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NZ「フォリウム・ヴィンヤード」が貫くヴィンテージファースト

ワイン王国

NZ「フォリウム・ヴィンヤード」が貫くヴィンテージファースト

ニュージーランドワイン試飲・商談会2024に併せて来日した「フォリウム・ヴィンヤード」の栽培兼醸造家 岡田岳樹氏が、8アイテムの試飲を交えながら最新ヴィンテージの特徴やこだわりのワイン造りについて語った。

2010年6月にニュージーランド南島の北東部、マールボロ地方のブランコット・ヴァレーに設立された「フォリウム・ヴィンヤード」で活躍中の岡田岳樹氏。20年から生産しているロゼには「麻婆豆腐や餃子、オイスターソースを使った中国料理がよく合う」と自らの体験を披露

2003年にニュージーランドへ渡り、昨年20年という節目を迎えた岡田岳樹氏。南島マールボロ地方の「フォリウム・ヴィンヤード」(以下フォリウム)とは2010年の創設当初から関わり、現在は栽培と醸造のすべてを取り仕切っている。要の品種はソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールだが、2021年からシャルドネにも着手した。

マールボロのソーヴィニヨン・ブランの特徴

岡田氏はマールボロについて「この50年で最も成功した産地」と言及。その立役者はニュージーランドを世界のワイン産地に押し上げたソーヴィニヨン・ブランである。ちなみにニュージーランドの総栽培面積の約7割は最大の産地マールボロであり、マールボロの約9割がソーヴィニヨン・ブランを栽培している。

ニュージーランドのワイン生産者団体「ニュージーランド・ワイングロワーズ」は、ソーヴィニヨン・ブランについて「非常にアロマティック。さわやかで明確、優れた純粋さと刺激的な個性を備えている」と明記しているが、近年の研究でその原因物質が特定された。グレープフルーツやパッションフルーツのような香り成分のチオール類である。ただし、チオール類はブドウの果実には存在せず、果汁の中に含まれる前駆体から酵母の働きによって生成されるので、それを最大限にするためには、「果汁中の窒素や紫外線の多さ、古樹より若樹、コルクよりスクリューキャップが好ましく、手摘みではなく機械収穫にすると倍以上の量になる」と岡田氏。マールボロの多くの生産者はこれらの研究結果を踏まえ、ブドウ栽培を実践している。

左から、 『マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン 2023年』 サイクロンが発生したチャレンジングな年。前年同様、雨が多く苦労したが、ワインはフルーティーでさわやか、軽快 『マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン・リザーヴ 2019年』 あまりに乾燥した年で多くの畑では灌漑がストップ。ストレスは多少出たが、非灌漑のメリットを感じた年。すべての要素が整い、凝縮感ある味わい 『マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン・リザーヴ 2013年』 若飲みされることが多いソーヴィニヨン・ブランを10年以上熟成させた、非灌漑から3回目のヴィンテージ。果実のニュアンス、滑らかな口当たり、フランス的なニュアンス 『マールボロ ロゼ 2022年』 2020年がファーストヴィンテージ。21年から本格的に取り組み、3回目となる22年はリッチさと旨味が加わった。サクランボやスイカのアロマ、酸味のバランス、料理に寄り添い、好印象 『マールボロ シャルドネ 2022年』 2021年からシャルドネに着手。2回目のヴィンテージから樽を採用。新樽率15~20%、旧樽の平均年数は7~8年。岡田氏が好む切れ感ある酸味、塩味と白コショウ、上質な酒質とはつらつさ 『マールボロ ピノ・ノワール 2023年』 2003年に植樹したピノ・ノワール。23年は雨が多かった年、非灌漑のメリットが生かされたヴィンテージ。フレッシュ感、野イチゴやスグリを連想させる酸味、塩味、お肉の脂分を流してくれるきめ細かなタンニン 『マールボロ ピノ・ノワール・リザーヴ 2022年』 1996年に植樹したピノ・ノワール。22年は降雨のせいで適熟でないブドウを摘まざるを得なかったが、補糖も補酸もしなくて済んだヴィンテージ。若干青さを感じるが、清涼感があり、まろやか&軽やか 『マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン レイト・ハーヴェスト 2022年』 普段は水がないのに大雨で土壌が水分を吸い込み、ブドウの実が割れてボトリティスを誘発。初の甘口ワイン。きれいな酸味、果実の甘露煮、繊細で心癒やされる味わい

「フォリウム・ヴィンヤード」が求めるワインスタイル

フォリウムは小規模ワイナリーのため、他のワイナリーとの差別化を重視。その一つがヴィンテージファーストである。岡田氏はワイナリー設立の翌年からドライファーミング(非灌漑)を導入した。世界中が気候変動の影響下にあるが、ニュージーランドでも2022年は雨が多く、フォリウムでもソーヴィニヨン・ブランにボトリティスが発生。岡田氏はそれを逆手に取り、辛口タイプだけでなく、甘口ワインの生産に踏み切った。また、23年には大型のサイクロン“ガブリエル”が襲来。北島のホークス・ベイは洪水となり、南島でも灌漑をしている他のワイナリーの畑には被害が出た。

非灌漑による栽培を開始して10年以上が経過した今、ブドウ樹は地中深く根を張るだけでなく、地面に並行して根を広げていることで、雨が降らない年でもたくましさを発揮している。
岡田氏は「灌漑をせず、手摘み100パーセントを実践することで、より凝縮した完熟ブドウの収穫が可能になり、結果的にグリーンな青臭さ(メトキシピラジン)が軽減でき、ヴィンテージごとの違いが明確に表現できる。ワインの味わいは雨が降らなかった年より、少し降ったほうが自分好み」と語っていた。加えて、非灌漑のメリットは、1ヘクタール当たり180万リットルの節水にも繋がり、SDGs対策になっている。

「聴いてすぐに作者がわかる楽曲ってすごいと思う。それと同じように、飲んですぐにフォリウムのワインだと理解してもらえればうれしい」と岡田氏。そのために最優先していることがヴィンテージ(収穫年)ファーストなのだ。

グリーンサラダと『マールボロ ロゼ 2022年』 「それぞれの年の個性を表現するためにセニエではなくダイレクトプレスで」と岡田氏。酸味、味わい、中盤から広がる旨味が魅力のロゼ。レモンの酸や塩味を生かしたシンプルなドレッシングを使うことで、ロゼがより親しみやすくなる印象
リブキャップとスプリングラムに『マールボロ ピノ・ノワール 2023年&同リザーヴ 2022年』 ワインに上質で柔らかなビーフ&ラムを合わせると、脂分が洗い流され、口中がリフレッシュ。ヴィンテージの特徴としては、口当たりが良く滑らかな2023年と、若干ハーブのニュアンスがある2022年。ともに軽やかで飲み飽きしないワイン
クリームブリュレと『マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン レイト・ハーヴェスト 2022年』 残糖1リットル当たり133グラムながら、凜とした酸味がバックボーンの甘口タイプ。ブリュレのように表面を焦がしたスイーツ、白ゴマ添えの大学芋や焼き芋もお勧め。「抜栓して1カ月は大丈夫」と岡田氏

text & photographs by Fumiko AOKI

ワインの輸入元:WINE TO STYLE㈱ TEL.03-5413-8831

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