猫はどうし て『環境の変化』が苦手なの?考えられるつの理由 負担の少ない慣らし方も
行動範囲が狭いから
猫は縄張りをもつ動物です。野生で暮らす猫の移動範囲は、オス猫で500m~1km(去勢手術なし)、メス猫で100m~200mほど。猫は屋外で暮らしていても、一定の範囲以内でしか生活しないのです。
猫はその縄張りの中で、狩りや食事、休息をする場所をわけて生活しています。常に決まった環境で暮らすことで、猫の生活パターンは一定し、安心感も得られると考えられます。
そんな猫にとって、環境の変化は安定した生活が乱されること。たとえるなら、人間が自宅から知らない世界に放り出されるイメージです。
なおペットとして暮らす「イエネコ」は、家全体が縄張りであると認識しています。家の外に出るということは、猫にとっては縄張りの外に出るという行為です。猫にストレスを感じさせないためにも、不要な外出は避けた方がよいでしょう。
ニオイの変化に不安を感じるから
猫の嗅覚はとても優秀です。人間の数万~数十万倍以上もニオイをキャッチする力が高く、遠くのニオイでもかぎ分けられるとされています。
また「言葉」をもたない猫にとって、ニオイは貴重な情報元のひとつです。猫は安全確認から食事内容の調査などまで、あらゆる情報をニオイで判断します。「ニオイで会話する動物」ともいわれ、お互いのニオイを嗅ぎ合うことで、食べたものや行った場所などを知らせ合うのです。
ニオイは環境や場所によって異なるものなので、猫は「いつもと違う」ことに不安になったり、再調査をしたりします。たとえば飼い主さんが帰宅したときやお風呂から出たときもそうです。愛猫がクンクンニオイを嗅ぎにくるのは、普段と違うニオイを確認するためなのです。
なお、同居猫が脱走して帰ってきた後に、ニオイが原因でこれまでの関係が崩れてしまうことがあります。ずっと仲がよかったのに威嚇やケンカがはじまり、相性が悪くなってしまうことがあるのです。これは脱走した猫に外のニオイがついたことで「警戒すべき対象」となってしまったということですね。
猫は同居猫に外のニオイが付着しただけで、怒り出すこともあります。ニオイの変化も立派な「環境の変化」であることを覚えておきましょう。
脳のつくりによる自然な反応
猫の前頭葉は、人や犬と比べても小さいです。脳全体に対する前頭葉は、人が29%、犬が7%であるのに対して猫は3.5%ほどしかありません。
前頭葉は思考や記憶、応用や感情などの働きをします。よって、猫は犬よりも「新しい環境」に柔軟に対応したりすることは苦手と考えられます。
猫は、一定の生活パターンの中でリラックスできる動物なので、環境の変化に順応しにくいのは自然な反応といえるでしょう。
負担の少ない慣らし方
引っ越しや大がかりな模様替えで暮らしが一変する場合は、猫が使い慣れたアイテムを所々に配置するとよいでしょう。
たとえば、キャットタワーや爪研ぎ、ベッドやトイレなどの猫グッズは新調せず、これまで使っていたものを引き続き使用。先述したとおり、猫はニオイで安堵感を確認する習性があるので、自分のニオイのついたアイテムは有力な安心材料です。
そもそも縄張りは自分のニオイをつけることからスタートするので、自分のニオイのついたアイテムがあることで「縄張り=安全」と認識しやすくなるでしょう。
まとめ
猫が環境の変化を苦手とする理由は、資質にあることがわかりました。ただ警戒心が強いというだけではなく、生まれ備わったものであり、逆をかえせば、それは猫が安全に生きるために必要なものなのだと解釈できます。
なかには「イエネコ」でも外出が得意な猫もいますが、それは先天的なものではなく、赤ちゃんの頃からの習慣づけによる結果かもしれません。無理に外出させることでストレスを与えて、吐いたり元気がなくなってしまうことがあることを覚えておきましょう。
引っ越しでやむおえず住環境が変わるときには、ニオイや使い慣れたアイテムを用意して、少しでも愛猫が安心できる環境を用意してあげるよよいですよ。