不登校を繰り返す特別支援学級小3娘。「また学校行こうかな」のきっかけと通常学級への転籍
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
「もう学校に行きたくない」と言っていた娘の気持ちが変わり始めたきっかけ
わが家の娘、しぇーちゃん(ASD/自閉スペクトラム症、現在小学4年生)は、3年生まで特別支援学級に在籍していました。しかし、クラスメイトとのトラブルや、担任の先生との行き違いによって、3年生の2学期から学校に行けなくなりました。娘がこうして学校へ行けなくなるのは2回目のことです。 娘の学校はアプリ経由で欠席などの連絡をするため、メッセージに詳細を書き、しばらく欠席することを伝えましたが、それに対して担任の先生から連絡はありませんでした。先生にも何かご事情があったのだとは思いますが、このような出来事の積み重ねが、「何か困ったことが起きても助けてもらえない」と娘が感じた一因でもありました。
娘が学校を休み始めて数日経った頃、学校から連絡がきて面談を行うことになりました。正直なところ気が重かったものの、学校に行ってみると、対応してくれたのは担任ではなく特別支援学級の主任の先生でした。主任の先生からのお話は、特別支援学級の担任の先生が去年の担任の先生に変更になることと、オンライン授業をしてみませんか?ということでした。私は、無理して学校に行かずに家で勉強してもよいと思っていたため、オンライン授業の提案はありがたく感じました。娘にも聞いたところ、やってみるとのことだったので、翌週からさっそくオンライン授業がはじまりました。
オンライン授業は順調に続きました。そして特別支援学級の担任も去年の先生に替わり、徐々にクラスが落ち着き始めました。娘のほかにも学校に行くことができなくなっていた子がいたのですが、その子も再登校するようになり、娘も「3学期からまた学校行こうかな。友だちが呼んでるから」と言うようになったのです(授業の時間以外にも、昼休みなどに友だちとオンラインで会話ができたので、その時に友だちがいつ来るの?と言ってくれたみたいです)。3学期になると、娘は自分で決断した通りに、再び学校に行くようになりました。
解決しない友だちトラブル……また学校に行けなくなる?そこに先生からの提案が
しかし、3学期になっても特別支援学級のクラスメイトX君とのトラブルはなくならず、娘は遅刻早退を繰り返していました。やがて娘は「来年度もX君と同じクラスだったら、学校に行けない」と言うようになりました。私はどうしたらよいものか分からず、担任の先生に相談しました。すると「通常学級で授業を受ける姿を見ていたけれど、しぇーちゃんなら大丈夫だと思うから転籍しませんか?」と言われたのです。
その時はすでに2月中旬で、来年度のクラス編成会議が行われる数日前でした。急いで決めてほしいと言われ、その日のうちに家族会議をしました。話し合いの結果、「思い切って4年生から通常学級に挑戦してみよう」ということになりました。
通常学級への転籍を決めた次の日から、娘は朝から1日中ずっと通常学級で過ごすことになりました。元々、3年生になってから通常学級で過ごす時間を増やしていたからかもしれませんが、娘は遅刻早退することもせずに学校へ通い続けました。そして希望していた通り、娘は4年生から学びの場を通常学級に移すことになったのです(転籍に関する手続きなどは自治体や学校によって異なります)。
特別支援学級から通常学級へ。小学4年生になった娘を見て思うこと
現在、小学4年生になった娘。通級指導教室などは利用しておらず、年に2回、特別支援教育の担当の先生、担任の先生、保護者の3者で面談をする機会をいただいています。もちろん通常学級でも小さなトラブルはありますが、朝は誰よりも早く登校して、休み時間は校庭でお友だちとドッジボールをして遊ぶなど楽しく過ごしています。行き渋りや不登校になることもなく4年生は終了しそうです。
小学校入学当初の娘の様子を思い返すと、今でも特別支援学級へ就学することを選んで良かったと思っています。しかし、その後の転校、進級での友だちトラブル、担任の先生との相性など、予想できなかった環境の変化がいろいろ起きました。結果的に、わが家は小学4年生で特別支援学級から通常学級への転籍という大きな決断をしましたが、思いきって動いてよかったと感じています。今後も娘の様子を見守りながら、その時その時にできることをしつつ、柔軟に対応していきたいと考えています。
執筆/マミヤ
(監修:室伏先生より)
マミヤさん、オンライン授業から登校に繋がるまでのご様子や、通常学級への転籍までの経緯について詳しく共有くださりありがとうございます。登校がつらいと感じているお子さんをお持ちの保護者の方だけでなく、特別支援学級への進学に悩まれている親御さんにとってもご参考になったのではないでしょうか。特別支援学級から通常学級への転籍は決して簡単なことではないですが、特別支援学級へ進学する原因となった困りごとが落ち着いてきた、言語発達が伸びてきて通常学級での学習に十分についていけるようになった、コミュニケーションスキルが伸びて周りへの援助をスムーズに求められるようになった、など、通常学級での学習・生活に十分に困りごとが少ないと考えられる場合で、かつ、お子さんと保護者様が希望されていれば可能であることもあります(自治体にもよります)。転籍前には、準備期間を十分にとって、実際に通常学級で過ごしてみてお子さんの様子を観察できることが望ましいです。特別支援学級でのお子さまに合った適切な支援は、身体的にも精神的にも健康的な育ちと、学習面・社会面での学びにとても重要なものですので、その時その時で必要な支援のあり方・学びの場所を、先生方・支援者と一緒に考えていけるといいですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。