですね。

アンドレアさん:また、9月21日から23日までの3日間は「米与米穀店」で毎年開催している「新米祭り」も予定しています。新米の販売はもちろん、米粉スイーツの販売や稲藁を使った鍋敷き作りのワークショップをお楽しみいただけます。

——「実りの秋」だけあって、いろいろな予定があるんですね。

アンドレアさん:それから来年の1月に、無農薬米の麹で作った味噌や甘酒を販売する新店舗をオープン予定なんです。家族の意見がまとまらないので、店名はまだ決まっていません(笑)

——お店がオープンしたらまた取材させてください(笑)。最後に読んでいる方に伝えたいことがあったらお願いします。

アンドレアさん:無農薬米の伝統を受け継ぐことができて光栄に思っています。師匠の思いを無駄にしないためにも頑張って挑戦していきたいです。

米与米穀店

長岡市栃尾表町9-1

0120-388-455

10:00-17:00

日曜祝日休

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