ゲリラ豪雨想定で避難、炊き出しなど訓練 中小川町内会自主防が実施 上小川住民も初参加
釜石市の中小川町内会自主防災会(佐々木正雪会長)は13日、ゲリラ豪雨による洪水、土砂災害を想定した防災訓練を行った。周りを山に囲まれ、沢水の大量流出や小川川の増水で住宅地への浸水、崖崩れなどの恐れがある同地域。住民がいち早く危険を察知し、迅速な避難行動をとれるようにと実施した。避難のほか、炊き出しや消火、防災資機材の使い方も訓練。いざという時の備え、命を守る行動へ意識を高めた。
避難訓練は短時間に集中的に激しい雨が降り、小川川が危険水位に達したとの想定で行われた。地区内3カ所で警戒にあたっていた消防団員らから連絡を受けた佐々木会長が、市防災行政無線の屋外拡声子局の放送設備を使用し、川から離れた高台道路を通っての避難を呼びかけた。住民らは家族や隣近所で声をかけ合い、避難を開始。要支援者は車いすを使って搬送した。集合した上小川・中小川集会所駐車場で5つの地区ごとに避難者数を確認。この日は子どもから大人まで計94人が避難行動を取った。
駐車場では仮設トイレや担架の組み立て、おにぎりを握る炊き出し訓練などを実施。協力した釜石消防署署員の指導で消火器(この日は訓練用水消火器使用)の操作訓練も行った。同型の消火器1本には3キロの粉末消火薬剤が入っているといい、署員は「少しの量でも視界が悪くなる。必ず逃げ道を確保し、無理をせず、命を守ることを優先して」と注意を促した。火災時の煙の充満を再現したテント内を歩く体験もあった。訓練用の無害な煙の中を進んだが、実際の火災では有毒な一酸化炭素を含む黒い煙が発生するため、口や鼻をタオルなどで覆って低い姿勢で避難することが大事。参加者は見通しのきかない怖さを体験し、火災予防への意識を強めた。
中小川町内会は本年度、町内会活動の休止が続いていた上小川地区の住民を受け入れ、組織を再編。両地区合わせ380世帯、745人の町内会組織となった。同訓練に初めて参加した上小川の岩間みき子さん(68)は「自宅近くの川は少しの雨でも水位が上がりやすく心配。危険を感じたら、警報になる前に安全な場所へ早めの避難をすることを家族で確認している」と話し、訓練にも3世代で参加。孫の羽叶さん(9)は「いざという時はお家の人と一緒に逃げたい。訓練で消火器を初めて使った。ちょっと難しかった」と振り返った。
訓練の様子を見守った市防災危機管理課の大澤翔防災係長は「ゲリラ豪雨の場合、通常の台風と違い、避難のための時間が限られる。気象のほか、昼か夜かによっても状況が異なる点を理解し、より安全に身を守る方法を普段から考えておいてほしい」と願う。地区内では昨年、台風による土砂崩れの影響で、市街地に通じる道路が片側通行になる状態が続いた。「訓練をしてみて分かることもある。地域によって危険性や課題は変わってくるので、地区ごとに訓練を重ね、共助の力を高めてもらえれば」と話す。
同町内会自主防は東日本大震災を契機に2014年に発足。以来、年1回の防災避難訓練を続けている。小川川上流には1997年に日向ダムが完成。佐々木会長(75)によると、これまでに大規模な洪水被害はないというが、近年増加するゲリラ豪雨など短時間で集中的に激しい雨が降った場合、想定を上回る川の増水や家屋への浸水、土砂崩れによる道路の寸断なども考えられる。佐々木会長は「緊急連絡網や要支援者の避難誘導など体制は整えているが、近年の異常気象で何が起こるか分からない時代。地区内は山から複数の沢が流れ込む地形で、一番心配なのは川の氾濫。高齢者も多いので、とにかく早め早めの避難を心がけてほしい」と呼びかける。