【静岡県立美術館の収蔵品展「異国への眼差し」】 伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」 美術館随一のスター「降臨」
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区の静岡県立美術館で開かれている「石崎光瑤展」に関連させた収蔵品展第1部「異国への眼差し」を題材に。
1月4日スタートのコレクション展に24日から伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」が出品されている。明治後期から昭和前期にかけて京都を拠点に活躍した日本画家石崎光瑤(1884~1947年)の生誕140年を記念した展覧会に合わせた「関連展示」。早くから若冲の作品を紹介し、自ら模写した光瑤の画業への理解を補完する内容は、とてもタイムリーだと感じた。
「異国への眼差し」と題された収蔵品展前期は、光瑤がインドへの旅行で見たもの、感じたことを自作に生かしたことを踏まえ、海外からの影響が感じられる日本の絵画を集めている。「樹花鳥獣図屏風」はその目玉と言えるだろう。同館随一のスター降臨、といった趣だ。
光瑤の作品を見終えた後に「樹花鳥獣図屏風」を眺めると、鳳凰を中心に鶏やクジャクなどが配された「鳥づくし」の左隻に目が行く。一方で来館者に人気なのは右隻であるようだ。なんといっても白象の存在が大きい。
作品近くの椅子に座って一定時間、目視。作品の前に立つ半数ほどが白象を撮影する。この日は若い男女の来館者が多かったのだが、彼らの多くがそうしていた。白い象を真正面から描くという特異な発想に引かれるのか。色彩豊かな画面の中にぽっかり空いたような白い空間に目が行くのか。象の表情がいいのか。
収蔵品展の中で個人的に好きなのは狩野永納「蘭亭曲水図屏風」だ。王羲之が41人を招いた宴の様子だが、いつも左はじを見る。今回も迷わず足を止めた。いた。こっそり酒を飲む童子が。子どもならではの好奇心が表情によく出ていて笑える。今年もこの子に出会えた。
(は)
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■静岡県立美術館「石崎光瑤展関連展示 第1部 異国への眼差し」
住所:静岡市駿河区谷田53-2
開館:午前10時~午後5時半(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):一般300円、70歳以上・大学生以下無料
会期:2月16日(日)まで※伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」は2月18日~4月6日の「石崎光瑤展関連展示 第2部 絢爛たる花鳥画」にも出品(3月23日まで)