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【日本一危険な神社】太田山神社とは 〜試される大地に鎮座する断崖絶壁の霊場

草の実堂

画像:太田山神社 本殿からの風景 wiki c Muronavi5
画像:太田山神社本殿前の崖、中央に見えるのが本殿 wiki c アラツク

近年は、御朱印集めブームやパワースポットブームなどの影響もあり、観光がてら神社に参拝する人が多くいる。

しかし中には参道が勾配のきつい坂道だったり、神社にたどり着くまでの道路があまり整備されていなかったり、散歩がてらの気軽な気持ちで行くと後悔することになる神社も珍しくはない。

日本に数多くある神社の中でも、北海道の太田山神社は特に、本殿にたどり着くまで命がけといわれる過酷な参道が有名な神社だ。

今回は、「日本一危険で過酷な神社」といわれる太田山神社に触れていこう。

「太田山神社の立地」

画像:太田山神社の入り口 wiki c アラツク

太田山神社は、北海道の渡島半島に位置する久遠郡せたな町の、太田山中腹に鎮座する神社だ。

せたな町の北部は、後志総合振興局との境に位置する狩場山(標高1520m)を中心とした山岳地帯で、南東部もまた遊楽部岳(標高1277m)を中心とする山岳地帯である。

久遠郡せたな町は瀬棚郡瀬棚町、北檜山町及び久遠郡大成町が合併して発足した町で、日本海側に位置しており冬季の日照時間は少ないが、降雪量は他の日本海側の地域よりも比較的少なく、1年を通して雨がちな気候である。

「せたな」は「瀬棚」をひらがな表記にした名であり、アイヌ語で犬・川を意味する「セタナイ」に由来するという説や、同じくアイヌ語でサンナシの木・たくさんある・川を意味する「セタニウㇱナイ」に由来するという説がある。

町の主な産業はイカやホッケ、アワビなどの水産業で、稲作や酪農などの農業も行われているという。

太田山神社が位置するのは、せたな町の南西部の海沿いで、北海道の中では最も西寄りにある神社だ。

鉄道の最寄り駅はJR北海道函館本線の八雲駅だが、そこから太田山神社入口までは車で1時間以上かかる道のりとなる。

北海道道740号北檜山大成線沿いに太田山神社の入り口となる最初の鳥居が建っており、参道の初めから急な石段を上っていくことになる。

太田山神社の歴史

画像:木喰上人自刻像 wiki c ReijiYamashina

太田山神社は1441年から1443年頃、嘉吉年間の頃に創建されたと伝えられている。
本州では足利義教もしくは足利義勝が、室町幕府将軍を務めていた時期にあたる。

ご祭神は「導きの神」として知られる猿田彦大神だが、創建から約10年後の享徳3年に、松前藩の始祖である武田信広らが上陸の折に太田大権現の尊号を賜って、以来航海の安全と霊神の加護の社として信仰されるようになった。

1660年代に美濃国の僧侶・円空上人が太田山で修業した際に、多くの仏像を彫ったことが伝えられており、1789年には旅行家の菅江真澄が太田山に登った記録を残している。

1845年には探検家であり、北海道の名付け親でもある松浦武四郎が久遠に入り、太田山の奇岩が立ち並ぶ光景を目の当たりにして「奇観なり」と評したという。

甲斐国出身の行者である木喰上人(もくじきしょうにん)は、生涯に渡り多くの仏像を彫り上げた人物だが、彼が仏像彫刻を始めたのは太田山で円空上人が彫った仏を実見し、感銘を受けたことがきっかけとする説がある。

太田山神社は江差の笹山稲荷、奥尻の賽の河原、函館の恵山賽の河原、八雲町の門昌庵とともに、北海道南五大霊場の1つに数えられる霊場であり、つまりは古くより修験者のための修行の場でもあったのだ。

崖の上に鎮座する本殿までの道のり

画像:太田山神社 本殿 wiki c Muronavi5

太田山神社の本殿にたどり着くまでには、上り下りするだけでも困難な山道や足場が続いており、加えてヒグマやマムシ、蚊やハチなどの野生動物や害虫にも注意を払わなければならない。

入口の鳥居をくぐると、参拝者の目の前にはいきなり傾斜40~50度の急勾配の石段が立ち塞がる。

石段には道中の安全を確保するための細いロープが垂らされており、参拝者は最初から登拝に対する意気込みを試されることになる。
ちなみに石段1つの奥行きは約15cmほどしかない。

139段、約43mの高さまで石段を上りきると、そこからはロープを伝って岩がちかつ急勾配の山道を進んでいく。
最初の石段から本殿まではロープが続いているので道に迷う心配はないが、過酷な事には変わりない。

山道を50mほど歩くと小川にぶつかるので、その先にある鉄製のはしごを約100m登り進んでいく。

そうすると岩崖の下の地蔵が見えてくるので、そこからさらに100mほど登ると女人堂にたどり着く。休憩をするのであれば、平地があるこの辺りが適している。

画像:太田山神社 本殿からの風景 wiki c Muronavi5

少し体を休めたら、また擦り切れたロープを伝って急勾配の険しい山道を登っていく。太田山を登拝した松浦武四郎は、この山道を手記の中で「オニカミノボリ(鬼神登り)」と呼んだという。

険しい山道をロープ伝いに登ると、やっと本殿の鳥居が見えてくる。
しかし本殿に至る崖の下にたどり着くまでには、幅約1m、長さ約16mの、足元が金網越しに透ける、劣化具合が目に見えてわかる鉄製の橋を渡らなければならない。

橋の右下には深い谷底が広がっているが、左側の断崖絶壁には鉄の鎖が見えてくる。

橋を渡り切ったら、本殿まであと少しだ。ここから最後の難関である「北尋坊の壁」を登っていく。
90度の断崖絶壁には本殿が鎮座する岩穴から約7mの錆びた鉄の鎖が垂れ下がっているので、それを登り切ればやっと本殿にたどり着ける。

1~2時間をかけて険しい山道を登った先に見る光景の素晴らしさは、写真に収まりきるはずもない。それは困難を乗り越えた者だけが眺めることができる神聖な景色だ。

だが登り切った達成感を感じた後は、今まで登ってきた厳しい道のりを、降りる恐怖が待ち受けていることを忘れてはならない。

太田山神社参拝時は登山装備を揃えていこう

画像:太田神社、上から2本目の電線辺りに太田山神社の拝殿がある wiki c アラツク

太田山の麓には太田神社拝殿があり、そこでは太田神社の御朱印を拝受することができる。

どうせ行くなら太田山神社本殿にお参りしたいと思うかもしれないが、体力に自信のない人や装備が十分ではない人が軽い気持ちで挑戦すれば、必ず後悔することになるだろう。

北海道の山なので、冬季の参拝はもちろん不可能で、冬季以外でも前日や当日が雨であれば登拝は不可となっている。登拝中に事故が起きても、すべては自己責任だ。

もし太田山神社登拝にチャレンジする時は、過酷な登山に挑む覚悟を持ち、時間に余裕を持って装備もそろえ、注意事項をよく確認してから挑戦していただきたい。

無事本殿に参拝できれば、きっと世界観や人生観が変わるような達成感を得られることだろう。

参考 :
渋谷申博 (著)『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』
せたな町公式HP
文 / 北森詩乃 校正 / 草の実堂編集部

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