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【山陰・中海シーバス】“止水域”という特殊フィールド 流れに頼らないバスフィッシング的アプローチとは

つり人オンライン

ホームグラウンドの山口エリアにはない独特の雰囲気にハマり、年に何度か中海を訪れるよう になった藤田さん。普段は流れを一番に意識し て釣るが、中海では流れよりも回遊ルートを含めた地形を意識した釣りでヒットを量産

島根県松江市・安来市と鳥取県境港市・米子市にまたがる中海は日本海に開いた湾の入り口が、砂州によって塞がれてできた汽水湖(潟湖)だ。 境港と美保関の間にある境水道で外海とつながっているものの大半は止水かと思えるほど波静かな汽水湖。 そんなひと癖もふた癖もあるフィールドを攻略すべく藤田知洋さんがシーバスを追った。

藤田知洋(ふじた・ともひろ):山口県在住。河川のシーバス釣りを得意として瀬戸内海側を中心に釣りをしている。現在はベイトタックルでのシーバスの楽しみ方を追求中

写真と文◎藤原武史

中海のシーバスは流れの変化がスイッチではない

鏡のような静かな水面を割ってシーバスがエラ洗いを繰り返す。釣りを開始した朝から、この日すでに何度も目にした光景だが、いまだに慣れない不思議な感覚になる。

鳥取県と島根県の県境、中海の一角。取材にあたり、当日の潮位について調べていて、あることに気がついた。中潮なのだが干満差がたったの16cm。これでは動いていないのと一緒だ。日本海側の干満差が小さいことは知ってはいたがここまでとは。海でありながら流れがないなどと想像すらしていなかった。

河口のような場所では多少流れがあったが、流れがポイントの基点になっていないような違和感を覚えた。バイトしてくる場所は流れと関係なく、決まってカケアガリやストラクチャーに関連した場所で、しかも回遊している途中で見つけたルアーにバイトしてきている感じなのだ。食性を利用したバイトとはどうしても見えない。

朝イチに入ったのはテラスの上から釣れる足場のよい釣り場。柵の先が敷石になっていている。名前は海だが波もなく、風に吹かれた海面にさざ波が立つだけ

止水域ではルアーフィッシングのセオリーが通用しない

場所を移動すると今度は明らかに水の動きがない。まさに止水域なのだ。美保関と境港の間にある水道で外海と繋がっているので海水は入っているが、見た目は完全に湖だ。地形から考えて河口や水道での釣りを想定していたが、大きく移動しながら細かくランガンを繰り返したのはことごとく止水エリアだった。

シーバスに限らず海のルアー釣りでは流れが大きなファクターになる。流れの変化や動きで魚にスイッチが入ってルアーにバイトしてくると考えるアングラーは多いだろう。しかしこの中海ではその考え方が通じないのではないかと思った。シーバスも中海に入ってしまうと外海での習性を忘れたかのように行動していたからだ。

が、実際のところ、捕食対象であるベイトフィッシュは流れに依存して行動している。流れを利用して移動し、プランクトンを捕食するベイトフィッシュを探す。これが捕食者の行動原理であり、間接的にはベイトを通じて流れの存在を利用しているのだった。

目の前にベイトがいるのに全く捕食行動を取らなかったシーバスが、あるタイミングで急に捕食行動を取る場面を見たことがある人も多いだろう。たいていの場合が、流れが変化するタイミングであることが多い。

しかし、干満差が少なく止水エリアが多い中海では、潮の変化というタイミングを見計らってバイトに持ち込むという、ルアーフィッシングのセオリーが使えないのだった。

鏡面の水面。流れもない堤防を探っていた藤田さんが急にファイトを始める

バスフィッシングに近いアプローチ方法

「中海に来始めた頃は、ミノーでの釣りが好きなこともあってミノーばかりを投げていましたが、知り合いから教えてもらった釣り場を巡っても一度としてバイトがなかったです。おまけに流れという流れもない。もうワケがわからなかったです(笑)」

そう語るのは日本海、響灘、瀬戸内海の三方を海に囲まれた山口県在住のシーバスアングラーの藤田知洋さん。シーバスゲームは海から始めたという藤田さんだが、やり込むほどに主戦場は河川に変化していき、現在はほとんどの釣行が河川という、まさに流れを読むことが藤田さんのスタイルだ。

流れにこだわる藤田さんだからこそ、余計に戸惑ったのが中海というフィールドだ。

「あまりに釣れなくて試行錯誤を繰り返しました。でも結局、その知り合いに教えてもらったメタルバイブによるリアクションの釣りが一番結果を出せました。自分なりの釣りができなくて悔しいですが」

そんな藤田さんは、ここ中海での釣りを止水でのブラックバスの釣りに似ているという。

「普段のシーバスゲームを一旦忘れてバスフィッシングに近い考えでアプローチしていくといいのかもしれない」 自分のシーバススタイルや好みとは違うものの郷に入っては郷に従うということだろう。一般的なシーバスゲームとは違った釣りがここでは展開された。

藤田さんいわく、この時期は鉄板系が圧倒的に釣れるという。左からモアザン バリアール18g、モアザン リアルスティール18gと14g。モアザン バリアールは背にエラストマーフィンが付いていてメタルだけでは出ない波動を発生させるユニークなルアー

リアルスティール18gにヒットした50cmアップ。中海では40 ~ 50cmがアベレージサイズという

ベイトタックルのシーバスゲーム

日の出前に米子のポイントへ着いた藤田さんは、ベイトロッドであるラテオ86MLBを手にしていた。ベイトタックルのシーバスと聞くとビッグベイトでの釣りを想像しがちだが藤田さんは笑って否定する。

「中海のショアからの釣りではビッグベイトはほとんど使いませんよ。今日もメタルバイブ系を多用していくと思います。スピニングタックルは持ってきていません」

もともとバスアングラーだった藤田さんはベイトタックルでの釣りが好きだったという。シーバス釣りを始めた当初はスピニングタックルを使っていたが、シーバス用のベイトリールとベイトロッドの性能が飛躍的に上がってきたことからベイトタックルを使う機会が増え、現在はベイトタックルがメインになっているそうだ。

藤田さんのタックル

藤田さんの当日のタックル以下
ロッド:ラテオ86MLB/96MLB(ダイワ)
リール:23 ソルティスト TW100XHL PE スペシャル(ダイワ)
ライン:UVF モアザン デュラセンサーX8+Si2 の1.5 号(ダイワ)
リーダー:モアザンリーダーEXⅡ TYPE-F 4 号(ダイワ)

「飛距離やルアーに与えるアクションにおいてベイトとスピニングに大きな違いはなく、ベイトならではのデメリットは見当たりません。逆にキャスト精度の高さや手返しのよさ、巻き上げの力強さとリフト&フォールのしやすさといったメリットは多い。特に今回のラテオはかなり気に入っています。86と96があれば大抵の場所と状況に対応可能ですし、とにかく使っていて楽しいロッドですよ」

スピニングタックルでのキャストが弾く感じだとするとベイトでのキャスティングは押し出す感じと言いながら、スリークオーターやサイドスローでキャストを繰り返す藤田さん。

「ブランジーノのほうのキャパ(キャスト時に指を離すタイミングの幅)が広い気がしますが、ベイト初心者でも慣れやすく使いやすいのはラテオのほうかもしれませんね。慣れている人からしても欲しかった機能が詰まった一本といった感じで使い勝手がいいロッドです」

それはキャストのみならず魚を掛けた後のやり取りを見ていても感じられた。フッキングが決まるとリールのパワーをしっかりロッドが受けて、シーバスのエラ洗いにもスムーズに追従して曲がっていた。

藤田さんはラテオを使う場合ソルティストTW100XHL PEスペシャルをセットする。握りはツーフィンガーで人差指は伸ばしブランクに沿わせている

しっかり曲げてフルスイングでルアーを飛ばす藤田さんのキャスティングフォーム。ラテオはティップのブレがすぐに収束されるのでラインに不必要な抵抗が掛からず飛距離が伸びる

回遊待ちの釣りが基本

朝は米子の奥まった場所で、回遊してくるシーバスをねらった。サイズはその時の群れしだいで決まってくるそうでサイズは選べないという。 岸沿いに回遊することが多いことから、まずは岸に沿ってリアルスティールの18gをただ巻きしてくる。ルアーが表層に出てこないでボトムも叩かない感じのスピード。基本的にロッドアクションは入れていない。

最初は岸に近い場所、次に最初のカケアガリ、それでも反応がないので2段目のカケアガリを探っていくとここでバイトがあり、その後もセカンドブレイク沿いでバイトが続いた。サイズはいずれも40~50cmのアベレージサイズだった。

時折、違うサイズの群れも入ってきて、わりといいサイズもヒットしたがバラシもあり、60cmアップを一尾キャッチしたあとはサイズアップせず。その後も数尾を釣ったが、午前8時前からピタリとアタリが遠のいた。群れが移動してしまったのだろう。そこで人間のほうもそれに合わせて移動していく。

たくさんのバイトを得て、最大は60cmアップだったが、もちろん80cmを超す大型もいる。ただし、大型をねらって獲るのは難易度が高い釣り場かもしれない

待望の流れも無反応

移動した先では開いた水門から水が流れ出していた。流れが利く場所、普通であれば一級のポイントになりそうなものだがアタリもない。先ほどのポイントでも感じていた違和感が違和感ではなく確信になりつつあった。 流れのヨレにはサヨリが見える。「本来、サヨリがベイトになるときはI字系のルアーをデッドスローで引くのがセオリーですが」と言いながら鉄板系を投げていく。

その後も藤田さんが回るポイントは、あまりシーバスフィッシングでは行かないような景色のところが多かった。 汽水湖、止水、ベイトタックルという不思議にも思える組み合わせだったが、終わってみれば、これだけのシーバスをキャッチしているのだから間違いなく正解のひとつだったのだと気付かされたのだった。

水門が開くと、この日初めて強い流れが生まれた。これはチャンスかと思ったが何の反応もない

※このページは『つり人 2025年12月号』の記事を再編集したものです。

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