捨てられる漁網をリサイクルする企業が被災した漁師を救う!
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今日は魚を獲るときに使う網「漁網」の話題です。
使い終わった漁網をリサイクル
使い終わって捨てられる漁網をリサイクルしている企業が、今年の能登半島地震で被災した漁師を救うプロジェクトを行いました。どんな取り組みなのか、Ellange株式会社 社長 関幸太郎さんのお話です。
Ellange株式会社 社長 関幸太郎さん
震災が起きた時点で、自分に何ができるかなと考えているなかで、漁師さんのところに直接話をしにいく機会があって「仕事が欲しい」という話をされていたので、私たちがやっている仕事、網を回収してきたものを切る、カットするという仕事があるんですね。だいたい2、3mくらいにカットするんですけれども、その仕事であれば漁業に近い仕事だし、彼らとしても親しみを持ってやれるんじゃないかと提案させてもらって「やらせてほしい」という話をいただいたので、実際にプロジェクトが始動した。本来は、輪島に住んでいらっしゃいましたけれども、金沢で避難生活を余儀なくされてしまった方々が、仕事が本当に無くなってしまっていたので、給与として提供できる仕事をつなぐということを目的として提供したというところですね。
Ellangeは事業所が千葉県にあるんですが、関さんが以前、石川県で海産物の卸売事業を行なっていたこともあり、元日の震災後、何かできることはないかと、今回のプロジェクトを企画して石川県の金沢市に作業場を開設。震災後、輪島市から金沢市に二次避難していた漁師21人を雇用しました。
Ellangeでは、全国各地から回収した、廃棄される網からナイロン素材を作る作業を行なっています。この素材がアパレルメーカーなどを通して、数年後に衣類に生まれ変わるという流れです。使い終わった漁網は、これまで廃棄費用を削減するために海に捨てたり燃やしたり、不適切に捨てられることも多かった背景があり、リサイクルの事業を始めたきっかけになりました。
今年3月から始まった石川県での今回のプロジェクトは、漁師のみなさんが被災して漁に出られない、仕事がない期間を「つなぐ」という目的だったことや、二次避難を終えて輪島に戻る方が増えたこともあり、今年9月いっぱいで終了したということです。
参加した漁師は
では実際にその期間、プロジェクトに参加した漁師の方は、どんな思いだったのか、輪島で底引き網漁を行う奥野信夫さんに伺いました。
輪島で底引き網漁を行う 漁師 奥野信夫さん
私は3月の「集まってください」って言われたときからやっています。金沢でゴロゴロしていたんで「どんなんかな」と思って行ってみました。いつもの浜で見る顔のメンバーが見られてホッとしましたね。どんな仕事やろって不安になって行ったんですけど、知っている人たちばっかりだったんで、他愛もない話しながら網を切って、だんだん慣れてきてペースも早くなって、予定より早く終わったみたいなこと言ってました。すごいストレス解消になりましたね。仕事できるだけでも、ちょっと良かった。みんな周りの人も、なかなか漁に出たいとは口には言いませんけど、こんな状態でしたので。漁師同士でも隣町の人もいるので、年代も違うのであまり喋ったりしない人たちとも仲良くなれたっていう感じですかね。
奥野さんは漁師歴43年で、今60歳。被災後、金沢に避難して、することもなかったので、仕事があることはもちろん不安な中、仲間の顔が見られて、話せる時間が本当に嬉しかったそう。このプロジェクトの存在は、本当に大きかったと感謝していました。
(金沢で雇用した漁師のみなさんがカットした漁網は50トン!)
11月にカニ漁が解禁
能登半島地震からまもなく1年になりますが、先日も能登半島で大きな地震がありました。元日の地震の様子や、現状など、再び、輪島港を拠点とする漁師の奥野信夫さんのお話です。
漁師 奥野信夫さん
16時過ぎに、そろそろ風呂でも入って、お酒でも飲もうか、家族で美味しい料理でも食べようかとしていたところに、まず1回目の(揺れが)来て。自分の船はたいして故障はなかったんですけど、ほとんどの船が故障していましたね。どっかぶつかったりして。隆起して船が底つかえて、4、5ヶ月かかったんじゃないかね、移動するだけでも。去年還暦のお祝いして、こんな経験するとは思いませんでしたので、思い出したくない思い出みたいになってますけどね。本格的な漁は11月のこのカニ漁解禁のときが初めてです。今日も行ってきたんですけど、やっと戻られたかなと。解体は進んで空き地が増えてきてますけど、港の中の浚渫(しゅんせつ)の作業がまだまだって感じです。隆起して海底が浅くなったので、船の底がつかないように掘っている感じですね。まだ底がつくところもあるので、みんな慎重に港の中で船を動かしていますね。
カニ漁が11月に解禁されて、まだ制限はあるものの、被災後初めて漁に出られるようになったそう。ただ、地震で海底が隆起、浮き上がったために、水の深さが足りず、船が海底についてしまって船を以前のようには自由に出せない状況が続いています。水深、水の深さを作るために、海底の土砂を取り除く浚渫(しゅんせつ)作業、これまでも進められてきましたが、まだまだだ、と奥野さんは話していました。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)