かながわ福祉サービス大賞 「水車の里」に審査員特別賞 先進事例として表彰
県内の福祉の未来を拓く優れた先進事例を発掘・紹介する「第12回かながわ福祉サービス大賞」の事例発表会が2月6日、市内で実施された。同日行われた審査の結果、区内からは新治町の「グループホーム水車の里」が審査員特別賞、中山で「レモンの庭」「ダンプリングハウス」を運営する「(一社)フラットガーデン」が優秀賞に輝き、表彰を受けた。
主催の(公社)かながわ福祉サービス振興会によると今回のテーマは「三方良し」。自分良し、相手良し、世間良しの実践事例を募り、県内の27団体が応募した。選考の結果、過去最多となる8事例が入選した。
ピンチ救う力に
事例発表会当日、今春で設立19周年を迎える「グループホーム水車の里」の管理者・高田朱美さんらによるプレゼンテーションは、審査員の注目をひと際集めた。発表の中で高田さんらは、困りごとを抱える地域の子どもなどのピンチを救いたいと、入居者と共に進める「大ピンチひなんじょ」づくりの取組などを紹介した。
「グループホーム水車の里には24時間365日、必ず大人がいる。困ったときはいつでも助けを求めに来てほしい」。高田さんは、同施設が高齢者にとっての安心の場としてだけでなく「SOS」を発する地域の人にも寄り添う存在でありたいと願うメッセージを載せて昨年手作りした冊子『大ピンチずかん』についても語った。
こうした取組の契機の一つになったのは、2019年夏に開始した、入居者主体でのアイスクリーム販売活動だ。ある入居者の女性の「働いて人の役に立ちたい」との願いを叶えるべく始めたアイス販売。女性が昨年亡くなった後もその遺志を継ぎ、活動を再開して継続している。買い求めに訪れる多くの子どもとの交流が深まる中、困りごとを抱える子どもの存在も見えてきたという。
審査員は「さまざまな『共生』が含まれている事例」と高く評価。高田さんは「皆で助け合ってきたことで賞をいただけてうれしい」と語った。
優秀賞にフラットガーデン
「私たちがやっていることは間違いじゃなかった」。19年から多世代交流カフェ「レモンの庭」、昨年からはその隣で就労継続支援B型事業所「ダンプリングハウス」を運営しているフラットガーデンの代表理事・松岡美子さんは、優秀賞受賞の喜びを笑顔で語った。
理事の阿久津真美さんと共に、18年に同団体を設立した松岡さん。「多世代が交流できる場所をつくりたい」との思いからオープンしたレモンの庭では、日々多くの人が健康マージャンや編み物、絵の制作などを通じて交流を深めている。
隣接する「ダンプリングハウス」では、18歳以上の利用者が集い、餃子作りや販売、アート制作、観葉植物の栽培などさまざまな活動に取り組んでおり、若い利用者がレモンの庭を訪れて健康マージャンを楽しむ高齢者たちと交流することもあるという。「若者が加わることで高齢者は元気をもらえるし、若者も『人の役に立てた』という実感が得られる」と松岡さん。「全く別々の施設ですが、良い相乗効果が生まれています」
受賞理由について同振興会は「地域のさまざまな方が混じり合う素敵な空間で、地域共生社会づくりのモデル。こうした取組が地域のコミュニティの再生につながる」からとした。