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築地市場跡地の再開発計画が前進。明らかになった建築計画の概要をリサーチ

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築地市場跡地とは

旧築地市場跡地 ※2025年6月撮影

2018年10月に豊洲へ市場機能が移転して以来、広大な空き地となっていた築地市場跡地。その前提となった豊洲移転に関しては、新聞・メディアを賑わせていたため知っている人も多いのではないだろうか。一方で、築地市場の跡地の利活用についてはあまり注目されていなかった。しかしながら、近年になり具体的な再開発計画の動きが出てきたため注目されつつあるエリアとなっている。

跡地の開発計画については、2024年4月に三井不動産を代表とする企業グループ「ONE PARK × ONE TOWN」を事業予定者として本格的に動き出し、2025年3月には、東京都と「築地まちづくり株式会社(事業予定者の構成員)」との間で「築地地区まちづくり事業」の基本協定が締結されている 。約19ヘクタールにおよぶ中央区の都心の一等地に、単なる施設の建設ではなく、自然と都市が融合し、新たな文化を創造・発信する拠点を目指す壮大な計画となっている 。

本稿ではその詳細と今後のスケジュール、そして新駅構想がもたらす将来性について、公開情報を基にリサーチする。

旧築地市場跡地の位置 ※出典:国土地理院地図を一部加工

昭和10(1935)年から日本の台所「築地市場」として、2018年に豊洲へ移転するまでの間、日本の食文化を支えてきた歴史を持つ。市場の移転により、都心に約19ヘクタールという広大な土地が生まれた。場所は東京都中央区築地5丁目及び6丁目各地内である 。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の際には、選手・関係者の輸送拠点としての役割を担った。

その後、当該地についての活用に関しては、浜離宮恩賜庭園や隅田川に隣接し、歴史・文化資源に恵まれたこの場所をいかに活用するかが、東京都の持続的な成長にとっての重要なテーマとなっていた。

築地地区まちづくりとは?

旧築地市場跡地の囲いに設置されている再開発計画のイメージ ※2025年6月撮影

東京都は、築地跡地の都有地を活用し、東京の持続的な成長につなげるため「築地地区まちづくり」を推進してきた経緯がある。2017年9月には、各分野の専門家からなる「築地再開発検討会議」を設置し、今後の築地まちづくりの大きな視点として整理することを目的にはじまり、有識者や都民の意見を反映させながら、2019年3月に「築地まちづくり方針」を策定した 。方針策定にあたっては、素案の段階でパブリックコメントを実施し、都民の意見を反映させるなどの過程を経て進められてきた。

この方針で示された事業コンセプトは、「水と緑に囲まれ、世界中から多様な人々を出迎え、交流により、新しい文化を創造・発信する拠点」である。具体的には、以下の3つの方向性が定められた。
・水辺の東京を象徴する景観を創出する。
・水や緑、歴史を生かし、東京らしい魅力で世界の人々を迎え入れる。
・多様な交流の中で新しい文化を創る開かれた舞台とする。

5万人収容の可変型スタジアムが核に。計画されている再開発の全容とは

事業予定者の提案概要の抜粋(全天候・超多機能型施設) ※出典:東京都公式ホームページ「築地地区のまちづくり概要」

核となる大規模集客・交流施設(多機能スタジアム) 計画の中心となるのは、約5万人を収容可能な全天候・超多機能型のスタジアムである。この施設は、可動席などを組み合わせることで、野球、サッカー、コンサート、大規模な展示会など、イベントの特性に合わせて最適な空間を提供する 。臨場感を最大化する空間設計に加え、これまで東京にはなかったスケールでラウンジやスイートルームといったホスピタリティエリアも充実させる計画となっている。

さらに、イベントがない日にはコンコースの一部をウォーキングやジョギング等で多くの人が活用できるコミュニティスペースとすることや、屋上には浜離宮恩賜庭園の緑と連続して見えるビュースポットを設けることも提案されている。

また、国際的な交流拠点にふさわしいMICE機能の強化も大きな柱となっている。1,200人規模のボールルームなどを整備し、エリア内の各機能を活用することで、国際学会から数万人規模のイベントまで対応可能とする。さらに、文化・芸術・スポーツ・ライフサイエンスなど、これまでにない大規模な国際複合コンベンションの誘致・開催を目指すこととしている。加えて、浜離宮恩賜庭園や築地場外市場といった周辺資源をユニークベニューとして活用し、築地ならではの「アフターMICE」を提供する計画となっている。

事業予定者の提案概要の抜粋(MICE施設) ※出典:東京都公式ホームページ「築地地区のまちづくり概要」
事業予定者の提案概要の抜粋(シアターホール等) ※出典:東京都公式ホームページ「築地地区のまちづくり概要」

さらに、築地の立地を最大限に活かし、陸・海・空のモビリティが乗り入れる交通のハブを形成する。舟運施設や「空飛ぶクルマ」のポートを整備することに加えて、将来の地下鉄新駅も見据えたバスや自動運転車等が乗り入れる交通広場を設ける計画となっている。

敷地内にはオフィス、レジデンス、ホテルといった基本的な都市機能に加えて、以下のような多様な施設が配置される予定である。また、一流シェフの料理への想いや経験を学ぶ機会等、日本の食産業・文化の発展を促すフードイノベーション拠点となる「築地クリナリーセンター」なども創設される 。

国立がん研究センター隣接エリアに、ライフサイエンスやAI等の先端研究機能と関連オフィスを導入し、創薬などの研究開発における相乗効果を最大化する計画となっている。隅田川沿いには人々が憩う「隅田川芝生広場」や、子どもたちが水辺で遊べる「キッズクリエイターパーク」なども整備される計画となっている。大規模な緑化により緑被率40%を確保し、夏の卓越風を通す「風の道」をデザインに取り入れることに加えて、隅田川の河川水熱を利用した熱供給などにより、街区全体でCO2排出実質ゼロを目指すこととしている。

具体的な建築計画の概要

事業予定者の提案概要の抜粋(施設等の概要) ※出典:東京都公式ホームページ「築地地区のまちづくり概要」

東京都が2025年6月2日に公表した環境影響評価調査計画書から解説していく。
当該計画書において示された施設は次のとおりであり、合計床面積は約126万m2とされ、このことからも壮大かつ大規模な建築計画となっていることが想定される。

<ライフサイエンス・商業複合棟>
・機能および特徴:先端研究開発機能、インキューベーション機能、ライフサイエンスラボ&オフィス、商業機能
・延べ面積:約38.5万m2
・階数規模:地上33階、高さ約190m
<オフィス・レジデンス棟>
・機能および特徴:中長期の世帯ニーズに応える居住機能、オフィス機能
・延べ面積:14.3万m2
・階数規模:地上45階、高さ約210m
<レジデンス棟>
・機能および特徴:世界の研究者、高度人材を受け入れる滞在・居住機能
・延べ面積:約9.0万m2
・階数規模:地上38階、高さ約180m
<ホテル棟A・B>
・機能および特徴:国賓や世界中のVIPの迎え入れが可能な宿泊滞在機能
・延べ面積:約5.6万m2
・階数規模:地上28階、高さ約150m
<大規模集客・交流施設>
・機能および特徴:世界水準のコンベンション、文化芸術・スポーツイベントに対応する大規模集客・交流機能
・延べ面積:約17.8万m2
・階数規模:地上8階、高さ約110m
<MICE・ホテル・レジデンス棟>
・機能および特徴:国際水準の多様なニーズに対応可能なMICE施設(メインホール、バンケット、大中小会議室、ホワイエ等)、大規模ホテル、短〜中期滞在拠点として利用可能な宿泊機能、ヘリポート
・延べ面積:約14.6万m2
・階数規模:地上46階、高さ約210m
<舟運・シアターホール>
・機能および特徴:文化・芸術の感動を共有するシアターホール、舟運待合機能、日本の食で世界を魅了するフードホール、食に関する研究機能を持つフードラボ
・延べ面積:約3.2万m2
・階数規模:地上7階、高さ約50m
<オフィス棟>
・機能および特徴:シェアオフィスを含めたオフィス機能
・延べ面積:約23.1万m2
・階数規模:地上42階、高さ約210m

事業スケジュール

工事は、1期工事と2期工事に分かれて進められる。

1期は「オフィス棟」を除いて、2028年度から2032年度まで工事が予定されている。このうち、「舟運・シアターホール複合棟」については、2027年度から2029年度が予定されている。2期工事では、オフィス棟の工事が2035年度から2038年度まで予定されている。

新地下鉄構想が控えている築地の将来性

都営大江戸線築地市場駅 ※2025年6月撮影

今後、再開発計画のポテンシャルをさらに高めるのが、「都心・臨海地下鉄新線」の計画である。これは、TX線の延伸先である東京駅から臨海部の有明・東京ビッグサイト駅(仮称)までを結ぶ新たな地下鉄計画で、築地地区には新駅の設置が計画されている 。実現すれば、東京駅から築地、そして国際的なコンベンション拠点である臨海副都心までがダイレクトに結ばれることになる。
▶︎都心・臨海地下鉄新線についての記事はこちらを参照

今回の再開発計画では、鉄道に加え、舟運やバス、空飛ぶクルマといった多様なモビリティとこれらの新インフラが連携することで、築地は国内外から人・モノ・情報が集まる、他に類を見ない「広域交通結節点」へと進化を遂げることになるとが考えられる。

築地が今後どのように変化していくのか、具体的な都市計画等が決定した段階で改めて記事にしてお届けしたい。

都市整備局 築地まちづくり

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