4歳からゲーム三昧!イライラ暴言・過集中の16年を経て、ASD息子が語った当時の本音に驚き【公認心理師アドバイスも】
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
テレビゲームで遊ぶときのルールを作らなかったわが家の事情
わが家は、夫がゲーム関係の記事を書く仕事をしていたため、家にはさまざまな種類のゲーム機やゲームソフトがありました。
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動性)のある息子のリュウ太は4歳頃から少しずつテレビゲームをやるようになり、学童期の頃にはヘビーユーザーのようにテレビ画面にかじりつきゲームをしていたのです。主に、車でレースをするゲームやスポーツ系のものが好きでよくやっていました。
私は、ゲームが苦手で「お母さん一緒にやろうよ」と誘われてもコントローラーの操作ができなくて一緒に遊べませんでした。ですが、子育て期間中はずっと仕事が忙しく、私は家で作業をするマンガ稼業ですから、息子が仕事の邪魔をせず、大人しくテレビゲームをしてくれると助かったのです。
そういった理由もあって「ゲームは1日2時間まで」などのルールは作りませんでした。なので、リュウ太は小学校低学年の頃から学校から帰ってくると夜ごはんまでの間、4時間くらいやっていたんです。
それでも、毎日4時間もやるとさすがに飽きるようで、ある日は「今日は工作しよう」とか「今日はブロックで遊ぼう」など自分から他の遊びに変更をしていました。
学校のイライラとゲームの暴言が止まらない
小学校3年生、4年生になるとリュウ太は学校で周りの子と衝突することが増えて、毎日イライラして帰宅するようになりました。
イライラした日は、帰宅してすぐにゲームを始めて、遊ぶ時間も増えてきました。
夜ごはんを食べ終わり、風呂に入った後もゲームをやるようになって、「宿題をやらない」「明日の学校の準備をしない」「塾の課題を嫌がる」こともありました。ゲームにどっぷりになり、私が宿題をやろうと促しても拒否するばかりです。
またゲーム中に「クソ」や「ムカつく」など荒々しい言葉を言いながら、ときにはゲーム機を乱暴に扱ったりしていました。「イライラするならゲームをやらなければいいのに?」と息子に伝えましたが、「お母さんは黙って仕事していて!」と逆に私が怒られる始末です。
日々のイライラをゲームで発散させているのかな?と思いましたが、同じ空間にいて、イライラした言葉を聞くのはしんどいものでした。
ルールがなかったわが家で導入した「強制終了」ルール
高学年になるとリュウ太はますますゲームにのめり込みました。これまでルールがなかったわが家でしたが、さすがに……と思い注意してもなかなかやめてくれません。
そこで、ゲームをやめられないときは電気のブレーカーを落とすことにしました。
強制終了は、いい作戦だと思っていました。
突然ブレーカーを落とすと息子が反撃して大きなケンカになったので、「あと5分で電気停めます」と警告して、ゲームを自主的に終了させるというきまりにしました。そんなルールにリュウ太は「そのルールやめてくんないかな。心臓に悪い!」と反抗して怒りをぶつけてきましたが、こうでもしないとやめられず、困っていました。
あんなに夢中だったのに、中学生になったらピタリと家でゲームをしなくなったワケ
ところが、リュウ太は中学生になると、これまで家でゲームばかりしていたのがパタリとなくなりました。
友だちとゲームセンターに通うようになって、家でゲームをするのは友だちが集まったときだけになりました。
そして、高校生になるとアルバイトを始めたのがきっかけか?さらにゲームをしなくなり、家ではほとんどやらなくなったのです。
20歳になった息子の本音。「他に面白いことがなかった」「本当は飽きてた」
リュウ太に「なんでゲームをやらなくなったのか」20歳になったときに話を聞いてみました。
「他に面白いことがなかったからゲームをしていただけなんだよね。旅行とか楽しいことがある日はやらないじゃん、目の前にゲームがあったら、そりゃやっちゃうでしょ!小学生のときってゲームしか刺激がないんだから。でもね、やりすぎて本当は飽きてたんだけどね」と言うリュウ太。
「いまでも好きなゲームはやりたいって思うけど、他にやらなきゃいけないことがあるし、友だちと外で遊びに行くほうが楽しい。もうゲームは何時間もできないな、それよりも寝たいよね」なんて疲れた中年のようなことを言っていましたが、成長と共にゲームから少しずつ離れていくものなんだと感じました。
執筆/かなしろにゃんこ。
(監修:初川先生より)
ゲームとの付き合い方についてのコラムをありがとうございます。大人になってから、ゲームについて振り返り、思いまでうかがえるのは、今まさにお子さんとゲームとの付き合い方に悩んでいる保護者の方からすると、とても参考になる貴重なご意見ですね。
さて、ゲームとの付き合い方について悩む保護者の方はかなり多いです。ゲームと一口に言っても、オンラインゲームだと大人でも途中で切り上げにくくするような仕組みがあったり、ついつい「毎日ログインしないと」と思わせる仕掛けがあったりと、ゲーム会社側が昔より格段にゲームと離れづらくしている面があります。子どもにとっては、自分で操作して勝ったり、何かを集めたりでき、現実世界よりも簡単にさまざまな経験ができるという意味で、面白味に富んでいるものですね。
これはよく言われることですが、ゲームと付き合うなら、「しっかりルールを守れるであろう年齢(小学校高学年以降)」よりも、もっと前の幼い頃に導入したほうがよいのでは、と言われています。1日30分などから始めて、「おしまいの時間を守る練習」も含め、早めに経験させるのです。ゲームの導入自体を先送りしてもいずれやるときが来てしまうでしょうし、その頃には保護者のコントロールが効かないとなると、それはそれでとてもリスキーではあります。
さて、かなしろ家ではルールを定めずにやっていたとのことですが、それでも食事や就寝時刻はどうにか維持できていたのだろうと想像しました。思春期頃の、ブレーカーを落とすという「強制終了」ルールもなかなか強烈でしたが、そうせざるを得ない状況だったのだなと思います。ゲームの難しさは、ゲーム側の「なかなか切り上げにくい仕組み」と、お子さんによっては「そもそも好きな活動を切り上げにくい」という場合もあって、その掛け合わせでますます中断が難しくなる点にあります。ゲームがなければないで(お子さんによりますが)意外と安定する子もいて、試せるものならさまざまな手立てを試して、どれがお互いそれなりに幸せな着地になるかを探っていただきたくはあります。ただ、ゲームが単純に余暇の過ごし方の1つではなく、あまりにもつらい現実から身を守るための唯一の手段になっている子も中にはいます。その場合は、お試しであれあまりゲームを取り上げる方向で検討しないほうがよいと思います。このあたり、ぜひ身近な心理職(スクールカウンセラー等)に相談していただければと思います。
また、ゲーム中にイライラしたり、暴言を吐いたりするお悩みもよくうかがいます。大人の感覚からしたら、ゲームは楽しむためのもので、それでイライラするのは勘弁してほしいところですが、実際にはストレス対処法の1つ、「お楽しみ」としてのゲームによって、逆にイライラするときもあります。このあたり、ご本人とも話していただきたいのですが、イライラして暴言を吐いても、意外と結果が伸びなかったり、イライラしていると腕に力が入りがちで、操作ミスをしやすくないかということです。中学生くらいになるとそのあたりにも自覚が出て、イライラする前にやめようとか、イライラしたらうまくいかないからちょっと休もうとか、自分なりの対処を見つけられることもあります。そもそもイライラしているときに、発散系のことをしてもあまり収まらず、イライラしているときは鎮静系のことをした方がうまくいく、ということも頭の片隅にもっていてほしくはあります(機会があればぜひお子さんに教えてあげてください)。
リュウ太くんは、大人になった今では、やるべきタスクがあるから、友だちと遊びたいから、寝たいからなどさまざまな理由によってゲームと程よい距離を取れるようになってきたとのこと、何よりです。ゲーム以外のことが充実したり、やるべきことを果たすという責任感が生まれたり、そしてご本人がゲームのみならず、そうした他のことにも目を向けられるようになった。そうした複合的な成長がゲームとの程よい距離感を生むのだろうと感じました。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。